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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第三章「亡国セレスと忘却の老人編」
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38.セレス戦役(上)

朝の散歩からひとり帰って来たハルトは、宿のロビーである本を見つけた。


『セレス戦役』


ハルトは何かに導かれるようにその本を手にする。時期にして今から40年程前のセレス王国の物語。セレス王国とは以前この辺りにあった国である。ハルトは宿の女将に尋ねた。


「この『セレス戦役』って本当にあった話なのか?」


名簿を見ていた宿の女将がハルトに答える。


「ああ、そうだよ。昔ここらにあった国のことだよ」


早朝、まだ少しひんやりとした空気が辺りを包む中、ハルトはロビーのソファーに座りその本のページをめくった。





物語は戦役の終盤、セレス王国王城が多数あまたの魔物によって襲撃されている場面から描かれている。



「守れ! 守るんだ!! 何としても本丸であるこの王城だけは死守せよ!!!」


圧倒的数を誇る魔物の軍勢。大地と空を埋め尽くす魔物達。王城から見えるその光景はまさに人々にとって絶望でしかなかった。


「ぐわあああ!!!」


王城のお膝元である城下町。ここに至っては国王軍守備兵は既に退却し、街の衛兵隊が必死に魔物達と戦闘を行っていた。


「がはははっ!! 行け!! 我ら魔物の恐ろしさ見せつけてやれ!!!」


中隊を預かる魔物の司令官が号令をかける。それに呼応する魔物達。魔物の咆哮。虐殺。泣き逃げ惑う民。国の正規兵が去ってしまった街に魔物の侵攻を止める術はなかった。




「守れ! この王城だけは、何としても守れ!!!」


一方セレス王国最後の砦である王城では、魔物の()()による攻撃が行われていた。空を飛ぶ魔物が魔物軍の地上部隊を乗せ、次々と王城の窓から突入してくる。


カンカンカンカン!!


必死に魔物を迎撃する国軍。最後の砦である王城だけに王国軍でも選りすぐりの精鋭がこれを迎え撃つ。


「守れ! 守れーーー!!!!」


背水の陣で臨むエリス王国軍。魔物達もその最後の攻撃に手を焼き、一進一退の攻防が続いていた。


「国王!! 急ぎ最上階へ避難を!!」


エリス王国の国王とその側近は、万が一の事態に備え緊急脱出場でもある王城最上階へ向かった。最悪の場合、空を飛ぶ【ヒトナキモノ】を操る召喚士と共に脱出する予定だ。


「すまぬ、皆の者……」


国王は多くの民、そして兵が次々と死んでゆく現実を受け止めながら、最上階へと向かう。

しかしそれは魔物軍にとっては、想定通りの行動であった。王城の窓から見える三体の飛竜。それに乗り戦況を見つめる三人の魔道師。彼らに王城内より「国王が最上階に避難した」との連絡が入った。


「では、始めましょうか」


ひとりの魔道師が不気味な笑みを浮かべて言う。頷くもう二人の魔道師。そしてそれぞれが魔法の詠唱を始める。あっという間に集まる強大な魔力。そして魔道師達は同時に叫ぶ。


「ヴィシュガルド・エクスプロージョン!!!」



それを見た者は口を揃えて言う。


――太陽の爆発、だと。


国王が避難した王城の最上階。そこに突如現れた真っ白な光。それは辺り数キロにも轟く爆音と共に激しい破壊をもたらした。爆音、爆風、高熱。王城最上部は跡形もなく吹き飛ばされ、そこにいた者達は叫ぶ間もなく消え去ったと言う。



「ああ、城が、王城が……」


城外で魔物と戦っていた兵達が、その突如発生した爆風と爆音に必死に耐える。そしてその吹き飛ばされた王城を見て皆涙を流して嘆いた。


最早勝敗は決した。

国王、その他大勢の王族を失い、国の兵士も多くが倒れた。魔物軍にも多くの犠牲が出たが、王城爆破を見て多くの魔物が喜びこう叫んだ。


――我々の勝利だ、と。


このままの勢いでセレス王国軍を一気に押し切り、完全たる勝利を手に入れるだろう。多くの魔物達がそう思った。


……ただ一ヶ所を除いては。




「はああああ!!!!」


王城に繋がる城門。

城の入口であり、魔物軍の地上部隊が王城に突入する為に絶対に攻略が必要な場所。しかし、まだ()()は落とされていなかった。どれだけの魔物を投入しても、どれだけの魔法を撃ち放っても、絶対に倒れぬ五人の将がそこに居た。



――真紅しんく五鬼将ごきしょう



後にそう呼ばれるようになったセレス王国の最後の精鋭部隊。真っ赤な鎧を纏い、その戦いぶりはまさに血を纏った鬼神の如し。彼らに向かった魔物達はあっという間に斬られ真っ赤な血が辺りを染める。


「ギュアアアアア!!!!」


長剣を操る屈強なヒト族。

正確な弓と強力な魔法を使うエルフ。

底なしの体力と鋼の体を持つオーガ。

素早い動きと、狡猾な知恵のゴブリンマスター。


そしてそれを纏め、後に英雄と称えられる召喚士の隊長バイス。



この五人。たった五人に魔物の一個師団に相当する部隊が次々と壊滅させられて行く。大勢は決したが、この真紅の五鬼将周辺の兵達だけは未だ士気高く戦い続けている。



「た、大将!! お待ちしておりました、是非お力を!!!」


業を煮やした魔物軍。ついにその大将と呼ばれた最強の魔物が城門前に現れた。屈強な肉体。溢れ出る強大な魔力。見るだけで相手を委縮させる鋭い眼光。それは一見して尋常の魔物ではないと分かる存在であった。

魔物の大将が獅子奮迅の戦いを見せる五人の赤き将に向かって叫ぶ。


「王城が陥落したのに何故戦う!!」


それに気付いた隊長のバイスが答える。


「まだ守るべき民がいる。そして何より俺達自身の誇りの為だ!!!!」


そう叫びながら次々と魔物を斬るバイス。



「ふっ、では行くぞ!!!」


魔物の大将は自身の背丈よりも大きな剣を持ち、一直線に隊長バイスに向かって突き進んだ。

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