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超強運  作者: コサキサク


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第2話 18歳の転機

僕は3月生まれで、高校の卒業式の後、誕生日を迎えたのだけど、誕生日の夕食でなんと父がびっくりすることを言ってきた。

「アタル、もう18歳だし、今度お父さんの代わりに宝くじ買ってきてくれ。お前が買った方が当たるような気がするんだ。」

僕は吹き出しそうになった。

「友達とも、同じような話してたんだ。」

「そうか、皆考えることは同じなんだな。ほら、これお父さんの分、頼むよ。連番で100枚な。」

父は3万円を僕に渡した。

「わかったよ。父さんは、大金当たったら何したい?」

「そうだな、大きなクルーズで世界一周したいな。超豪華客船のやつ」

「あら、いいわね。」

母も同意した。僕もできることなら両親を豪華客船に乗せてあげたいと思った。


というわけで、僕は父さんの分も宝くじを買うことになった。


宝くじは、コースケが調べてきた、当たると評判の売り場で買った。ネットで調べると、高額当選の実績のある販売所がわかるらしい。その売り場は大きい公園の側にあった。販売員のいるブースが横に10列ぐらいあって、どの販売員の前も長蛇の列ができている。「この売り場から1億円当たりました!」という赤字が印刷されたのぼりがいくつも立っていて、賑やかな雰囲気だ。側の公園には宝くじの客を取り込もうする綿菓子やたこ焼きの屋台まであり、本当にお祭りのようだった。

「おおー、なんだか本当に当たりそう!」

こういう賑やかな場が好きなユウトはこの空気が気に入ったようだった。

「よし、アタル、どの列で買うよ?」

コースケは僕に聞いてきた。僕はなんとなく一番真ん中の列で買うことにした。

「よし、俺もこの列にしよう。」

コースケが乗っかる。ユウトもソラも乗ってきた。バラバラの列に並んでも待ち時間つまらないから当然の判断だろう。四人で列の一番後ろに並び、連番で買うかバラで買うか相談したり雑談する。他のお客さんの様子を見ると、札束かと思うような量の宝くじを購入している人が結構いる。前の人の購入が済み、僕の番が来た。先に父の分を買い、僕は自分の小遣いでバラで10枚買った。なんでバラにしたかというと連番で買う父の分と分けたかったからだ。みんなもそれぞれ10枚程度買ったようだ。僕達は宝くじを買い終えると屋台でうどんを買ってベンチで食べた。


僕は、宝くじで一攫千金を得ることよりも、こうやって宝くじ売り場に並んでうどんを食べる時間に楽しさを見出していた。きっとみんなも、そうだったと思う。


周りにも、同じような人の姿があった。気の合うもの同士連れ立って売り場にやってきて夢を買う。宝くじの当選よりも今この場に幸せを感じている人がたくさんいるのだな、と思った。


僕はこのあと1億円を手にするけど、この日の楽しさのなんと尊かったことか。何度も思ったよ。


みんなと最寄り駅で別れ、一人で家へ向かう帰り道、商店街の一角でガラガラ抽選会が催しているのを見つけた。一等は、なんと「豪華客船の旅」と書いてある。

「お、ちょうどいい、あれやってみよう。」

父の望みは宝くじの当選金で豪華クルーズだったが、旅行そのものを当ててプレゼントするのもありだろう。


僕は早速参加した。1回300円。宝くじと同じだ。僕が、ガラガラを回すと、赤色の玉が出てきた。赤?三等ぐらい?と思ったら、カランカランカランカランと言う音が聞こえて

「おめでとうございます!一等ですよ!」

と法被を来た店員さんに言われた。一等だったのか、こういうのってだいたい金色じゃない?と思ったが、僕は一等は取り慣れていたので、なんだ三等か、と思ってからの一等は不意打ちで、珍しくテンションが上がった。赤が一等なんて粋なことするなあ。よし、早く帰って父さんに渡そう!と僕は家路に急いだ。


旅行券を両親にプレゼントすると、とても喜んでくれた。一等の「豪華客船の旅」は、父が望んでいたものよりは小規模なもので、日程は一週間程度で、日本一周するものだった。

「実際は、このぐらいの方がいい。有給とってすぐに行けるしな。」

旅行券はペア旅行券だったので、両親はタダで行ける。旅費は出してあげるからアタルもこないかと両親は言ってくれたが、僕は大学入学したばかりで履修し始めたばかりの授業についていけなくなったら困るから、と断った。

「僕ももう大学生だし、一週間ぐらいなら一人になっても大丈夫だよ。二人で楽しんできて。」

僕の家は、僕と両親の3人家族だ。兄弟や、他の家族はいない。僕は両親が旅行中は一人で家で暮らすことになった。僕も子供じゃないのでそう困ることもなく生活し、大学に通った。


両親が旅行に行っている期間中に、宝くじの当選発表の日がやってきた。


一人でいる家の中で結果を知るのは心細かったから、新聞等で当選番号の確認はせずに、宝くじ売り場に宝くじを持っていき当選しているかどうか確認して貰う形にした。いつものようにユウト、コースケ、ソラと僕の四人で連れ立って宝くじ売り場に向かう。

「みんな、もう確認した?」

僕が尋ねると、みんな首を振った。

「楽しみだね、当たっているといいな。」

みんなとそう言いながら買ったときと同じように売り場に四人で並ぶ。

「おっと、確認するのはアタルが最後にしようぜ、一番一等に近いだろうし、もし、アタルが一等当たってて、そのあと俺らの金額確認したら、一万円でもしょぼくなるだろ。」

と、コースケが言ったので、僕が四人の中で最後尾になった。


ユウト、コースケ、ソラが順番に確認する。みんなそれぞれ300円だったそうだ。五万円までの当たりはその場で換金してもらえるから、みんなその場で受け取っていた。

「ま、10枚しか買ってないからこんなもんだよな、さあ、アタルの番だぞ。」

僕も確認してもらう。まずは父の分から。機械がサラサラと読みとり、機械に金額が表示される。6000円だった。父の分は100枚連番の福連100というのを買っているので、6000円は必ず当たる。みんなと同じ、最低額の当選だったようだ。


僕の分の宝くじを販売員さんに渡す。さすがにどきどきしてきた。ユウトとコースケとソラも機械を注視している。


機械に、「高額当選枚数1枚」の文字が出た。


「まじで、すごい!」

ユウトが叫ぶ。

「あの、当選金額が表示されてませんけど、いくら当たったんですか?」

当事者の僕は案外冷静で、当選金額を販売員に淡々と尋ねた。

「ここで換金できない五万円以上が高額当選になります。当選金額はご自分でお確かめください。おめでとうございます。」

と返された。

「お、おい、確認しようぜ。」

コースケに促され、みんなで、人気のない所に移動する。


公園の端の方に四人でかたまり、

「みんな、準備はいいか。今からネットで確認するぞ。」

みんな頷いた。スマホに表示された当選番号を見る。もう早速一等から確認することにした。すぐに、僕が持っている宝くじの中に当選番号と同じ文字列を見つけた!


「あ、当たってる・・・」

全員でぼう然とした。

「一等って、一億円だよね?アタルだったらもしかしたらと思ったけど、ほんとに当てるなんて・・・」

ソラが声を震わせながら言った。


高額当選の場合売り場ではなく銀行での換金になる。僕達はすぐに銀行に向かった。一億円の当たり券を持っている状態はただただ落ち着かず、僕もみんなも喜びより緊張の方が勝って、一言も話さず早足で銀行へ歩いた。


銀行に着くと、僕は窓口に行き当選の件を伝えて、当たり券を渡した。その場で当選金を振り込んでもらうため口座開設を行うことになり、取ったばかりの運転免許証を提示したあと、必要なことを書類に記入する。それから高額当選者のアンケートにも答えた。


「当選金、今日貰えるわけじゃないんだ?。」

帰り道、コースケが聞いてきた。

「うん、百万円までならその場で受け取れるけど、それより高額は一週間後に振り込みだって。」

ネットで残高を確認できるように教えてもらったし、振り込まれたらスマホでメールに通知が来るそうだ。

「どうしよう、一億円。両親に旅行はもうあげちゃったし、みんなで旅行行く?」

僕はみんなに聞いた。

「いや、俺としては、もうアタル自身のために使ってほしいわ。今日当選するところ見ただけでまじでお腹いっぱいだし。」

コースケが言った。

「わかる。俺も当選番号見たとき自分が当たったみたいで興奮した。楽しかったよ。」

ユウトも同意した。

「うん。すごいもの見せて貰ったよ。もうそれで十分。」

ソラも同じようなことを言い出した。なんとなく、みんな少し疲れているように見えた。よく考えたら無理もないかもしれない。僕もさすがに一億円はどう扱っていいかわからず、正直戸惑っていた。両親に連絡しようかと思ったが、明日帰ってくる予定だし、帰ってきたときに伝えようと思った。


家に帰ってからも、僕はいつも通り過ごし、明日両親が帰ってくるのを楽しみに眠りについた。


翌日大学に行くと、コースケが話しかけてきた。

「おはよう。アタルは億万長者になったのに、なんにも変わんねえな。」

さすがにこれには笑ってしまい、

「まだ受け取ってないしさ。」

「いや、それにしても、落ち着きすぎじゃね?」

「そうかなあ。」

実際を言うと、僕は落ち着いていた。当選金のことより一週間ぶりに両親が帰ってくることと旅行の土産話の方が今は楽しみだった。


なのに・・・


大学の講義が終わり、帰ろうかと思ったらスマホの着信音が鳴った。父か母かと思ったのだが、相手は伯父さんだった。父の兄にあたる。伯父さんから僕に連絡なんて珍しすぎて、不思議に思いながら、電話に出る。


「アタルくんか。今大学か?」

「はい。」

「実はな、お前のお父さんとお母さんが乗ってるバスが事故にあった。二人とも病院に運ばれてるんだ。伯父さん今から大学にアタルくんを迎えに行くから、一緒に病院に行こう。」

「ええ!?」

「・・・大丈夫だ。とにかく今から伯父さんが大学に行くから、待っていてくれ。」

すぐに電話が切れた。


僕は大学のロビーで伯父さんを待った。なんだか嫌な予感がして仕方がない。たいした事故じゃないなら、電話口で伯父さんがそう言ってフォローする気がする。まさか・・・と思っているとスマホが鳴った。スマホの画面を見ると、


「ニュース速報:旅行会社のバスが横転事故。乗客24人全員死亡」


という文字が出た。直感で、両親が乗ったバスのことだとわかった。だけど、違う可能性を信じたくてニュースの詳細を見る。


「豪華客船の旅の帰りの乗客を乗せたバスが横転し、乗客全員が死亡した。」と書いてある。


僕がガタガタ震えていると、伯父さんが僕の名前を大声で呼んだ。

「アタルくん。病院へ行くぞ。」

「伯父さん、お父さんも、お母さんも、死んだんでしょ!?」

「大丈夫だ、まだ・・・」

「嘘だ!このニュース、お父さんとお母さんの乗ってたバスでしょ!」

さっき見たニュースを伯父さんに見せると、伯父さんは泣いた。

「そうだよ。アタルくんに直接言うのが辛くて、ごまかそうとしたんだ、許してくれ。」


「君のお父さんと、お母さんは、死んだんだ。」























 





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