Ep43 覇剣と呼ばれた少女
やっと本気が出せる
剣を受け取ってから、サナの雰囲気が変わった
軽い足取りで、コマンダーゴーレムとの距離を詰める
ヒロの石砲が直撃していたが、そこはランク5
何事もなかったかの様に、腕を振ってで迎撃をする
さっきまでは相手の力に逆らわずに戦っていた為、躱す以外の選択肢がなかった
しかし、今は違う
思いっきり剣で腕を切りつけ、その反動で更に懐深く潜り込む
腹から迎撃用の矢が射出されるが、それも剣の柄で叩き落とし足元をすり抜ける
相手が振り向く前に足、そして胴に一撃を入れ、腰と肩を一歩ずつ蹴って空高く舞う
コマンダーゴーレムはサナの動きについていけず、一瞬その姿を見失ってしまった
その隙をついて、空から体重を載せた一撃を頭に振り下ろし、頭を蹴って距離をとる
ズガァン
そこにすかさずヒロの2発目が突き刺さる
そして、再び死角からサナが接近して斬りつける
今までは殆どダメージを与えられなかった弱点の関節部も、レッサーデビルトレントの剣ならば僅かではあるが確実にダメージが通っていた
これだけ激しい戦いをしていても、傷一つつかない刀身はさすがサナのために作った剣である
剣が折れないのであれば、サナの攻撃し放題だ
もともとスピードでは圧倒的にサナに利があった
更に、真っ正面から受けてもビクともしない剣がサナに不足していた防御をフォローしてくれる
その上定期的に飛んでくるヒロの砲撃が確実にダメージを蓄積していく
リーフやカバ太もサナの邪魔にならないように石を投げたり、鎖鎌で視界を遮ったりして牽制をする
サナの嵐のような猛攻とヒロの断続的な砲撃によりコマンダーゴーレムの装甲が所々ひび割れ、砕け散っていく
コマンダーゴーレムも負けじと、体の至る所に装備している兵器で不意打ちや、隙を狙って攻撃を加えるが、全てサナに難なく弾かれていく
今までの膨大なゲームの経験と、鋭いカンを持つサナに大した工夫もない小細工が通じるはずがなかった
そして、ついにコマンダードーレムが耐え切れなくなり片膝をつく
そこからは、完全に一方的な戦いだった
HPは2割ほど残っていたが、まともに反撃もできない状態のではどうしようもない
程なくして、サナの強烈な一撃によってコマンダーゴーレムのHPバーは砕け散った
「ふぅ、なかなかの相手だったわね」
完全に沈黙したのを確認して周囲に意識を向けると、さっきまでいた白いカバみたいな生き物がいなくなっていた
既にヒロはあらかた勝負が決まったところで、その場から撤収していた
プレーヤーの表示が黒いままでサナの前に現れる気がなかったためである
カバ太もヒロのいいつけを守り、あとはサナ一人でいけるタイミングを見計らって、ヒロの元へと戻っていた
「おい、そこの羽生えたの」
が、リーフはまだその場に残っていた
「なんでしか、人間の女」
「あんたの師匠とやらはどこに行ったのよ」
「あっ、しまったでし、リーを置いて行っちゃダメなんでし」
「ちょっとまちなさい」
「もう、うるさいでしね、リーには師匠を追うっていう大事な用があるんでし」
「あたしも、その師匠のとこに案内しなさい、これの礼もしたいしね」
そういって、ヒロが作った剣を叩く
「嫌でし、なんでリーがお前の言う事を聞かなきゃいけないんでし……」
ブンッ
「うっひゃあでし、何すんでしか、危うく直撃するとこだったじゃないでしか」
「剣のサビになりたくなかったら、案内しなさい、あいつには言いたいことが山程あるんだから」
「ふんっでし」
そう言ってリーフは高く飛び上がる
「リーはそんな脅し程度に屈しないでし、悔しかったらここまで来るでしね。まぁ、人間にはできないと思うでしが」
プチッ
「このクソガキ、さっきからおとなしく聞いてれば調子乗って、絶対殺す」
サナは、近くの木を駆け上がり、三角飛びの要領でリーフのところまで飛び上がる
そして、完全に殺す勢いで剣を振る
「うわっと、猿みたいな女でしね、でもその程度じゃあって、うひゃっ」
完全に外したと思ったサナが、空踏みまで使って切り返してくる
「ちっ」
寸でのところでリーフは躱して、更に距離をとる
「ほんとに危ない女でしね、でもさすがにここまでは届かないでしね、所詮は地べた這い回る人間でしね、うははははははでしー、バーカバーカでしっ」
ビュンッ
「うっひゃあでしー」
サナはさっきの戦いで折れた剣を力いっぱいリーフに投擲した
直撃をさけたものの、体の真横を剣がかすめたため、驚いた勢いで下へと落ちる
しかし、途中で木にぶつかりながら何とか体制を立て直したリーフは、ふらふらと森の奥へと逃げるように飛んでいった
サナにお気に入りの剣を取られてしまい、仕返しをするつもりだったのだが、挑む相手が悪かった
この後、熱心にヒロにトラップのつくり方をお願いしたとかしないとか
「サナー!」
ムカつくクソガキに一発お見舞いできたので、とりあえず満足してると、後ろからあたしの名前を呼ぶ声が聞こえた
どうやらあっちの戦闘も終わったみたいだった
全員ボロボロだが、しっかり歩いてるあたり無事だったのだろう
「姐さーん、無事っすか? って、姐さん一人でランク5倒したんっすか」
「んー、そうしたかったんだけど……」
なんと説明していいかと悩んでいると
「凄い音聞こえてたからぁ、誰か強力な助っ人がいたみたいねぇ、それにサナちゃんその剣どうしたのぉ?」
みゅうみゅうが目ざとく質問してきた
「これはその……」
「そういえばその黒い木剣どうしたの、よく折れなかったわね」
「あらあらぁ、風香ちゃんよく見てみるといいわぁ、それ、ただの剣じゃないわよぉ。ほら、サナちゃんの顔に書いてあるわぁ」
ふふふ、と言いながらみゅうみゅうが指摘をする
彼女の言うとおり、サナはさっきから大切そうに黒い木剣を持ってニヤニヤしている
「ちょっとサナ、鑑定させてもらうわよ……ってなにこれ?」
サナの剣を鑑定した風香が絶句する
「どれどれぇ……あらあらぁ、またとんでもない剣ねぇ」
「凄い、レア度6なんて初めて見た」
「姐さんどうしたんっすかこんなヤバい剣」
それに釣られみゅうみゅう達も鑑定をして、それぞれ驚きの声を上げる
全員から質問攻めにあい、ぽりぽりと頬を掻きながら「拾っただけよ」とお茶を濁す
「団長、もしかしてヒロ兄?」
「うっ」
妙に鋭いシーチにあっさり看破される
「あらあらぁ、そう、ヒロ君なら納得ねぇ、でも影からなんて恥ずかしがり屋さんねぇ」
「でも、そしたらヒロの兄貴はどこに行ったんすか?」
「知らないわよっ! ほら、さっさと次の獲物探しに行くわよ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいサナ、怪我の手当が先でしょ、防具もそんなにボコボコにしちゃって、それにヒロってプレーヤー名がでたらどうしてそんなにあっさり納得してんのよ」
「風香元気」
今日も彼女達は騒がしかった
これにて第二章終了となります




