Ep10 白の同行者(後編)
オレの持てる知識と素材を使いまくったおかげで、白カバは順調に回復した
既にHPは9割以上回復している
カバの顔色とかは知らんが、多分元気になっているのだろう
気持ちよさそうな寝息が聞こえる
オレが必死になって戦って、回復させてやってたっていうのに、のんきに寝やがって
改めて、識別をかけてみるが
???
ランク?
白い謎の生命体
相変わらず、識別が仕事をしていない
もはや3行目の説明は馬鹿にしているようにしか思えない
なんとなくイラっとしたので、寝こけている白カバの額にデコピンをする
ぴしっ
「うー」
白カバは微妙に苦しそうな顔をするが、目は覚めなかった
白カバの上に浮かぶアイコンは相変わらず黄色
こんな森の奥深くで、一体何のイベントなんだ
つか、オレが助けなかったら、今頃ビックビギナートレントのご飯だっただろうに
っそういえば、ビッグビギナートレントの素材回収すんのすっかり忘れていたな
しかし、こいつをここに放ったらかしにしておくのも心配だからな
回収に夢中になってる間に、別の魔物の餌になってたら目覚めが悪い
とりあえず、昨日作った家を建てる
白カバは重すぎて、持ち上がらなかったので、オンザ地面だ
一応フォレストディアーの毛皮を上にかけといてやる
そんなに時間もかからないだろうから、屋根は一枚だけ載せておく
少し薄暗いほうが寝やすいだろ
というわけで、改めてビッグビギナートレントの前まで来る
見上げる程にでっかい木だ
20メートル位あるんじゃないだろうか
視線を下に落とすと、激戦の跡が垣間見える
オレ、よくこいつ倒せたなぁ
しみじみとしていてもしょうがないので、切断を使って木を切り倒し、さらに小分けにしていく
とりあえず、アイテムボックスに入れて、何に使うかは後で考えればいい
ランクが高いモンスターだからなのか、切断スキルでも切断しきるのに、時間も魔力もビギナートレントに比べ何倍もかかった
これなら、色々期待が持てそうだ
解体を終え、すべてを回収したあと、白カバの小屋へと戻ってくる
どうやら、まだ目は覚めていないらしい
なので、小屋の横に突き出す形で、作業スペースを作る
床と屋根は余りがあったので、ビギナートレントを簡単に切り出して、柱を作る
壁は別に後でも構わない
とにかく、すぐにでもビッグビギナートレントの性能を確かめてみたい
アイテムボックスから、1m程の丸太を取り出し加工していく
最初に作るのは一番世話になっている斧だ
削るのにだいぶ時間はかかるが、何度も作っているものだ
問題なく一本の斧が出来上がる
ビッグビギナートレントの斧(武器)
切れ味:0.8 破壊力:7.3 耐久力:130
品質:1 レア度:3
ビックビギナートレントで作ったギリギリ斧っぽいもの、薪にしては燃えにくい
品質1だと
そこそこ、レベルも上がって丁寧に作ったのに、こんな駄作を作っちまうなんて
生産廃人の職が泣く
つか、説明文がイラつく、っぽいってなんだよ
くそっ、もう一本だ
それから、何度か失敗を繰り返し、ようやく品質3の斧ができた
まだ納得はいかないが、これ以上やると本当に周りが見えなくなって朝になる
ビッグビギナートレントの斧(武器)
切れ味:0.9 破壊力:8.5 耐久力:145
品質:3 レア度:3
ビッグビギナートレントで作った普通の斧、薪にするには燃えにくい
一応、今まで使っていたビギナートレントの斧とも比べてみる
ビギナートレントの斧(武器)
切れ味:0.6 破壊力:7.1 耐久:125
品質:5 レア度:2
ビギナートレントで作ったなかなかの斧、薪としても使える
説明が地味に増えてるな
鑑定のレベルが上がってるせいなんだろうか
相変わらず、人の作品を薪扱いしやがって
くそっ、やっぱりダメだ、納得がいくものができるまで斧だ
斧を作るぞ
「うー、うー」
ゆさゆさ
なんだ、体が押されている
「うー、うー」
ゆっさゆっさ
一体何だって言うんだ、地震か?
「うーっ、うーっ」
ゴロゴロ
「うおっ、口の中に木屑がって、おお、お前目が覚めたのか」
目の前には、元気になった白カバが立っていた
怪我もすっかり治ったみたいで、すごい元気そうだ
「うーーーーー」
ペロペロ
オレが起きてよほど嬉しかったのか、顔じゅうを舐めてくる
「おい、やめろって、嬉しいのはわかったから、潰れる」
オレの言葉が通じたのか、白カバはおとなしくどいてくれた
微妙に名残惜しそうだったが
「にしても、元気になってよかったな」
「うーー」
白カバが嬉しそうに頭を振る
「しかし、なんであんなところで襲われてたんだ」
「うーーーー、うっ? 」
首をかしげてる
「たぶん気づかないうちに、ビッグビギナートレントテリトリーに入ったんだろ」
「うー」
あっ、なるほどって感じだろうか
ぐぅ
白カバのお腹がなる
「なんだ、お前腹減ってんのか? 」
「うーうー」
めっちゃうなずいている
「そうかそうか、ずいぶん長いこと寝てたから、腹も減るよな。って、お前もしかしてオレの言ってることわかるのか? 」
「うー」
そうだと言わんばかりに、頷く
「じゃあ、1+1は」
「うーうー」
即答だった、いや、もしかしたら偶然かもしれない
もう少し難しい問題を出す
「それじゃあ、8×9は」
「うーーーーー? うっ! うーうーうーうーうーうーうーうーうーうーうー……」
「あー悪い悪い、掛け算を出したオレが悪かった、72回も鳴かんでいい。本当に言葉がわかるんだな」
「うー」
こいつこのまま街に連れてって、芸でも仕込んだらいい金稼ぎになるんじゃないか
『天才白カバ君』みたいな感じにして
しかし、オレのアイコンが黒いままだったな
うーむ、もったいない
「うーうー」
ゆさゆさ
「おぉ、悪い悪い、飯だったな」
しかしカバって何食うんだ
いや、こいつは白い謎の生命体だったか
「焼肉と焼しいたけでいいか?」
「うー」
問題ないらしい、草とかではないんだな
肉としいたけ(ビックマッシュルーム)ならいくらでもあるから、直ぐに火を起こして焼いてやる
白カバは、よほど腹が減ってたのか、すごい勢いで食べていく
途中で串が足りなくなったので、追加で木を削って作った程だ
「うーっ、うーっ!」
白カバはとても嬉しそうに食べている
こんな味気ないものでも、喜んで食ってくれるのは嬉しいもんだ
「さて、飯も食ったし、お前これからどうするんだ? 」
「うーーーーー、う?」
どうやら、何も考えていないらしい
「つか、なんであんなとこにいたんだ」
「うー、うっうっうー」
何かをジェスチャーし始めた
「なになに、まとまって……動いて……自分だけ、落ちた…………つまり、仲間とはぐれたってことか」
「うー」
それだっというポーズを白カバはしているので、どうやら当たったらしい
「じゃあ、仲間のところに帰ればいいんじゃないか? 」
「うーうー」
首を横に振る
どうやら、その気はないらしい
「じゃあ、どうするんだ? 」
「うー、うっうーうー」
少し考えたあと、何故かオレを指した
「ん? お礼にオレのご飯になってくれるのか? 」
「うーーうーー」
「うぉ、悪い悪い冗談だって、だから押しつぶそうとするな」
ちょっとしたジョークじゃないか、なんて凶暴な奴なんだ
「オレと一緒にきたいのか? 」
「うーうー」
うんうんと頷く
「だけど、オレもアテがない旅だし、街とかいけないぞ」
PKだし
「うーうー」
構わないらしい
そうか、こいつ仲間になるキャラクターだったのか
助けたことで、イベントのフラグが立ったのだろう
「わかったよ、ついてきて構わないよ」
「うー!」
白カバは嬉しそうに鳴く
「しかし、そうなると、オレはお前をなんて呼べばいいんだ? 」
「うっ、うー? うーうー」
「オレが決めていいのか? 」
「うーうー」
「そうか、じゃあお前は『カバ太』だ」
「うーーーー」
そう言うと白カバが、オレにのしかかってきた
なんだ気に入らなかったのか?
ペロペロペロペロ
めっちゃ舐められた
つまり、嬉しかったってことか
「うぉぉ、まてカバ太、潰れるっ」
「うー」
残念そうに、カバ太後ろに下がる
だが、とりあえず思いつきでカバ太って言ったが、すごい安直な名だな
まぁ、本人が喜んでるし、いいだろ
カバ太が仲間になったことで、取り急ぎ武器と防具が必要になるだろう
なくても体当たりとかでなんとかなりそうだが、そこは生産職としてのプライドがある
仲間が丸腰なんて最低でもオレは許せない
なので、カバ太の武器と防具づくりに勤しむのであった
ちなみに、カバ太には先に寝て良いと言ったんだが、オレの横でずっと作業を眺めていた
なんとも珍妙な仲間が出来たものだ




