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引きこもり夫人に転生したので、冷徹侯爵と離縁します(旧題:旦那様、ヒロイン交代につき2回戦を始めましょう!)  作者: 当麻月菜
コミカライズ配信 SS

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こういうやり方も、アリと言ってくれたら嬉しいです

 初夏の日差しが眩しい緑陰の館の庭先で、優雅にティータイムを楽しんでいた藍音はカップを持ち上げた途端、ふと思った。


 これまでの自分の異世界生活が、もしかして現世でネット小説になっているのかも……と。


(いやいや、まさか)


 自分の考えがあまりにくだらなくて、藍音はフッと笑いながらお茶を啜る。


 しかし可能性はゼロではない。なにせ藍音はトラックに轢かれて、ネット小説のモブキャラと大人げなく喧嘩して、この世界に転生した過去を持つ。


(え……ないよね?ほんと……ないよね??)


 一度よぎった不安はどんどん膨らんでいき、それと同時に、転生してからの怒涛の日々を思い出してしまう。


 ライオットと初対面で離婚宣言をぶちかましたこと。侍女のジリーを相棒にして執事見習いのヒューイの横領を暴いたこと。アイネの父親とやり合ったこと。イレリアーナと火花を散らした挙句、いっぺん死にかけて復活したこと。


(いや別に、これらはいいんだけどさ)


 夜会でライオットとなんかいい感じになったこととか、チューしたことは、宝物のような時間だから誰にも触れられたくない。


 だが、それよりも一番知られたくないのは──


「蹴り……だ」


 ヒューイの不正を暴くため街に出た際に、クルークリン国の王子であるカイロスの股間に力いっぱい膝蹴りを入れた。


 侍女と我が身を守るために仕方なくやったとはいえ、あれは藍音自信が消してしまいたい過去ナンバーワンである。


 それを、見ず知らずの誰かに知られるなんて……


「無理、嫌、どうしよう……!」


 ”この女やべぇw” ”痴女じゃん、引くわ” ”過度な暴力で逆に通報されるんじゃね?” なんていう書き込みを想像して、カタカタとカップを持つ藍音の手が震える。


 そんな風に突如顔色をなくした藍音の向かいの席には──ライオットがいた。


「藍音、どうした?気分が悪いのか?」


 心配そうに声をかけてくれるライオットは、「蹴りをつけなきゃいけない相手は誰だ?」と真顔で尋ねてくる。


 完全に勘違いをしているライオットの表情は、次第に冷徹モードになっていく。このままでは、クルークリン国の誰かが冤罪でしょっぴかれてしまう。


「あ、あのっ、違うんです……!実は──」


 かくかくしかじか。藍音はカイロスに急所蹴りをかましたことだけを伏せて、事情を説明した。


 話を聞きを聞き終えたライオットは、ふむと一つ頷いて難しい顔つきになった。


「確かに、不安だな」


 藍音が転生者だと知っているライオットは、自分の不安を汲み取ってくれた。


 そう思って、ちょっとキュンとなった藍音だったが、実はそうじゃなかった。


「君の魅力を沢山の人間に知られるのは妬けるな」


 うっとりするほど魅惑的な笑みを浮かべてライオットは、手を伸ばして藍音の髪をひと房、指に絡ませる。


「っ!な、なにを言っているの!?」


 睦言のように囁かれ、勝手に甘い空気をまき散らすライオットに藍音はギョッとする。


 しかしライオットは、どこまでも本気だ。


「凛として気高く、それでいて無邪気な一面もあり、変なところで謙虚で愛らしい。こんな君を世の中の男が放っておくわけないだろう?実際、私は君に溺れている」


 恍惚とした表情を見せるライオットに、藍音は「あはは……」と、とりあえず笑う。


 完全無欠のヒーローにそこまで褒められると、かえって居心地が悪い。


「貴方は、女の趣味が悪いのね」

「照れてるのか?」

「まさか」

「なら、なんで顔が赤くなってるんだ?」

「っ……!そ、それは……!」


 慌てて両頬に手を当てた藍音を見て、ライオットは喉奥をクツクツと鳴らして笑う。この男、意地が悪い。


 つい恨みがましい目で睨んでしまった藍音に、ライオットは小春日のような優しい笑みを浮かべた。


「君の不安を取り除いてあげたいが、生憎その術が私にはない。ただ、その不安を忘れさせる方法はわかっている」


 そう言って、ライオットは立ち上がると藍音の背後に回り、ぎゅっと抱きしめた。


「木陰と、室内、どっちが好みか?教えてくれ」


 耳に注ぎ込まれた声は熱を帯びていて、藍音の身体が熱くなる。


 今のライオットと藍音は、恋人同士だ。木陰と室内ですることなんて、一つしかない。


「決めてくれないのか?なら、私が決めよう」


 勝手に結論を下したライオットは、椅子に座っている藍音を横抱きにすると大股で歩き出す。


「ちょ、ちょっと……!」

「大丈夫だ。きっとこの後のことは、誰にも知られない。そんな気がする」


 何の根拠があって?と尋ねたいが、ライオットの足取りは妙な確信を持っている。


 その足音に気圧され、藍音はライオットの首に手を回してギュッと目を閉じた。


 初夏の風が吹き、まるで幕を引くように藍音の桜色の髪がなびく。


 その後、藍音はライオットのおかげで不安な気持ちを忘れることができた。


 しかし藍音の不安は現実となっていて、元の世界で既に電子書籍化され、4月20日に電子コミカライズ版も配信されるらしい。


 しかも5話一気に配信ときたものだ。これは大変興味をそそられる。


<おわり>

と、いうわけで本当にコミカライズ版が4月20日(月)にブックライブ様にて先行配信します!

5話一気に配信して、翌月より毎月20日に1話ずつ更新となります。


よろしくお願いしますm(_ _"m)

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