表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/60

7 決着

戦闘シーンあります。

残酷描写が苦手な方はご注意ください。

 ブルック伯爵邸の客間。

リアンは兵たちの攻撃を避けつつ、腰に下げていた剣を抜いた。

手に馴染んだ感覚が気持ちを落ち着かせてくれる。

エレメンタルを発動させ、刀身に赤い炎を纏わせた。

剣の表面に炎をコーティングすることで、切れ味を維持できるのだ。

攻撃力の高い炎のエレメンタルと剣は相性が良い。


 その光景に兵たちは怯んだが、すぐに立て直してしまった。

かなり訓練されているようだ。


「はあああああ!」

1人の兵が正面から切り込んできた。

様子見のつもりなのか、それほど腕の立つ者ではない。

リアンは半身だけ体をずらし、その攻撃を避けた。

横から剣で薙ぎ払えば、兵は吹っ飛ばされる。

身に着けていた防具は炎によって焼き切れていた。


 その隙をついて別の兵が切り込んできたが、それも少し腰を落として避ける。

振り返り様に切り捨て、周囲の兵たちとの間合いを確認する。


 途端、嫌な予感にブルック伯爵へ目をやると、指先をこちらに向けていた。

あれは危ない。

直感的に判断し、刀身に纏わせていた炎の火力を一気に上げた。

赤かった炎は白っぽくなり、すぐに青へ変わる。


 伯爵の指先から、ウォーターカッターのような鋭い水塊が放たれたのは、その直後だった。

水塊はリアンの剣にぶつかり、爆発を巻き起こす。

水と炎がぶつかりあったことによって発生した水蒸気が、辺りを包み込んだ。

火力を上げていなかったら、そのまま剣を折られていただろう。


 視界を戻すため、炎で部屋の水蒸気を蒸発させた。

爆発で戦闘不能になった兵も多くいたようだが、まだ半数以上が残っているようだ。

戦意を失うことなく、こちらに剣を向けている。


 その後は拮抗状態となった。

リアンが兵に切りかかろうとすると、絶妙なタイミングで先程のウォーターカッターが飛んでくる。

避けたとしても、その隙をついて兵たちが切りかかってくるためキリがない。

何度か刃先がやウォーターカッターが掠り、全身が切り傷だらけになってしまった。

しかしまだ致命傷は許していない。

額から流れ出る血を拭い、伯爵を睨み付けた。



 このままでは向こうの数が多い分、ジリ貧だ。

ブルック伯爵が放つウォーターカッターをどうにかしないと、反撃に出る事ができない。

しかしこれだけの兵に囲まれていると、安易に近づくことも難しい。


 あまり気は進まないが、あれを使うしかないだろうか。

リアンは、アイザックから持たされた()()のことを思い出していた。

いざという時に使おうと思っていたが、今が使い処だと判断する。

懐を探れば、アイザックに持たされた小瓶が手に当たった。

迷わずそれを掴み取り、空中へ放り投げる。


 そして――

透明な液体の入った小瓶を、炎を纏わせた刀で叩き切った。

液体が気化して部屋に充満すると、兵たちは次々と意識を失っていく。


 液体の正体は、水で溶かした『神の薬』だ。

倒れた兵たちには今頃、理想の光景が見えているのだろう。

皆、恍惚とした表情を浮かべている。

しかし非常に薄めているため効果時間は短く、全ての兵に効いているわけではなさそうだ。


 だが、その一瞬を見逃すリアンではない。

周りの兵が少なくなった瞬間をつき、一気にブルック伯爵への距離を詰めた。

ブルック伯爵も応戦してくるが、1対1の状況で負ける気はしない。

そして、勢いのまま右腕を切り落とした。



「うわあああああ」

ブルック伯爵は悲鳴をあげ、その場に崩れ落ちる。

きれいに切り落とした上、断面は焼けて出血が抑えられているため死ぬようなことはないだろう。

しかし、完全に戦意は喪失したようだ。


 その光景に戦意を喪失したのは、兵たちも同じであった。

兵たちは剣を下ろし、呆然としている。

リアンとしても戦意のない兵たちを切ろうという気はないため、追い討ちはかけない。

アイザックの指示はあくまで屋敷の制圧。

皆殺しにしろとは言われていないからだ。


 そんな中、1人だけ戦意を失っていない者がいた。

いつか出会った偽シスターだ。

未だこちらに剣を向け、敵意を向けてくる。

しかしその両手は震え、立っているのがやっとの状態だった。

リアンに切りかかってこられるようには見えない。


 それを見て、リアンは興味を覚えた。

何となく自分に似ているように感じたのだ。

同時に、ここで殺してしまうのはもったいないと思った。


 リアンは震える彼女の腕をひねり上げて剣を手離させると、背後から手刀により意識を落とした。

倒れ込んできた身体を支え、部屋の片隅に横たえる。

あとは、アイザックの兵が王宮へ連行していくだろう。




 その後、待機していたアイザックの兵たちが屋敷に入り込み、伯爵たちの捕縛や屋敷の捜索を行った。

予想通り、屋敷からは大量の薬が見つかった。

しかし、薬の取引で手に入れたであろうお金には一切手が付けられていなかったそうだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ