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第十八話 声明

 歩いて家に帰る途中も木村のルンルン気分は抜けなかった。先ほどの落ち込みは何だったのかと思わせる程だ。




「すごいな。これから楽しみだな」




 脳裏に響いた川島の声に木村は上機嫌に答える。




「うん。頑張らないとね」




 家に着くと、いつものように川島にバトンタッチして部屋着に着替えた。そして、川島は食事を済ませてくつろぎの時間に入った。


 持って帰ってきた『BW』を見ながら、木村の記事を読んでいた。あの時インタビューで発言した言葉が一言一句記されていた。


 撮影した写真も美しく載っていてまさしく美人という雑誌にふさわしいものだった。


 撮影者の箇所にはしっかり前田と記されていた。


 川島はその八ページを見ながら、不思議な感覚に陥る。


 木村真衣という人間は確かに存在するかもしれないが、その人物は常に存在するものではなく、ある時は川島健太であり、またある時は深沢真也であるのだ。しかし、同一人物ではなく、それぞれの性格があり体も顔つきも違う。不思議で仕方なかった。


 そんなことを考えていると、脳裏に声が聞こえてくる。




「ちょっと、健太。いつまで見てるのよ。そんなに見たいなら変わればいくらでも見れるでしょ?」




 木村はじっと雑誌を見ている川島を見て恥ずかしくなった。




「あ、ああ。そうだな」




 川島は木村の言葉に慌てて、雑誌を閉じた。そして、川島は風呂に入り、その日を終えた。


 次の日、川島は講義を受けた後、レンタルビデオ屋のバイトに向かった。


 そこに来ていたお客さんの女子高生たちがしきりに話をしていたのを聞いてしまった。




「買った? 昨日出た『BW』」




 一人の女子高生が友人らしき女子高生に聞いた。




「うん。見た見た。あの新人の女の子すごく可愛くなかった?」




 その友人が返すと、初めの女子高生がハイテンションで身振り手振りをつけながら同調する。




「木村真衣ちゃんでしょ! これから売れるよね! すごくきれいだったし」




 そんな会話を横で聞いていた川島は自分のことのように嬉しくなった。バイトを終えて帰路につく途中、川島は木村に今日の話をし始める。




「真衣。応援してくれてる子いるんだな」





 川島の言葉に少し照れながら、木村は笑った。


 そして、バイト中見れなかった携帯を確認した。木村がモデルになってからは川島用と木村用の二台を持っている。




「不在着信五件?」




 木村の携帯に表示されてるのを見ながら、不審に思った。十分単位で高木から電話がかかってきていた。




「高木さん?」




 木村は不思議そうな声を出す。川島は急いで家に帰ることにした。家に帰ると木村に交代した。


 木村が高木に電話をかけなおす。




「もしもし」




 数回のコール音の後、高木が出る。




「もしもし、木村です」




 木村の声を聞いた高木はすぐさま口調を変える。




「あ、真衣ちゃん! 『BW』を見た各出版社から仕事の依頼が殺到してるのよ!」




 高木の言葉に木村は何が何だかわからなくなった。




「でも、ちゃんと仕事を入れる日は考えるから。あと、仕事の電話に混じって読者からの問い合わせも山のように来てるの。すごいわよ」




 高木の声はどこか忙しく、荒々しかったが内容はとても濃いものだった。




「じゃあ電話の応対でちょっと忙しいからまた落ち着いたら連絡するわね」




 高木はそう言うと一方的に電話を切った。電話を切った木村はまたもや呆然としていたが、しばらく経つとそわそわし始めた。




「どうしよう、どうしよう」




 少しパニックに陥った木村を川島がなだめる。




「まぁまぁ、少し落ち着けよ。これから仕事が増えることはいいことだろう」




 木村は小さくため息をついて、急に座り込む。




「あたしに出来るかな?」




 完全にパニック状態だ。




「大丈夫だ。真衣なら出来る」




 木村は少し不安そうな表情をしたが、川島の言葉に頷いた。


 そして、再び川島に交代する。川島はバイトの疲れを取りながら眠りについた。

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