14.光の守護者
「ハルト!! ハルトーー!!!」
真っ黒な炎を放って倒れたハルト。クレアとルルが傍に寄り抱きかかえて名前を呼ぶ。
「ハルト! ハルト殿っ!!!」
ウェルス、そしてゴーンとの死闘を終え合流したガイアも名前を呼ぶ。
「ううっ、うう……」
暫くしてようやくハルトが目を覚ます。
「良かった!! ハルト、また心配したんだから!!!」
クレアとルルがハルトに抱き着く。
「え? ああ、そうか……、俺は……、ん?(……何だ……この柔らかいものは?)」
バーン!!!
「痛ってえええ!!!」
「ああああ、あなた!! どさくさに紛れてどこ触ってるのよ!!!」
殴られて地面に落ちるハルト。胸を押さえ顔を真っ赤にするクレア。
「し、仕方ないだろ、今のは事故だ!!」
「うん、今のは仕方がない」
ルルも同意する。
「あ~、何だか釈然としない……」
納得いかないクレア。しかしそれを後ろで見ていたウェアウルフの二人はもっと納得いかない顔をする。
(なあ、何でハルトはクレアに殴られたんだ?)
(さあ、分かりませぬ……)
二人は小声で話した。
「それよりも体調は大丈夫なの、ハルト?」
心配そうにハルトの顔を眺めるルル。ハルトは自分の腕や体を触って答える。
「ああ、何だか体が重い感じはあるけど、それ以外は問題なさそうだ」
「本当に大丈夫なの、また気絶しちゃって……」
クレアが聞く。
「ああ、問題ない。元気だぜ!!」
「良かった」
クレアとルルは安堵の表情を浮かべて言った。クレアが言う。
「それにしても一体何なの、あの技? この間も気を失っちゃうし、物凄い威力だし……」
ハルトが答える。
「うん……、やっぱりよく分からない。俺も本当に分からないんだ、あれ……」
ガイアが驚いて尋ねる。
「えっ、分からない? と言うことはハルト殿、あの黒い炎についても何もご存知ないと?」
ハルトは少し考えてから答える。
「知らない。最近使えるようになったんだ。でも何だか俺じゃない何者かが放った感じがする……」
「そうでしたか……」
ガイアが答える。
「……あれ? ハルト、その手の模様は何?」
ルルがハルトの右手の甲に浮かんだ模様にふと気付いて質問した。
「……何だこれ?」
ハルトはその右手の甲に現れた模様、まるで炎が燃えているような黒い絵を見て言った。前回は気が付かなかったものである。
「いつから、こんなものが……」
困惑するハルト。触ってみるが彫られたものではないようだ。
「先ほどの黒炎と何か関係があるのですか」
ガイアが言う。
「分からない。でもその可能性が高いかも」
ハルトはガイアを見て言った。そしてハルトが思い出したように言う。
「あ、そう言えば風の奴は?」
「消し飛んだよ、お前の黒炎で」
ウェルスが答える。
「そうか……。でも一体何なんだろう。覚えているのはあの時頭の中に、【黒炎】って言葉が浮かんでそれから自然と炎が出た」
「なるほど」
ガイアが難しい顔をして言う。
それを聞いていたアクアがハルトに言った。
「あの黒い炎、上手く言えないけど私達には抗えない力と言うか、本能的に何か圧のような強い力を感じる……」
「抗えない力?」
ハルトが聞き直す。
「ええ、実際あれだけ素早いはずのシルフィードも、全く動けずに炎に飲まれたわ。多分動けなかったんだと思う」
「お、恐ろしいなあ、ハルトの炎って」
ウェルスが冗談っぽく言う。
「ああ、上手く使えれば戦力になるかもしれないけど、今はまだ自在には撃てないし。それに撃ったら撃ったでこんな風に倒れてしまう。そもそも得体が知れない部分もある。使えるようになるのはまだ先かな」
「そうだな。焦ることはない。ハルト殿は十分に強い」
体中傷まみれのガイアが言う。
「ガイア、その傷大丈夫か? ゴーンは倒せたのか?」
ガイアは右手の親指を立ててハルトに応えた。
「しかし【原色の悪魔】ってみんな強いな」
立ち上がって装備を整えながらハルトがつぶやく。
「ええ、私以外はみんな戦闘タイプ。どうして私が選ばれたのか分からない……」
アクアがハルトのつぶやきにそう答えた。やはりまだファイヤのことが頭にあるようだ。
「あなたにはあなたの役割があるんでしょ。みんなあんな脳筋ばっかじゃまとまらないし」
クレアが落ち込むアクアの肩に手を乗せながら元気付ける。
「ありがとう、クレア」
少しだけ笑顔になり答えるアクア。
「ただできればこれ以上の戦闘は避けたいですね」
すっかりいつもの紳士に戻ったガイアが言う。
「そうだな。俺達は戦いに来たんじゃなくて和平交渉に来たんだ。だけどなんか戦ってばかりだな……」
ハルトが言う。
「まあ脳筋と脳筋が会えば自然と戦闘になるでしょう」
クレアが言うとウェルスが頷きながら答える。
「まさにその通りだ」
ウェルスを見る一同。
「ん? どうした?」
「いや、別に」
ハルトがさらっと返す。
「と言う訳でアクア殿。その残りの光の守護者と言う者に会った際は、是非交渉をお願いしたい」
ガイアがアクアに頭を下げて言う。ハルトが首をひねって言う。
「と言うかアクアは俺達とこのまま一緒に行ってもいいのか? 風の奴を倒すって当初の目的は達成した訳だし……」
アクアは笑顔になって答える。
「一緒に行きます。多分それはファイヤも望むことだろうし、みんなが平和に暮らせるようになるんだったら協力しない訳にはいきませんから」
「そうだな、ありがとう」
礼を言うハルト。
「さて、そろそろ先に進もうか。この先にある岩山に向かえばいいんだな、アクア」
全員の支度が終わるのを確認してガイアが言う。
「ええ、そうです。あの岩山の山頂に神鳥はいます」
アクアが指差す先には、茶色のごつごつとした岩肌が連なる岩山が見える。
「結構登るのねえ……」
岩山を眺めながらクレアが溜息交じりに言う。
「仕方ないだろ、さあ、みんな行こう……、 ……誰だ!!!」
ハルトがそう皆に声を掛けた時、背後にこれまでに感じたことの無いような不思議な気配に気付いた。
その者は背後にある丘の上に立っていた。
真っ白な服に金色の長い髪。そしてその背中には白く輝く翼が生えている。透き通るような白い肌。その美しき姿、そして独特のオーラはハルト達の思考を一瞬停止させるほどであった。
「ライト様……」
その姿を見たアクアがすぐに言った。
「光の守護者、ライト様です……」
改めてアクアはハルトに向かって言い直した。ライトの姿を見るハルト。ライトが口を開く。
「あなたですか? ゴールドバード様の力を借りたいと言う者は」
優しい声。しかしその中にもしっかりとした強さがある。
ハルトはライトの姿を見ながらゆっくりと頷いた。
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