表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霞んだ景色の中で  作者: ざっく
西田浩一の視界
27/27

ハッピーエンド

 だけど、潤んだ目でこちらをぼんやりと眺めてくるだけで、全く嫌がりもしない相川を見ていると、浩一がこの話を切り出せるのなんか、今日の今しかないような気がした。

 ヘタレだと呼んでもらっていい。

 告白だとか全くしたことがないんだ。っていうか、男女のお付き合いというものをしたことがない。

 付き合って欲しいと思った相手もいなかったのだから、告白なんて、したこともない。

 自分自身がそんなことをすることを想像したことすらないのだ。

 その、自分が今しかないと思った。


 「相川、付き合ってくれないか?」


 ――――どこに?

 とか、返ってきたらどうしようと思ったが、ちゃんと、理解はしたようだ。

 首まで赤くなって、くちをパカッと開けたまんまになった。


 まあ、まともに話したのも今日が2度目だし、いきなりすぎだよな。

 だけど、好意は感じ取れているので、いいとこいくのではないかと思った。

 「いきなりだし、返事は今じゃなくても・・・・・・」

 時間をおいてもらった方がいいかと、相川の両手を放して、相川が落ち着くまで待とうと思ったら、いきなり相川に捕まえられた。


 「付き合います。付き合ってください!お願いします!」


 浩一の手を包み込むには全く足りない両手で、浩一の手を握りしめてきた。

 力いっぱい握られている気がする。痛くはないが、相川の手が、真っ白になっていた。


 「そうか。じゃあ、よろしく」


 そういえば、泣きそうな顔で、相川が笑った。







 力を入れすぎの手をゆっくりと解き、さっきまで唇を噛みしめて真っ赤になった唇に親指で触れた。

 何か意図があったわけではないのだが……いや、正直に言おう。痛そうだなと思ったことは本当だが、すごくやわらかそうだとも思った。

 だから、噛みしめて真っ赤になった唇に触れて、驚いて動きが止まる相川をいいことに・・・・・・自分の唇を重ねた。

 かしゃんと、相川の眼鏡が音を立てた。


 柔らかく、触れるだけのキスをして、目も閉じないほど驚き切っている相川に笑って手を差し出した。

 「じゃ、帰ろうか」

 「は・・・、はひっ」

 浩一の言葉に、ぎくしゃくと立ち上がった相川が、足をもつれさせて倒れこんでくるので、受け止めた。

 そうか、これって。

 「ご、ごめんなさ・・・・・・?っ?」

 謝る相川を無視して、受け止めたそのままを、腕の中に引き寄せた。

 すっぽりと腕に納まる柔らかい体が気持ちいい。

 「にっ、西田せんぱっ・・・?」

 「うん、もう一回」

 「へ?」

 見上げてくるその瞳を見てから、おでこにキスを落とし、目を閉じたところで、口にも落とした。


 その後の帰り道は、バカバカ言っている真っ赤な相川を眺めながら、次するときは、先に眼鏡を奪おうと企んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ