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ごーれむ君の旅路外伝 ごーれむ君前史  作者: れっさー
第5章 広がる戦火
24/24

第24話(5章6話) 盾と矛

作者からのお知らせ(ピンポーン)

 このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。本編の前史に当たるお話を集めております。

 内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、本編と並行してご笑読ください。


**********


「今のうちに普人族を滅ぼさないと、他の人型知的生命体(ヒューマノイド)は残らず普人族に滅ぼされてしまうやろ。」

「滅ボストハ、マタ物騒ナ。」

 穏当ではないコボルト王の話に、流石に『ソコまでしなくていいんじゃない?』と聞き返すゴブリン王。だが、コボルト王はその主張を変えなかった。

「根絶やしにすることは不可能や。そやけど、城塞都市1コか2コ程度の国に抑えとかんと、手が付けられんようになるで。」

「ウウム…。」

 今度はゴブリン王が唸る番であった。確かに、ゴブリン=コボルト連合軍は南方ミール4国と呼ばれた4つの国に打ち勝って『は』いる。それら4か国は、首都を含め6から9コの都市がある大きさの国々だった。ちなみに、勝ったというより普人族国家が自滅したという分析が正しい。そのことを、常に最前線で戦っていたゴブリン王は痛い程理解していた。

 それでも、戦いは決して楽なものではなかった。最終的には勝ったものの、敗北した戦場も多かった。勝った戦場でも犠牲者がゼロであった事はない。

「…総力戦(本気)デ来ラレタラ、我ラノ勝機ハ殆ド無イダロウ。」

 いくらコボルト産の武器防具を使うとはいえ、もともと弱小種族(ザコノイド)のゴブリン族を主力とするゴブリン=コボルト連合軍は、普人族の軍隊に対してその戦闘力は常に劣勢であった。(種族的な体格差が子供と大人ほど違うのであるから無理はないのだが。)

「そやから、“新兵器”を使うんや。」

 コボルト王はそう言って立ち上がる。

「見て欲しいモンがあるんや。」


**********


 コボルト王宮の外れ。広々とした空き地にゴブリン王は案内された。季節は2月、吹きすさぶ北風に、思わずコートの襟に首を竦ませるゴブリン王。

「ここは、コボルト国(うち)の試験場や。アレを見てぇな。」

 そう言って指差す先には、離れて立つ2棟の建物があった。

「アノ建物ハ、ナニナノダ?」

 どちらも小学校の小さな体育館位の大きさであろうか。片方の棟は周りを柵が円状に囲んでいる。100メートル程離れて建つ2棟の建物の間は、何やら水道橋のような構造物が渡されていた。

「お待ちしておりました。王様、“作動準備ヨシ”です。」

 建物の方から一人のわんこ(コボルト)が走ってきて、コボルト王にそう告げる。着ている作業着から察するに、技術班の下っ端技術者の様だ。

「手配ご苦労はん。そんなら、早速始めよか。」

 コボルト王の言葉に応じ、走って来たコボルトは持ってきた小旗を建物に向かって大きく振る。

 見れば、柵で囲まれた方の建物の入り口にもわんこ(コボルト)が居て、彼?もまた小旗を振り返すと、建物の中に消えた。

「ナニガ、アルノダ?」

 ここまで説明なしに連れてこられたゴブリン王(とそのお供達)には何が起きているのかサッパリである。

「いいから、見とってぇな。・・・ホラ! あれや!」

「オオ・・・!」(感嘆)

 ヴヴヴヴ・・・と低く鈍い音を立てて、柵が薄紫色の燐光を放ち始めた。

 その、薄紫色の燐光は段々と強く、光る面積も広くなっていった。

 やがて、柵全体を紫色の光が包み込むと、柵の外側に薄紫色のガラス板のようなモノが現れたのだった。

「こぼると王。アレハ、何ナノダ? 透明ナ板ニ見エルノダガ?」

 『うんうん、成功やな。』と頷くコボルト王に、ゴブリン王は尋ねた。

「アレは、板とちゃう。防御力場(バリヤー)や。魔力で作った、実体を持たない力場(フィールド)なんや!」

「ばりやぁ? ふいぃるど?」

 ポンポンでてくるマニア言葉(専門用語)に、ゴブリン達は目を白黒させるだけである。

「まぁ、次を見れば判るって。」

 どこかウキウキした様子で、コボルト王は次の指令を出す。

 柵がない方の建物から、10人ほどのわんこ(コボルト)が出てきた。着ている作業着から、ゴブリン王の遠征に同行した技術班のコボルト達と思われた。皆、細長い棒を肩に担いでいた。

「アレハ、らいふる(火魔法発射杖)カ?!」

「そうや、新型ライフル(火魔法発射杖)の試作品や。」

 えっへん、という音が聞こえそうなくらい自慢げに、コボルト王が解説する。

 見ているうちに、ライフルを担いだ10名は、時折薄紫色に煌めく“力場”から50メートルほど離れた場所で、“力場”に向かって整列する。

「構えぇ・・・、放て!」

 バン! ババン! バン! ・・・。

 号令一下、10本の杖から1円玉サイズの火の玉が一斉に(とまでは揃っていなかったが)放たれた。

 カン! コン! キィーン!

 放たれた火の玉は一直線に“力場”に向かって飛び、甲高い音を立てて“力場”に跳ね返された。

「「「オオ!!」」」

 “らいふる”の威力は実戦で使ったゴブリン達のほうがよく判っている。放たれた火の玉を悉くはじき返した“力場”の強さに、ゴブリン達は感嘆する。

「どや!」

 自慢タップリのコボルト王が胸を張る。

「まだ試作品なんや。あんまり広い面積はカバーできんけど、村々の集会場にコレがあれば・・・。」

「魔物ニ襲ワレテモ、立テ籠レル、カ。」

 感心するゴブリン王の視界で、“力場”の輝きは不安定になり、不規則に瞬き始めたかと思ったら、『パリン!』と陶器が割れるような音を立てて粉々に砕け散った。

「見ての通り、今はまだ無理や。もっと出力(ぱわー)(つよ)ぉせんと。でも、近い将来、必ず完成させるで!」

 その通りです、と技術長も頷く。2棟の建物からは、沢山のコボルトが湧き出してきて、柵やら建物やらに群がり、何かを調べ始めていた。

「ライフルとバリヤー。これで攻守隙なし、や。」

 コボルト王は続ける。

「勝ってもらわんとアカンし、勝ったら占領地を守ることも考えんとアカンのや。」

 戦いの更に先を見通すとはさすがコボルト王と、ゴブリン王は先輩(ヽヽ)を尊敬の目で見る。

(攻めるだけでなく、守りも大切。建国ゲームでもそうやったしな…。)」

 コボルト王のその呟きは、小さすぎて聞こえなかったみたいだが。


(つづく)

 (C)れっさー 2020 All Rights Reserved.

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