摂津堺城、第一期工事の完成
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1547年の11月
師走に近付き気温が低くなっているこの日、堺を含む摂津南部ではそんな寒さを吹っ飛ばすほどに、とてつもなく賑わっていた。
堺の皆が待ち望んだ、大望の摂津堺城の第一期工事である本丸、二ノ丸の工事が完了したのである。現在の大阪城の場所は石山本願寺が建立しているため使用できなかった為。堺に隣接する様に堺城の築城を開始した。現在の徳川大阪城より遥かに大きい本丸とそれを囲む巨大な二ノ丸。その両曲輪は広く深い堀と高い土塁が圧倒する。本丸の天守台は石垣で造られているがまだその上には大天守ではなく三重の天守が建てられていた。この三重天守は後々改装する予定だ。
この時点で土塁が多いのは時代が安土桃山から江戸になっていない事もあり、20mを超える高石垣が積める技術力が足らなかった。その為、天守台と本丸御殿、それを囲む箇所のみ石垣で固められている。
しかし石垣とは別に広く深い空堀(障子堀り)と高い土塁。そして櫓や城壁等で防御を施された城には威圧感と圧倒さがある。そんな堺城の天守にて秀高と小梅は景色を眺めていた。
「第一期工事がようやく終わったか。全てが完成するまで後、6、7年。早く完成が見たいものだな」
『秀高様。とても広いですね?でも、後7年って事は、まだ何かあるのですか?』
「小梅さん。君は歴女だったから少しは理解しているだろう?」
『え~。言ってよ~』
「まぁ、まだ完成ではないのは確かとだけ言っておこうかな」
『もう。けち~(もう。秀高様は私の事、からかっていますね。プンプンです。でも、この前書斎の書類を見ていたら都市計画図とお城の構造図がありました。そこにはいずれ建造されるだろう秀吉の大坂城に隣接する計画になってましたね。そうなった場合、なんかすごい事になりそうで楽しみなんですよね~。史実の大坂の陣が違う方向に行きそうです)』
「そんな怒るな。君の美しい顔が台無しだぞ」
秀高は小梅の顔を優しく撫でる。
『もう。そ、そんな事言われても嬉しくないんだから(この人たらし)』
「ふっ、そうかい。それは残念だ」
三重の天守から眺める景色はとても爽快で、この後も秀高と小梅は、しばしいちゃつくのであった。
さて、この堺城と商業要塞堺は大手道で真っ直ぐに繋がっている。これにより堺から堺城への往来は何の苦労もなく行われるが大手道の両側には治安維持、防御の観点から兵舎を等間隔に建てられる予定だ。
摂津堺城の第一期が完成したと聞いた諸国の大名達や南蛮の国々はその城を知るべく直ぐに使者や間者達を派遣する。勿論、秀高はそれも予想しており使者達には自ら案内を行い。間者達は捕まえて殺さずに2ヶ月ほど築城に携わらせ自国に戻している。そして使者や間者から話を聞いた大名達も堺城のような城を造ろうと躍起になるが財政上無理との事で諦めるしかなかった。これは内政に力を注ぎ、石高が二百万石を超える国力となった堺が異常であるためだ。またこの時は秀高と外交省しか知らないが既に琉球、高山国、ルソン等の東アジア、東南アジア諸国への浸透が完了し支配圏を更に強めることが出来ていた事で、堺の実質の国力は世界に通用する国力がある。そのため、南蛮の国々は東南アジアの植民地政策を見直しせざるをえないという事態までになるのであった。
そんななか、日の本のあちこちでも絶えず戦が行われている。
昨今の戦で将軍家に勝利した三好勢は山城に侵攻をしようとしていたが土佐から長宗我部、西丹波や播磨から細川が兵を出したために山城侵攻を断念。撤退を余儀なくされた。その間に将軍家は山城、若狭、西近江の防衛を強化する時間が生まれるとともに隙を見て未だ細川に支配されていない東丹波と丹後に侵攻し更に勢力を大きくする事に成功したのであった。
九州では大内氏の勢力が衰退したため、大友、龍造寺、島津等の九州勢力が盛り返しを図っている。
中国は大内、毛利、尼子、山名等の勢力が割拠している。
四国は反三好を掲げる一条、長宗我部等の勢力が三好を脅かす。
畿内は三好、鷹司、足利、の3極構造となっており。その周辺で細川、六角、浅井、朝倉が隙を突こうと画策している。
中部では織田、斎藤の強固な同盟に対して今川、松平、武田、畠山はこれとした動きが見えない。
関東は北条が勢力を伸ばしていて、関東の緒勢力はが越後の上杉(長尾)が関東に進出する機会を伺っている。
東北は伊達・最上両家による婚姻大同盟により東北の大名は血縁同士となるのだがその水面下では同盟を崩す動きが密かに暗躍していた。
このような情勢下でも堺はいつもと変わらず商いに躍起になっている。
これまで秀高も堺の長として日々仕事に忙殺されていたが、優秀な三役と各省の部下達が仕事を上手く回しているため秀高は領内を見回ることが出来ていたのである。
小梅と天守で遊んだ後も秀高は供回り5人ほどを連れて視察を行う。もはやこれは秀高直々のの巡回と堺では言われる程までになっていた。(因みに巡回時間はバラバラである)
「三ノ丸から総構の工事も順調そうだな」
『殿。あまりやみくもに動かれては』
「すまないがそこのお嬢さん」
秀高はお茶を出店を出している店で働く店員に話しかける。
『あっ、はい。あれ?堺様?』
『あっ、殿』
「おっ、俺の事を知ってるのかい」
『勿論。堺様は皆が認める天下人って』
「そうか。それは良かった。所で最近何か困った事や変わったことはないかな?何でもいいよ。言ってみてくれ」
『ん~。困った事というと。毎日商いが忙しすぎて。休みが少ないって所ですかね。まぁ、嬉しいですけど』
「そうか。他にはあるか?」
『他には~。聞いた話なんですがね』
「うむ」
『最近、外国の方々が来てるじゃないですか』
「うむ」
『その外国の人達が人拐いをしてるって噂があって』
「ほおぉ。それは興味深いな」
『取引失敗した相手の娘を問答無用に拐っているとか。借金の型に売られるとか』
「成る程な。そんな噂が」
『はい』
「後は何かあるか?役人の不正とか」
『そんな話は聞いた事が無いですね。むしろ、出している店毎に担当の役人さんが付いているなんて初めて聞きましたよ』
そう。この堺や領内では出店している店が余りにも多い為に店毎に農工省の役人を付けている。これは店で不正をしていないかの確認と他店との紛争時の弁護士の役目を担わせている。また、役人同士が不正をしないように兵部省から独立させ新たに誕生した警察省の役人達が日々、巡回している。
「初めての試みだからな。担当の役人とは上手くいってるかい」
『はい。いつも来ていただいて良くして貰っています』
『お邪魔しますよ~。はっ、殿』
「噂をすればなんとやらだな」
『そうですね』
秀高と店員が話をしていると担当役人が何も知らずにやって来るというテンプレ。
頭を下げて挨拶する役人の肩にに秀高は手を置く。
「休憩がてらこのお嬢さんとお茶と話をしてただけだ。いつもご苦労様。これからも宜しく頼むぞ」
『はっ、はい、ありがとうございます』
秀高は店を後にして巡回に戻る。
「さっきの店の役人に後で特別手当てを出すように農工省に伝えておいてくれ」
『承知しました(特別手当てって、確か殿の財布から出てたような)』
この日、巡回して担当の役人達が確りと役目を果たしている姿を見た秀高は警察省と農工省に特別手当てを支払う事にしたのだが。この時、莫大な金額が秀高の金蔵から出た事により大蔵省から小西隆佐が執務室に突入して秀高を説教したのであった。
『さて、殿。此度の一件、どう収拾つけるおつもりですかな?』
「ま、まて、小西君。話せばわかる。だからその開発途中の新型火縄銃をしまいたまへ」
『問答無用』
この日、執務室で数発の銃声が鳴り響いたが通常通りに堺は稼働するのであった。
因みに、秀高には弾は当たってません。
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