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護衛士ハルトとふたりの姫様  作者: サイトウ純蒼
第二章「ヘブンズウォール編」
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21.壁を守る者たち

「悔しい……」


彼からは負のオーラが溢れ出ていた。


「もっと力が、もっと強くなりたい……」


その彼にひとつの影が近付いて言う。


「力を欲するか? ではその望み叶えよう……」


その影より禍々しい魔力が発せられる。


「ぐっ、グワあああ……」


「……どうだ、気分は?」


「殺ス、全てヲ壊ス………」



「ふふっ、ふふふふっ………」






「ハルちゃん、行くよ!!」


ゴールドバードはハルト達を乗せヘブンズウォールに向けて一直線に飛んでいた。そして壁の間際まで来ると一気に急上昇を始める。


「ううっ」


「しっかり掴まって!!!」


「ぎゃああああああ!!!」


ハルトとルルは落とされないように神鳥にしがみつく。一方クレアは恐怖のあまり大声を上げ、そして後ろからハルトにしがみつく。


「お、おい、クレア!! そんなに強く掴まるな!! 危ないだろ!!!」


「いやああああああ!!!!」


もはやどんな声も聞こえないクレア。



「きゃあああああ!!!」


今度はルルが悲鳴を上げる。ハルトが言う。


「ルル、ちょっとだけの辛抱だ!!」


ルルが顔を赤らめて言う。


「違う! ハルト、どこ掴んでるのよ!!」


ハルトは自分の前に乗るルルの胸を、後ろから思い切り掴んでいた。


「うわああっ、ごめん! ルル!!」


直ぐに手を離すハルト。ルルが叫ぶ。


「いやああ、落ちる!! 離さないで!!!」


ハルトも叫ぶ。


「どうすりゃあ良いんだよおお!!」


「ぎゃあああああああ!!!」


構いなしに悲鳴を上げるクレア。

三者三様、神鳥の急上昇に必死に耐え続けていた。



ゴールドバードは一直線に空へ向かって飛ぶ。

果て無く続く壁。神鳥自身もどこまで飛べ続けられるか分からない。無事頂上まで飛べるのか。ハルトの召喚力も心配だ。


(頑張れ、ハルちゃん……)



祈りながら飛ぶ。

壁の下から見ていた黒い点。それは高度を上げていくとそれが何かの生物であることが分かった。ハルトは片目を開けてその生物を注視する。

鳥? 一体何だろう。さらに上昇すること数十分、それは鳥ではなく空飛ぶ竜、飛竜であることが判明した。


不意にゴールドバードが頭の中に直接話してくる。



――気を付けて、ハルちゃん。来るわよ!!


ハルトが周りを確認すると数体の飛竜が咆哮し、爪を振り上げて飛んでくるのが見えた。


「くっ、ライトシールド!!!」


ガンガン!!


ハルトはシールドを何枚も張り、飛竜からの攻撃を防いだ。


「いやああああ、何で、どうしてなのよおおおーーー!!!」


相変わらず叫ぶクレア。


「少し黙ってろ!!!」


ハルトが大声でクレアに言う。


「だ、だって……!!!」


もうクレアは泣きそうである。その時ゴールドバードが叫ぶ。


「見えたわよ!! 頂上!!!」


目の先には壁の頂が見える。ハルトは続けてシールドを張り防御する。ゴールドバードは最後の力を振り絞るように強く、そして大きく羽ばたいた。


「着いたわ!!!!」


ついにゴールドバードが壁の頂上に飛び出る。



「こ、これは!!」


ハルトが目にした壁の頂上。それは数百メートルもある厚い壁。そこには土があり、木が覆い茂り、そして小川が流れる。長く続く壁の先には地上と変わらない自然豊かな景色が広がっている。

そしてその壁の中央部には集落らしきものも見えた。そこには花が咲き、作物が植えられそして簡易的な建物もある。


「な、何これ!? こんなところに集落がある!!」


クレアもその景色を見て驚く。


「クレア、気を抜かないで!」


執拗な攻撃を続ける飛竜に対して気を抜かぬようルルが言う。


「ハ、ハルちゃん、一旦降りるぞ」


ゴールドバードはそういうと壁の頂上に降り立つ。そして「疲れた」と言って召喚界に帰って行く。


「ありがとう、ごっちゃん!! さて!!」



ハルト達は頂上に降り立つと直ぐに剣を抜く。召喚力の大量消費で眩暈もするが、襲い掛かろうとする飛竜達に対峙する。


「くそっ、おい待て、お前ら!! 話のできる奴はいないのか!!」


ハルトはシールドを出し防御しながら叫ぶ。ハルト達の頭上を周回するように飛ぶ飛竜達。

やがてその中で一回り大きな飛竜がハルトの少し前に降り立った。そしてハルトに向けて大声で言う。


「何者だ、お前達!!」


鋭い目つき。盛り上がった筋肉。今にも飛びかかって来そうな気迫。警戒する飛竜の問いかけにハルトが答える。


「俺はハルト。壁を越えたくてここへ来た。危害を加えたりしない。通過するだけだ。頼む、通してくれ!!」


ハルトは空を舞う飛竜に大声で言う。


「壁を超えるだと? 嘘をつけ!! お前らヒト族の魂胆など分かりきったこと。懲りずに強奪に来たのだろう!! この斥候団長リーヴァがいる限り悪行は許さん!! 大人しく捕まれ!! 聞かぬのならばここから振り落とす!!!」


リーヴァと名乗った飛竜は大きな翼を広げると咆哮と共に大声で叫んだ。ハルトが驚いて言い返す。


「ちょ、ちょっと待てって!! 強奪とか悪行とか意味が分からんぞ!! ちゃんと説明しろ!!」


「黙れ!! 行け、捕えよ!!!」


リーヴァの合図で空中に待機していた多くの飛竜が一気にハルト達に向かって突進してくる。


「くっそ、また戦闘かよ。クレア、俺の背中を頼む。ルルは俺達の間に! 可能な限り防戦する。できる限り斬るな!!」


ハルトが急ぎで言う。


「分かったわ!!」


そう言うとクレアは剣を抜きハルトに背を付ける。


「グワアアアアン!!!!」


数多あまたの飛竜が一斉にハルト達に襲い掛かる。黒い皮膚をしたもの、赤い皮膚をしたもの、爪の長いもの、翼が大きなもの。様々な飛竜が一糸乱れずにリーヴァの指揮の下、ハルト達に襲い掛かる。


「ライトシールド!!!」


ハルトは自分達の前にシールドを数枚張り、防御に徹する。


「来るぞ!!」


ガンガンガンガン!!!


爪や牙でハルトのシールドを攻撃する飛竜達。攻撃力はそれほどないのか、簡単には破られない。


「はあああああ!!!」


ドン!!!


クレアは剣を()にして斬れないように近づいてきた飛竜を叩き落とす。


「よし、いいぞ、クレア!!」


ハルトの声に気を良くしたクレアが立て続けに飛竜に斬りかかる。


「はっ、はっ、はああああ!!!」


ドンドンドン!!! シュン!!


「くっ!!」


クレアの攻撃を避けた飛竜が一旦引く。それに釣られるように前に出るクレア。


「列を崩すな、クレア!!」


「えっ!?」


ハルトが叫んだ時にはすでに遅かった。ひとり走り出たクレアは気付くと周りをたくさんの飛竜に囲まれている。叫ぶ飛竜。多くの飛竜が羽ばたきクレアの周りに砂埃が舞い上がる。


「いや、いやっ!!」


クレアが必死に剣を振り回す。それを軽々と避ける飛竜。


ドン!!


「きゃああ!!」


空を自由に飛び回り、背後や横から攻撃を加える飛竜。


「クレア!!!!」


ハルトも必死に防戦しながらクレアの元に近付こうとする。

しかし剣を振り回しながらも徐々に壁の淵へと追いつめられて行くクレア。ハルトが叫ぶ。


「クレア!! それ以上行くな!!! 落ちるぞ!!!!」


「えっ!?」


クレアはハルトに言われて初めて自分がいる場所に気付いた。すぐ横は壁の端。下から強風が吹き上げる。その状況の驚き、急に堅くなる体。恐怖、流れる汗。そして一匹の飛竜がクレアに向かって突撃した。


「グワアアアアアン!!!!」


ドン!!


「!?」


飛竜の攻撃を受けたクレアはその衝撃で後方に吹き飛ばされた。


「きゃあああああああああ!!!!!」


「クレアあああああ!!!!」


ハルトが叫ぶも、クレアは壁の下へと姿を消す。


「くそっ!!! ルル、そこのくぼみへ!!」


ハルトはすぐにルルを近くにあった岩のくぼみへ行かせる。


「シールド!!! ルル、そこから絶対出るな!!!」


走りながらくぼみに入ったルルの前にシールドを張るハルト。



「うおおおおおお!!! クレアああああ!!!!」


ハルトはそのまま崖に向かって走って行き、そしてクレアを追って思い切り崖下へ飛び込んだ。

少しでも面白いと思われた方、ブックマーク、ポイント評価を頂ければ作者はとても感激するので宜しくお願い致しますm(__)m

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