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追放された最悪スキル『疫病マスター』の私、色男たちに監視されることになりました  作者: 竹屋 兼衛門


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第十話:どうやら戦争は終わっていないようです。

朝。


孤児院の庭では、子供たちの笑い声が響いていた。


ガレスさんの作ったブランコは今日も人気だ。


【ジョン】

「きゃっきゃっ」


【ルシアン】

「はっはっは。

 余の押し方が上手いからだな」


【ガレス】

「殿下。

 押しすぎです」


【ルシアン】

「む?」


ブランコが大きく揺れる。


【子供達】

「わーっ!?」


【エンフェリア】

「もう、危ないですよ」


私は慌ててブランコを押さえる。


ルシアンは少しだけ気まずそうに咳払いした。


その時だった。


――気配。


塀の向こう。


木の上。


息を潜める気配が一つ。


私は反射的に視線を上げる。


【エンフェリア】

「……あ」


黒い影が、音もなく庭へ降り立つと

空気が一瞬だけ、冷たくなった気がした。


子供たちが小さく悲鳴を上げる。


でも私は知っていた。


【エンフェリア】

「忍者君!」


黒装束。


覆面。


細い目。


勇者パーティの忍者――トラカゲだった。


【トラカゲ】

「久しぶりだな」


【ルシアン】

「なっ!?

 侵入者か!?」


【ガレス】

「いや、待て。

 エンフェリアの知り合いらしい」


トラカゲは周囲を見回す。


その視線が、フェランのところで止まった。


ほんの一瞬。


空気が張り詰める。


【フェラン】

「初めまして。

 フェラン・オリオルと申します」


フェランは穏やかに一礼する。


でもトラカゲは頭を下げない。


【トラカゲ】

「……忍者のトラカゲだ」


なんだろう。


二人とも笑ってるのに。


ちょっと怖い。


――


食堂。


子供たちを外へ出し、食堂に静寂が戻った頃。


トラカゲは静かに口を開いた。


【トラカゲ】

「単刀直入に言う」


その声は、いつもより低かった。


【トラカゲ】

「魔法使いの死体が見つかった」


空気が凍る。


【エンフェリア】

「……え?」


胸の奥が、ひゅっと冷たくなる。


【ルシアン】

「勇者パーティの者か?」


【トラカゲ】

「ああ」


トラカゲは短く答える。


【トラカゲ】

「国境付近の谷底で発見された」


【トラカゲ】

「損傷が激しくてな。

 身元確認に時間がかかった」


私は何も言えなかった。


頭の中が真っ白になる。


【エンフェリア】

「……そっか」


それしか出てこない。


胸の奥が、ぎゅっと縮む。


息が少しだけ苦しい。


【トラカゲ】

「他の連中はまだ分からん」


【トラカゲ】

「生きてる可能性もある」


励ましてくれている。


多分。


でも。


胸の奥が、重い。


【フェラン】

「……失礼ですが」


フェランが静かに口を開いた。


【フェラン】

「勇者パーティとは、それほど特別な存在だったのですか?」


トラカゲの目が細くなる。


【トラカゲ】

「特別だったさ」


【トラカゲ】

「少なくとも、俺たちは世界を救うつもりだった」


【フェラン】

「なるほど」


穏やかな返答。


でも。


トラカゲは、じっとフェランを見ていた。


まるで値踏みするみたいに。


二人の間だけ、別の温度の空気が流れているようだった。


【トラカゲ】

「アンタ……」


一拍。


【トラカゲ】

「商人には見えねぇな」


空気が止まる。


【ガレス】

「トラカゲ殿?」


【フェラン】

「これは手厳しい」


フェランは小さく笑った。


【フェラン】

「都市国家では、多少政治にも関わりますので」


【トラカゲ】

「……そうかよ」


トラカゲは、それ以上言わなかった。


でも。


警戒している。


私にも、それだけは分かった。


――


その日の夜。


ドレイケルド王国。


国境近くの城塞都市。


赤い月が、石造りの城壁を照らしていた。


【ドレイケルド王】

「そうか

 順調か」


玉座の前。


アドリアンが静かに跪いている。


【アドリアン】

「はい」


【アドリアン】

「エンフェリア様は、既に孤児院へ強い執着を持ち始めています」


【大臣】

「執着、だと?」


【アドリアン】

「役に立つことを喜んでおられる」


【アドリアン】

「特に、感謝されることに強く反応します」


フェランから届いた報告書を思い出す。


“感謝は、あの少女にとって最も強い報酬である”


【ドレイケルド王】

「……なるほど」


王は静かに目を閉じた。


【ドレイケルド王】

「では、孤児院は成功だったか」


その声には、情の欠片もなかった。


【アドリアン】

「はい」


答えながら。


アドリアンの脳裏に、一つの光景が浮かぶ。


赤髪の少女に笑いかけるエンフェリア。


嬉しそうに笑う顔。


まるで普通の子供みたいな笑顔。


【アドリアン】

「……」


胸の奥が、わずかに軋む。


それでも、アドリアンは頭を下げた。


【ドレイケルド王】

「どうした?」


【アドリアン】

「いえ」


アドリアンは静かに頭を下げる。


【アドリアン】

「全て、計画通りにございます」


その声だけは、完璧だった。


――


孤児院の灯りは温かかった。


だからこそ。


世界は、それを利用しようとしていた。


――その温かさを、彼女自身が守れるかどうかは、まだ誰にも分からない。



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