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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第五章「エルフの国の王子様編」
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70.新たなヒトナキモノ

ルルが処刑されると知り、急いでエルフネル王国へ戻らなければならなくなったハルト達。その為にも移動力に長ける一角獣捕獲を試みるのだが、意外に素早い一角獣に苦戦する。



「絶対捕まえてやるからな!!!」


ハルトは剣を強く握りしめて言う。


「そんなに熱くならないでよ。アタイを捕まえられたら考えてあげるわよ!」


「くそ!!!!」


ハルトは剣を持って全力で走り込む。


シュンシュン!!!


素早い動きについて行けず全く空を斬る剣。


「トルンッ!! ド…………」


ハルト以上に動きの遅いトロールのトルンドは全く見当違いの方向にハンマーを振り下ろす。



「おほほほっ、それじゃあダメねえ。この結界だって有限でしょ?」


一角獣は周りに張られた召喚域を見て言った。


(確かに。召喚域の維持には少なからず召喚力を使う……、のんびりはできない)



ハルトは少し考え、そしてトルンドにそっと話をした。


「いいけど、ハルトは大丈夫か?」


心配そうに言うトルンド。


「ああ、大丈夫だ!!!」



そしてハルトが合図をすると、再び二人同時に一角獣に向かって走り込む。


「同じことを……、脳筋なの? あいつら」


一角獣は余裕の表情で眺める。


「ぐごおおおおおお!!!!!」


ドーーーーーーン!!!!


「!?」


トルンドは一角獣の少し手前で、思い切り()()を巨大ハンマーで叩いた。少し驚く一角獣。すぐさま横からハルトが斬り込んでくる。


「はああああ!!!」


かわそうとする一角獣。しかしトルンドが地面を叩いた時に起きた、揺れと地割れによって一瞬動きが鈍る。そして()()()トルンド。


「くっ!!!」


姿勢を直し後方へ跳躍する一角獣。しかしその先にはハンマーを振り上げたトルンドが待っていた。


(再召喚ですって!? いつの間に?)


一角獣は再び現れたトルンドの姿を見て思った。


ドーーーーーン!!!


再び叩かれる地面。先ほどよりも大きく揺れる地面。着地と同時に揺れ出す地面に、完全に姿勢を崩す一角獣。そこへシールドを足場に空に飛び上がったハルトが、叫びながら一角獣に突入する。


「があああああ!!!!」


「ぎゃっ!!!」


ハルトは一角獣に飛びつくと思い切り首にしがみ付いた。急な出来事に暴れる一角獣。それでも離さないハルト。


「は、離しなさい、あなた!!!!」


暴れる一角獣に意地でも離れまいとしがみ付くハルト。


「ふ、ふざけるな!! 絶対に離さないぞ!!!」


ドン!!!!


一角獣は近くの岩にハルトの体をぶつける。



「ハルト!!!」


外から見ていたクレアが叫ぶ。


「絶対に、絶対に離さない……」


ハルトの首を絞める力が更に強くなる。一角獣は全く離そうとしないハルトの意志を感じ始める。



(この子、とても強くて真っ直ぐな意志。熱くて、優しい思い。……嫌いじゃないわね、こういうの)


暴れていた一角獣がやがて大人しくなる。


「……ん? どうした!?」


それでも必死に首にしがみ付くハルトが小声で言う。一角獣が答える。


「いいわ、あなた。契約してあげる。喜びなさい」


「ほ、本当か!? やった……」


そう言うとドサッと地面に落ちるハルト。


「ハルト!!」


そう言いながらドタドタと走り来るトルンド。ハルトはトルンドに起こされてこれまでの経緯を話す。



「そうか、それなら仕方ねえべ。オラは足遅せえでな」


頷きながら言うトルンド。ハルトが答える。


「ありがとう、トルンド。一緒に戦えて楽しかった。あと、エルセント王国のリティの力にもなってやってくれ」


ハルトはひとり頑張る国王代理のリティを心配して言った。


「ああ、オラ頑張る。困ってる奴を助けて頑張る!」


ハルトはそう言うトルンドと最後に抱擁し、契約を解除した。消えゆくトルンド。それを見届けた一角獣が言う。



「良い関係築いてるようだね、アタイとも頼むよ」


「ああ」


そう言うとハルトは一角獣の頭に手を乗せ詠唱を始める。


「我が名はハルト。古の盟約により汝と血盟召喚の契りを結ばん。求ム、汝を求ム。我が血肉を食らい我の叫びに応じよ!! その名は……?」


ハルトは一角獣の方を見る。答える一角獣。


「ハナ」


「……その名は【ハナ】!!!」


それを聞き終えたハナの体がだんだんと消えゆく。そして完全に消え去ってから結界域を解除。すぐに召喚する。


「召喚、【ハナ】!!!」


魔法陣の中から現れるハナ。薄いグレーの体に立派な一本の角が美しい。



「お見事、ハルトさん!!」


同じく一角獣を手懐けたラフネがその背に乗りながらやって来る。ハルトもハナの背に乗りその首に手を当て言う。


「事情はさっき話した通りだ。一刻も早く王都へ向かう。行けるか?」


ハナが首を縦に振って言う。


「そんな事情じゃ聞かない訳にはいかないでしょ。いいわよ」


「ありがとう」


ハルトはクレアを後ろに乗せ、ラフネに言う。


「準備を整えてすぐに出発するつもりだ。色々とありがとう!!」


ラフネが答える。


「一緒に行きます、ハルトさん」


「えっ?」


驚くハルト。続けるラフネ。


「僕もエルフとしてこの国を変えて行きたいと思っています。ただ怯えて暮らすよりも何かをしたいと思っていました。必死なハルトさんを見て自分も何かしなきゃとより強く思うようになりました」


ハルトは頷いて答える。


「分かった。ミリアはどうする?」


ハルトは家にかくまっている獣人との混血ミリアのことを心配して言った。


「彼女も……、連れて行きます。僕の決心が揺らがないように。そしていつも傍に置いて守れるように」


「分かった」


ハルトはラフネの覚悟を決めた目を見て言った。



「よし、では出発だ!!!」


ハルトは準備を終えクレアを後ろに乗せて言った。同じく一角獣に乗ったラフネとミリアが答える。


「はい、行きましょう!」


四人は一路王都へ向けて力強く走り出した。





「デヴィ小隊長、斥候より一角獣に乗ったターゲットらしき人物がこちらに向かっているとの連絡が入りました!!!」


報告を受けた小隊長と呼ばれたエルフの男が答える。


「ご苦労。この私が忌々しい混血の仲間共をひっ捕らえて、エクセル様の不安を払拭して差し上げよう」


デヴィはそう言うと背にした長棒を手にし、部下達に出撃命令を下した。

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