さて。
激痛が私の身体を強張らせる。
そんな私を見てゴブリンキングはチャンスとばかりに武器を振るってくる。
やばい。やばい。やばい。
そんな事を考えつつ私は必死に攻撃を避ける。
幸いな事に?レベルが上がったからなのか俊敏さが上がっている。
気のせいでは無い。確実に素早くなっている。
「くっ…回復!」
ヤケクソ気味にそう叫んでみるけれど、全く回復する気配がない。
私の魔法は一体何が出来て何が出来ないのだろうか?わからない。
とりあえず回復ができない事だけは理解した。
「じゃあ…ふぁいやー!」
何ができるかわからない今、兎にも角にも使える攻撃手段を探すのみである。
そう思って叫んだ瞬間、私の想像通りの火の玉がゴブリンキングに向かって着弾した。
「ギギャ!」
これは私じゃない。ゴブリンキングの悲鳴である。
「やったあ!魔法できた!」
そしてひたすらずっとファイヤーと叫び、ゴブリンキングに攻撃をしていく。
「ギャオオオオオオオオオ!」
数十回目の着弾の後、ゴブリンキングが突然咆哮した。
多分、日本語に訳すと「何晒すんじゃワレェ!」だ。
私の魔法のせいで持っていた武器は取り落とし、ご自慢な腰蓑?は焦げ、顔の左半分と右手は焼け爛れてみるも無惨な事になっているから、その怒りも仕方がない事かもしれない。
私が逆の立場でも怒ってると思う。
いや、もしかしたら土下座して泣き喚いてるかもしれない。こっちの方がしっくりくる。
そんな事を思いつつ、私が激しく肩で息をしながら見ていると…ゴブリンキングが変化した。
メキメキと足や腕や肩が膨らみ、どんどん肥大化していく。
「…ヒッ」
私は息を呑んだ。
目の前のゴブリンキングは幼稚園児サイズから、三メートルはありそうなムキムキマッチョゴブリンになったからだ。
身体の至る所から湯気のようなモヤを出しながらゆっくりと武器を拾い、私を見た。
先程まで負っていた傷はどこえやら、綺麗さっぱり無くなっていた。
そして、私を見るその目は憎悪にぬれているようだ。
「グォオオオオ!」
ゴブリンキングが咆哮する。
その声の大きさも、力強さも先程までとは全然違い、耳を両手で塞がないと鼓膜が破れてしまいそうだ。
やばい、これは本当に死ぬかもしれない。
脳が逃げろと警報を鳴らす。
震えから歯がカチカチと鳴り、鼓動の激しさからなのか先程の咆哮でなのか鼓膜が脈打っているようなきがする。そのせいで音が酷く遠い。
やばい、やばいやばい、すごくやばい!
魔法を、魔法を使わなきゃ…
「ふ、ふぁいやー!」
私の魔法がゴブリンキングに着弾するが、ダメージは全然なさそうに見える。
どうしよう、どうしよう!
「み、みず!うぉーたー!」
水球がゴブリンキングに着弾するが、これも同様。気にもしていない様子。
ゴブリンキングは私の魔法が効かないと判るや否や、怒りの表情から嘲るような表情へと変わり、ゆっくりとした足取りで私へと近づいてくる。
「いや!いやいや!風!かぜ!」
私は半狂乱になりつつゴブリンキングに鋭い風の魔法を放つ。
その風はゴブリンキングの頬へうっすらと傷をつけただけだった。
だが、その傷から血が出ている事に気がついたゴブリンキングは、怒りの表情へともどりまた咆哮した。
「グォオオオオ!」
私は震える体を叱咤しつつ、ゆっくりとゴブリンキングから距離を取ろうとしたが、足がうまく動いてくれない。
「いやだ!いやだいやだいやだ!こんなところで死にたくなんかない!」
私は流れ出る涙も鼻水も気にせず叫ぶ。
「素敵なマイダーリンを見つけるんだ!この世界で立派に生きるんだ!楽しい毎日を過ごすんだ!」
私の方へと武器を振り下ろそうとするゴブリンキングを見ながら私は思った。
あぁ…誰か助けてと。




