15.ライトの試練
「【原色の悪魔】白のライト。私もその姿は初めて見る……」
光の守護者であるライトを見てガイアがつぶやいた。ライトが言う。
「原色の悪魔、ねえ。まあ他の者が何と呼ぼうが気にはしないが、我はこれでも天使であるぞ」
「天使?」
ライとの言葉に驚くハルト。
「下位ではあるが、神鳥であるゴールドバード様をお守りする役割を与えられている」
「な、なんか凄い話になってきたな……」
ハルトが言う。
「便宜的に数名を将にして皆で守っている。それを次々と倒してしまうとは……」
ライとは少し困った顔をして言った。
「ライト様! これには色々と訳が……」
そうアクアが言うとライトがその言葉を塞ぐように口を開いた。
「ここから見ておったので分かっておる。和平交渉をしたいと言っておったな」
「知ってたのか、それならば話は早い。是非お願いしたい」
ガイアが一歩前に出てライトに言った。
「もともと我等はお主ら獣族に対し何もしておらん。攻撃してきたのはそちらではないか?」
「いや、それは実は……」
ガイアはライトにブルーノのことを話した。
「ヒト族の召喚士? こんな辺境にヒト族がいること自体おかしい」
ライトの話を聞き、ウェルスがハルトに言った。
「ハルトもヒト族の召喚士だろ? 確か転送魔法で飛ばされたとか……」
「ああ、父さんの魔法で飛ばされた。もうずいぶん前のように感じるなあ」
ハルトの言葉にライトが言う。
「相当高位な魔法使いであらせられるのか、お前の父と言うのは?」
「いや、俺と同じ護衛士」
「護衛士……?」
ライトは少し意外そうな顔をする。
「それよりもゴールドバードは貸してくれるのか?」
ハルトが単刀直入にライトに尋ねた。
「ゴールドバード様は仮にも天界から来た神鳥。物を貸すみたいに言うではない」
ライトがやや怒った口調で言う。
「ああ、それは悪かった。で、ダメなのか?」
ライトが答える。
「ゴールドバード様の力をお貸しして、一体我々には何の得があるのだ?」
ハルトはライトをじっと見つめて言う。
「ウェアウルフと和平を結ぶ。そしてここを争いの無い場所にする。そんで両国で一緒になってその鳥を守る」
「え!? えっ、ちょっと、ハルト殿……」
それを聞いたガイアが驚いて言う。
「大丈夫、大丈夫」
ハルトが笑顔でガイアに言う。
「はあ」と溜息で返すガイア。ライトが言う。
「それは悪くない話。元々我も争いは好まない。ただその前にお前にその資格があるのかを試させてもらうぞ」
「戦うのか?」
ライトに尋ねるハルト。
「いや。言ったはずだ、我も無益な争いは好まない。ただ有益な争いなら致し方無い」
「有益な争い?」
「そうだ、『精神世界』で戦って貰う」
「精神世界?」
ハルトがそう言うと急に目の前が真っ白になって意識が遠のくのを感じた。
「……なさ…い。……起き…なさい。ハルト」
ハルトが目を覚ますとそこは全てが真っ白い世界であった。床も空も壁もすべて真っ白。その境が全く分からない。
「ここは、どこだ……?」
ハルトがそう言うと後ろから美しい女性の声が響いた。
「私はここだ、ハルト」
ハルトが振り向くとそこには光の守護者ライトが立っていた。
「お前は、ライト……」
ハルトは身構える。ライトが続ける。
「ここは精神世界。何をしても実世界には影響ありません。思う存分戦うことができます」
「くそっ、やっぱり戦わなきゃならないのか」
「当然です。弱き者に神鳥のお力をお貸しする訳にはいきませんから」
ライトは余裕の顔で答える。
「分かったよ、やってやる!!」
ハルトはそう言うと右手を上に挙げて詠唱を始めた。
「我が名はハルト。その名に契りし盟約により汝を呼ばん!! 召喚【ウェルス】!! ………!?」
ハルトが召喚を行おうとしたが、魔法陣は現れずヒトナキモノの召喚ができない。ライトが言う。
「ここは精神世界。そのような力は使えません。己の体一つで戦うのです」
「くそっ!! どりゃあああ!!!」
ハルトは拳を強く握りしめライトに殴りかかる。
「甘い」
「うわっ」
ハルトの攻撃を軽くかわすライト。そして右手を前に出すと気合と共に衝撃波をハルトに放つ。
「シールド! シールド!! シー……!?」
ドン!!
「ぐわああ!!」
ライトの衝撃波をまともに食らい後方まで吹き飛ばされるハルト。体の内側から重圧を掛けられるような衝撃。これまでに経験したことがない攻撃である。
「言ったはずです。己の肉体のみで戦えと。あなたの思いはそんなものですか? あなたの気持ちに穢れがなく、そして強ければ強いほどその拳の威力はここでは上がります」
(俺の思い……)
「はっ!!」
ドン!!
「ぐわっ!!!」
再びライトの衝撃波を受けるハルト。全身に重い痛みを感じながら立ち上がる。目を閉じ自問するハルト。
――なぜ戦っているのか
――何の為に戦ったいるのか
――誰のために戦っているのか
クレアにルル、ウェルスを始めとした仲間達。そして、父さん………
ハルトは目を大きく見開いて拳に力を込める。体の底から漲る力。熱い鼓動。みんなの笑顔がハルトを押す。
「はあああああ!!!」
ハルトは拳を振り上げ一直線にライトに向かって走り込む。身動きひとつしないライト。そして渾身の一撃を撃ち込んだ、と思った瞬間、再びハルトの視界が真っ白になり意識がなくなるのを感じた。
「……ト、……ルト!! ハルト!!!」
再びクレアの膝の上で目を覚ますハルト。体の痛みは、ない。
そしてライトが傍に立ち、言った。
「合格です、ハルト」
ハルトは安堵から全身の力が抜けるのを感じた。
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