↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第三章「亡国セレスと忘却の老人編」
PR
37/223

36.ルフトアール

「ねえ、ハルト」


クレアはその目の前に広がる光景を目に言った。


「私の目、おかしくないわよね?」


「ああ、俺も同じ質問をしようとしていた」


ルルは黙ったままそ(・)れ(・)を見つめている。


「多分、目は大丈夫だろう。おかしいのは奴らの方だと思うぞ……」



ハルト達はルルの服が乾いたのでさらに洞窟の奥に進んでいた。

洞窟内は奥に行けば行くほど小川の数が多くなり、地面は濡れ、天井からはぽたぽたと水が垂れてくる。


やがて少し大きな広場のような場所に出た。そこも景色は同じ。小川が流れ、じめじめとし、光苔が緑色にぼんやり光る。

そして魔物。ヘビのようなにょろにょろとした魔物だが、よく見るとヒレのような物がついておりヘビと言うよりはウナギに近いものであった。


ハルト達にとってそれは特段どちらでも良い問題であった。ただ解せない点がひとつあった。それは、彼らは空(・)を飛んでいたということだ。



「ねえ、ハルト。ウナギって空を飛ぶ生き物だっけ?」


クレアが腕組みをしながら空を飛ぶウナギの光景を目の前にして言った。ハルトが答える。


「いや、確か水の中を泳ぐものだと思う。少なくとも俺の認識の中で空を飛ぶウナギってのはいない」


黙っていたルルが言う。


「でも美味しそうだね」


ハルトがルルの顔を見て言う。


「えっ、食うのか? 魔物だぞ、あれ……」


ルルが笑って答える。


「ふふっ、冗談よ」


「とりあえず……」


ハルトはそう言って空を飛ぶウナギに剣を抜いて向かって行った。にょろにょろと攻撃をかわすウナギだが、数分後には大方退治し終わった。地面に落ちているウナギを見てふたりが言う。


「な、なんか……、いやらしいわね。このにゅるにゅるって言う感じ……」


「うん、やっぱり美味しそう……」


ハルトは敢えて何も聞こえないふりをした。




「うわあ、広ーい!!」


空飛ぶウナギを倒しつつ奥まで進むと、最深部なのだろうか行き止まりになった広い空間に出た。目の前に広がる広大な湖。水はとても澄んでおり水底に沈んだ岩や小魚などがはっきりと見える。

辺りは静寂。ハルト達の足音、そして話す声だけが木霊して響く。


「魔物、いないわね」


クレアが辺りを見ながら言った。


「そうだな、結構大きいウナギのボスなんかがいるかと思っていたのだが……」


ハルトが冗談っぽく言う。クレアが顔を赤くして言う。


「あ、あなた。何言ってるの! そんな大きいのだなんて……、ほ、ほんといやらしい……」


「大きいのだとひとりじゃ食べきれないかな」


会話が全く噛み合わない三人であったが、気が付くとクレアが湖の方を見て口を開けて固まっている。



「どうしたんだ、クレア?」


そう言ってクレアが指さす方を見ると、湖面の上にこれまで倒してきたウナギの何倍もあるような巨大ウナギが宙に浮いている。太く長い体に、鈍く光る皮膚。これまでのものとは圧倒的に違う存在感。


「で、でかーーーっ!!!」


思わず叫ぶハルト。


巨大ウナギは口を開けて話しかけてきた。


「何しに来た、ヒト族の者よ」


いきなり戦闘にならないことに少し安心したハルト。素直にここに来た目的を話した。黙って聞く巨大ウナギ。ハルトの話を聞き終わると言った。


「なるほど、よく分かった。私もずっとこんな所にいて退屈であった。もとよりじめじめした場所は嫌いだし」


突っ込みを入れそうになるクレアを止めるハルト。巨大ウナギが言う。


「ただ、それなりの力を示して貰わんといかん。外に出てすぐ死んでしまっては困るのでな」


「それはもとより!」


ハルトはそう言うと巨大ウナギを中心に結界域を展開。



「さあ、行くぞ!!!」


そう言うとハルトは剣を抜き巨大ウナギに突入する。


「易々とは負けぬぞ!」


巨大ウナギはそう言うと、その大きな尾びれを思い切りハルトに向けて振って来た。


「ブロンズシールド!!」


攻撃に合わせてシールドを発現させ防ぐ。その隙に剣で斬りこむハルト。寸《すん》でのところでかわす巨大ウナギ。意外と素早い。二人の攻防がしばらく続く。



「ほお、中々やるではないか。ではこれはどうだ?」


巨大ウナギはそう言うとぐっと体に力を込めた。


「えっ?」


ハルトは頭上に強力な電磁波のようなものを感じ身をひねる。そしてすぐ横にドンと言う轟音と共に落ちる光の束。


「ぐっ!!」


直撃は避けられたものの、攻撃が掠《かす》った左腕がジンジンと痺れる。


「お前、もしかして……」


巨大ウナギはハルトを見て言う。


「そう、私は電気ウナギの一族。自在に雷を操る」


「マジかよ……」


ハルトは先ほどの痺れの意味を理解した。そして流れる汗。



――ブロンズのシールドとは最悪の相性だな。防御もできない訳か……


召還もできない、シールドも使えない。

ハルトにとって初めてと言えるような厳しい状況であった。くねくねと宙を舞う巨大ウナギ。表情は読み取れないがきっと余裕なんだろうと思う。ただハルトは思った。


(発想の転換。守る者はいない。だったら……)



「全力で攻撃あるのみ!!!!」


ハルトは剣を強く握り、素早く巨大ウナギに斬りかかる。


ザンザンザン!!


ハルトの剣を尾びれではねのける巨大ウナギ。そして少し後退して、体に力を入れ落雷攻撃を仕掛ける。


「当たるか!!」


ドーンと落ちる雷をギリギリのところでかわすハルト。そして思いきり斬り込む。


「はああああ!!!」


シュン!!


「くそっ!! ……えっ!?」


攻撃をかわした巨大ウナギは素早くハルトの足に巻きつき、すぐにその頭上に雷を発生させる。


――攻撃だと!? 


このままではウナギ自身も回避は不可能。一緒に雷撃を受けるつもりか、それともウナギには雷が効かないのか?

そんなことを考える間もなく、ハルトは本能的に自分の少し横(・)にブロンズシールドを発生させた。


ドーーン!!


巨大ウナギが落とした雷は、途中で軌道を変えハルトが発生させたブロンズシールドに向かって落ちた。それを見たハルトが閃く。



「……そうか!!」


ハルトは巻き付いた巨大ウナギを蹴り剥がし、一旦下がって叫ぶ。


「これで決めるぞ!!!!」


再び剣を持って向かって斬りこむハルト。落雷を落とそうとその頭上にバリバリと発電させるウナギ。斬りこむ直前、ハルトが叫んだ。


「ブロンズシールド、多連!!!」


すぐに現れるシールド。しかしそれはハルトのずっと横、そして縦に塔(・)のように連なって現れた。


ドーン!!


ウナギが放った雷は空中で大きく曲がり、ブロンズで作られたシールドのタワーに向かって落ちていく。


「えっ!?」


初めての出来事に驚く巨大ウナギ。その現れた一瞬の隙をハルトが付く。


「はああああ!!!!!」


ドン!!!


ハルトは大きく飛び上がり、そして巨大ウナギの頭上から思いきり斬り込んだ。


「ぐわああああ!!!」


体を捻り直撃は避けたものの、大きな斬撃を受け地面に落ちる巨大ウナギ。ハルトはすぐにやって来て剣を突き付け言う。


「まだやるか?」


巨大ウナギは首を横に振りハルトに言う。


「降参だ。見事な戦いだったよ」


「じゃあ……」


「ああ、お前について行こう。契約に応じる」


「やった!!」


ハルトは両手を上げて喜んだ。すぐに剣を収め巨大ウナギの元に行く。


「お前名前は?」


ハルトを見て巨大ウナギが言う。


「空ウナギ(ルフトアール)」


「よし。我が名はハルト。古の盟約により汝と血盟召喚の契りを結ばん。求ム、汝を求ム。我が血肉を食らい我の叫びに応じよ!! その名は【ルフトアール】!!」


巨大ウナギの体が白くなって消えていく。



「よし、無事終了!!」


ハルトは結界域を解き、クレアとルルの元に戻る。


「待たせたな。無事契約できたぞ」


嬉しそうに言うハルトにクレアとルルが答える。


「そ、そんな大きなウナギ。い、いやらしいにも程があるわ……」


「美味しそうだわ、本当に……」


ふたりとも顔を赤らめてハルトに言う。ハルトは溜息をついて言った。



「じゃあ、帰ろうか」


やっぱり今日は会話が噛み合わないなあとハルトは改めて思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。