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小噺  作者: 間宮 要
2/8

4〜5

相変わらず

4 学校ノ自由


美術。僕の好きな時間の一つ。だって、この時間には「自由」が認められているから。

「はいっ、じゃあ今日は、粘土で自由に工作しましょう」

ほら、自由。だから、粘土であれば、何を作ったって良いんだ。

少し考えた後に、粘土を机の上に立てた。そして、粘土を切る用のプラスチックのナイフをそいつに突き立てる。

「んー?何作ってるんですか?」

先生が来た。なんだ、また文句をつけるのか?

「んー、君ね。いっつも勝手になんかしてるけど、私は粘土を使って、物を作れって言ったの。誰が、粘土をただ削りなさいって言いました?他の人みたいに、ちゃんと粘土をこねたり、丸めたりして、何か作って下さい」

案の定、一通りの文句をつけた後に、俺が粘土を削る手を止めにきた。

「やめろ。触んな」

先生の手を払うと、「あら、そうですか」と言って、呆れたようにその場を離れた。どうせ、また成績を下げてやろうとか思っているのだろう。歩くそいつの背中に、唾でも吐いてやろうかと思った。

全く、本当にうるさい奴だ。粘土を彫って悪いなんて言ってないはずなのに。


5 フクザツな気持ち


「おい。何か言うことはねーのか?」

椅子に縛り付けた僕の敵に、金属製のバットを向ける。もう既に何回か殴ったから、少しヘコみがついたバット。彼にとっては恐怖の対象でしかないもの。

「も、申し訳ありません!」

申し訳ないって、本当に思っている奴は、縛りつけているロープを解こうと、手をもぞもぞと動かさない筈だ。

「見て分かる程度の嘘ついてんじゃねーよ!!!」

バットを彼の頭に振り下ろす。そして、耳を劈く断末魔の叫び。バットを振り下ろす手は止めない。何回も何回も、こいつの息の根を止める直前まで、手は止めないつもりだ。段々と、薄い金のバットに、こいつの汚く赤い汁が付着していく。彼の顔には制裁の跡が醜く残る。

「ゆ、許して下さい……!」

彼の叫びに、一度手を止めてやる。腫れて開かなくなった眼でこっちを見てくる奴の顔は、とっても間抜けで、もっとやってやろうって気になった。

「そう言ったら、君は許してくれたっけ?」

許さなかった筈だ。というか、許しを乞う程のなにかをした覚えもないのだが。

「申し訳ないです!!今まで、全部俺が悪かったです!だから、どうか許して下さい!!」

「は?」

馬鹿か。テメェは「悪かった」で済まされないくらいのことをやってきただろう。

「俺が悪かった?そう思うんだったら、何が悪かったか、テメェの口で言ってみろよ」

バットを手から離し、ポケットからスタンガンを取り出す。そして、奴の首元にそっと添え置く。間抜け面から一気に血の気が引いていく。

「ヒッ……!!」

「早く言えよ」

彼の怯えた目がとても滑稽だ。ただ、その瞳の奥に、まだ反抗の意志があることが気にくわない。

「あ、あなたに集団で暴力を振るい、所持品や金を盗み隠しました!!」

「まだ、あんだろーが」

こんなんじゃ足りない筈だ。すると、何か彼の気に触れたのか、一瞬だけ、反抗の火が強くなった。そして、諦めたかのように、彼の目から力が抜けた。

「む、虫の死骸を食べさせたり、遊びに見せかけて首締めたりしたし、寝てる時に裸を撮ったりしました……」

「うん。そうだね」

「本当に、申し訳ないです……」

奴はいきなり声のトーンを低くした。遂に降伏を認めたのか、それとも媚びに走ったか。どちらかは分からないけれど、彼の全身から力が抜けた。

「それで?君はどうしたい?」

「解放、して欲しいです……」

力が抜けきった。気がしただけだった。彼は急に眼の色を変えると、やっとロープを解いた手を僕の首元めがけて飛びつかせた。やっぱり、さっきのは気のせいじゃなかった。

「やっぱり」

最大出力の電流を、手元のスタンガンから奴の首元へたっぷり流す。また響く、断末魔の叫び。奴の手は僕の首に届かず、無気力のまま下へ垂れ下がった。

「こ、殺さないでくれ……」

虫の鳴き声よりも弱々しい声。もはや彼は反抗などできない。多分、口を動かすのがやっとな筈だ。遂に自分の死期を悟ったものの、最期の願いというやつかもしれない。

「僕は、したくないことを強制的にやらされたんだけどね」

もう一発。別れの電流を浴びせる。もはや、彼は何も言わなかった。

「最低な人だったね」


さて、あと五人か。さっさと始末しよう。



僕は人を沢山殺しました。後悔はしていません。だって、僕は死にかけたんですから。あのまま奴らを生かしていたら、僕は勝手に死んでいたでしょう。もし、そうなっていたら、彼らは笑って今も過ごしていたでしょう。いじめなんてものは隠蔽されて、本当に僕が勝手に死んだかのように工作されたでしょう。そして、また新たな被害者が産まれていたでしょう。そのくらい、奴らの暴挙には止められないものがあります。

僕はきっと、自首しても少年法で守られるでしょう。まだ中学生ですから。でも、それはかなり癪なので、僕は自殺することにします。正直に自首することは良い事だと思いますが、こんな殺人犯を守る法があることに疑問を抱くからです。自殺が怖くないのか、という点については、元々、死にたいと思っていたところを思い直して、奴らを殺したので、未練はないです。

僕は、確かに奴らに苦しめられましたが、奴らを苦しめた上に殺したのも僕です。結局、僕も奴らも同じ。だったら、僕は彼らと同じ終わりを迎えたいと思いました。だから、彼らを殺した僕が、僕を殺すのです。

「最低な人だったね」




4は自分を持ってればいいと思う

5は因果応報

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