表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された最悪スキル『疫病マスター』の私、色男たちに監視されることになりました  作者: 竹屋 兼衛門


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/18

第十三話:どうやら私、選択肢を間違えたようです。

昼下がり。


孤児院の庭では、子供たちが元気に走り回っていた。


でも。


門の前に立つ鎧姿の兵士たちのせいで、どこか空気が重い。


【ガレス】

「どうやら、ますます大変な事になってきたな」


ガレスさんが腕を組みながら呟く。


兵士たちは、患者の列を整理している。


以前みたいに、誰でも自由に入れるわけじゃなくなってしまった。


【セドリック】

「当然でしょうね」


セドリックさんは書類を整理しながら言った。


【セドリック】

「もはや、この孤児院には国家規模の価値があります」


国家規模。


なんだか難しい言葉だ。


【エンフェリア】

「うーん……?」


私が首を傾げていると、セドリックさんが小さく笑った。


【セドリック】

「つまり、皆がエンフェリアさんを欲しがっている、ということですよ」


欲しがる。


なんだか物みたいだ。


少しだけ変な感じがした。


【ガレス】

「だから、もう決めちまったらどうだ?」


【エンフェリア】

「決める?」


【ガレス】

「俺たちと家族になるんだよ」


ガレスさんは、まっすぐ私を見る。


【ガレス】

「家族ってのはな。

 一人で抱え込まなくていい場所だ」


その声は優しかった。


【セドリック】

「……私も本気で申し上げます」


セドリックさんも静かに頷く。


【セドリック】

「エンフェリアさんが望むなら、我々は貴方を支えます」


家族。


なんだか温かい響きだった。


でも。


【ルシアン】

「待て」


ルシアン様が割って入る。


【ルシアン】

「エンフェリアは余と結婚するのだろう?」


【エンフェリア】

「ええ?」


なんでそうなるの。


【エンフェリア】

「ルシアン様、まだ全然わたしを惚れさせてませんよ?」


一瞬、静まり返る。


次の瞬間。


【ガレス】

「がははははっ!」


ガレスさんが大笑いした。


【セドリック】

「これは手厳しい」


セドリックさんまで肩を震わせている。


【ルシアン】

「なっ……!?」


ルシアン様は真っ赤になった。


【ルシアン】

「余は頑張っておるではないか!」


【セドリック】

「最近ようやく普通に子供の世話が出来るようになった程度ですが」


【ルシアン】

「うぐっ」


痛いところを突かれたらしい。


【ガレス】

「しかも最近じゃ、ロラの方が上手いしな」


【ルシアン】

「ぐむむむ……!」


ルシアン様は悔しそうに唸る。


赤髪の少女――ロラは、最近よく小さい子たちの面倒を見ていた。


特にジョンが懐いている。


【ルシアン】

「エンフェリア!」


【エンフェリア】

「はい?」


【ルシアン】

「余を援護しろ!」


【エンフェリア】

「えぇ……」


困る。


そんなこと言われても。


その時だった。


頭の中に、いくつもの選択肢が浮かんだ。


ガレスさんとセドリックさんと家族になる。


ルシアン様と結婚する。


孤児院で子供たちと暮らす。


病気の人たちを助ける。


勇者様たちの魂を慰霊する。


でも――


どれも大事で、どれも捨てられなくて。


だから私は、選べなかった。


【エンフェリア】

「……まだ、ルシアン様には惚れさせてもらってません」


私がそう言うと。


また笑いが起きた。


【ルシアン】

「まだ、ということは可能性はあるのだな!?」


【エンフェリア】

「そこは自分で頑張ってください」


【ガレス】

「はっはっは!」


【セドリック】

「殿下、前途多難ですね」


賑やかな笑い声。


子供たちの声。


温かい空気。


私は――


まだ選ばなかった。


この時の私は。


“選ばない”という選択が、

一番危険だなんて知らなかった。


――


夜の街。


復興途中の城下は、昼とは別の顔を見せていた。


壊れた建物。

積み上げられた木材。

遠くで響く工事の音。


そして、その隙間を縫うように広がる暗い路地。


月明かりも届きにくい裏路地で――


白髪の男が煙草をくゆらせていた。


紫煙が、静かに夜へ溶けていく。


【アドリアン】

「……急ぎ過ぎたようだな」


足音。


暗闇の奥から、赤髪の男が姿を現す。


フェランだった。


【フェラン】

「そうでしょうか?」


【アドリアン】

「門番まで付けられた」


アドリアンは煙を吐く。


【アドリアン】

「タウリナ王はこちらの想定より有能なようだ」


【フェラン】

「ええ。想像以上に」


フェランは壁に背を預けた。


その顔に焦りはない。


まるで、すでに次の手を考えているみたいに。


【フェラン】

「ですが、まだやりようはあります」


【アドリアン】

「……そうだな」


アドリアンは小さく笑った。


【アドリアン】

「だが、約束だ」


短い沈黙。


遠くで犬が吠える。


【アドリアン】

「こちらの策を進める」


フェランが静かに目を細める。


【フェラン】

「……ロラを使うのですね」


【アドリアン】

「ああ」


煙草の火が赤く灯る。


【アドリアン】

「あの子なら自然に懐ける」


【フェラン】

「エンフェリア様は、子供に弱いですからね」


【アドリアン】

「特に、“守るべき相手”にはな」


フェランは黙る。


アドリアンは続けた。


【アドリアン】

「あの子は、ドレイケルドの生き残り」


【アドリアン】

「エンフェリアが魔王国と信じて疑わないドレイケルド国の人間だ」


【アドリアン】

「それをエンフェリアはまだ知らない」


静かな夜風が吹く。


【フェラン】

「……知れば、揺らぎますか?」


【アドリアン】

「揺らがねば世界が終わる」


即答だった。


【アドリアン】

「アイツは今でも、世界を単純に見すぎている」


【アドリアン】

「敵か、味方か。

 人間か、魔物か」


【アドリアン】

「だからこそ危険だ」


フェランはゆっくり目を伏せる。


【フェラン】

「ですが――」


【フェラン】

「あの子を傷つけるような真似は避けたい」


アドリアンは煙草を指で弄ぶ。


【アドリアン】

「必要なら?」


一瞬だけ。


空気が止まった。


フェランはすぐには答えない。


やがて。


【フェラン】

「……あの子は、

 出来れば泣かせたくありません」


アドリアンは笑った。


【アドリアン】

「慎重だな」


【フェラン】

「そうかもしれません」


否定はしなかった。


その時。


路地裏の屋根の上で、

小さな瓦がかすかに鳴った。


二人の視線が一瞬だけ動く。


だが。


そこには誰も居ない。


【アドリアン】

「……野良猫か」


【フェラン】

「復興中ですからね。

 増えているのでしょう」


二人は再び歩き出す。


だが――


屋根のさらに上。


夜の闇に溶け込むように、

黒い影が静かに息を潜めていた。


月光が、わずかに赤い瞳を照らす。


その影は、何も言わない。


ただ静かに、

二人の背を見下ろしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ