表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された最悪スキル『疫病マスター』の私、色男たちに監視されることになりました  作者: 竹屋 兼衛門


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/12

第十一話:どうやら私、呼ばれるようです。

朝。


孤児院の前に、小さな列が出来ていた。


最初に気づいたのはルシアンだった。


【ルシアン】

「……なんだあれは」


門の外。


老人。

子供。

痩せた女の人。


みんな、不安そうな顔をして立っている。


【エンフェリア】

「?」


私が首をかしげていると、院長先生が慌てた様子で駆け寄ってきた。


【院長】

「エ、エンフェリアさん……」


【院長】

「どうやら街で噂になっているようなのです」


【エンフェリア】

「噂?」


【院長】

「病気を治せる少女がいる、と……」


ああ。


この前の子のことかな。


【ガレス】

「広まるのが早いな」


【セドリック】

「まだ戦火で荒れ果てていますからね。

 皆、病には敏感です」


門の向こうから、咳が聞こえる。


【老人】

「頼む……少し診てくれんか……」


【母親】

「この子、熱が下がらなくて……」


私はみんなを見る。


つらそう。


苦しそう。


――助けられる。


そう思った瞬間。


胸の奥が、少しだけ熱くなった。


【エンフェリア】

「大丈夫だよ」


自然と声が出る。


【エンフェリア】

「順番に診るからね」


――


孤児院は、その日から少しずつ変わり始めた。


【ガレス】

「椅子が足りんな」


ガレスさんは庭で木材を組み始める。


【ガレス】

「待たせるなら座る場所くらい必要だ」


【セドリック】

「ではこちらで受付を」


セドリックさんは紙を並べて名前を書き始めた。


【セドリック】

「症状ごとに分けましょう。

 熱、咳、怪我……」


【ルシアン】

「うむ。

 では余が列を整理する!」


ルシアン様は胸を張って門へ向かった。


【ルシアン】

「押すな!

 ちゃんと並べ!」


【子供】

「うぇぇぇん!」


【ルシアン】

「な、なぜ泣く!?」


【ガレス】

「声が大きすぎるんです」


なんだか賑やかだった。


でも。


嫌な感じはしない。


――


【エンフェリア】

「次の人どうぞ」


気づけば、私はそう言っていた。


少し咳をしている男の子。


熱を出しているお婆さん。


化膿した傷。


みんな苦しそうで。


でも、私には出来ることがある。


【エンフェリア】

「≪弱体化インフルエンザ≫」


病気を抑える。


熱を逃がす。


菌を弱らせる。


少し調整するだけ。


それだけで。


【患者】

「おお……呼吸が……」


【母親】

「ありがとうございます……!」


みんな、そう言ってくれた。


ありがとう。


ありがとう。


ありがとう。


胸の奥が、ぽかぽかする。


【エンフェリア】

「えへへ」


なんだろう。


すごく気持ちいい。


――


夕方になる頃には、孤児院は半分診療所みたいになっていた。


庭には待合椅子。


廊下には人。


食堂ではガレスさんが簡単な仕切りまで作っている。


【ガレス】

「診察室ってやつだな」


【ルシアン】

「おお。

 余の孤児院が大きくなってきたな!」


【セドリック】

「殿下のではありません」


【セドリック】

「それに、これでは孤児院ではなく診療所です」


セドリックは珍しく、少しだけ眉を寄せていた。


たしかに子供達の世話と並行して治療するのは大変だ。


私は少しふらふらしていた。


でも、不思議と嫌じゃない。


だって。


みんなが喜んでくれるから。


【フェラン】

「……」


フェランだけが、静かにこちらを見ていた。


まるで私を観察するように……。


――


その時だった。


外で、騒ぎ声がした。


【兵士】

「道を開けろ!」


鎧を着た男たちが入ってくる。


その後ろには、豪華な服を着た中年の男。


見るからに貴族だった。


【貴族】

「おい。

 病気を治せる娘はどこだ」


みんなの空気が変わる。


【セドリック】

「……失礼ですが、順番があります」


【貴族】

「黙れ」


男は鼻を鳴らす。


【貴族】

「私は男爵だぞ」


【貴族】

「平民どもと同じ場所で待てというのか?」


なんだろう。


この人。


怖いわけじゃない。


でも。


あんまり、助けたいと思えない。


【貴族】

「おい娘。

 早く治せ」


命令みたいな声。


ありがとう、もない。


困っている感じもしない。


ただ。


当然のように言っている。


胸の奥の熱が、すうっと引いていく。


【貴族】

「早くしろ、時間を無駄にさせるな」


【エンフェリア】

「……」


初めてだった。


助けたくない、と思ったのは。


――


夜。


診察が終わった頃には、もう足がふらふらだった。


私は庭のベンチに座り込む。


【ルシアン】

「今日は頑張ったな」


【エンフェリア】

「うん……」


疲れた。


でも。


嫌じゃない。


【エンフェリア】

「ありがとうって言ってくれる人は……助けたいな」


ぽつりと呟く。


その時。


少し離れた場所で、フェランが静かに目を細めた。


【フェラン】

「なるほど」


小さな声。


誰にも聞こえないくらい小さな声。


【フェラン】

「エンフェリア様は、“感謝”によって、自分の役割を確かめておられるのですね」


夜風が静かに吹く。


フェランの瞳は、静かに細められていた。


まるで、何かの答えを見つけたみたいに


エンフェリアを見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ