第二話
ウツボとの死闘。
人知れず沈む海賊船で、金貨の山を全触手でヒーハーしたり。
イカからの求愛。
クラゲがたゆたう満月の夜、深い海で塩を挽き続ける臼の音を聞いた。
海での記憶が漁火のように脳裏をめぐり遠のいていく・・・・・・
燦々と降る陽光が私をあぶる業火となり、私の命の火が消えかけたその時。
「父ちゃ~ん、焼けてきたぁ~。いい匂い~」
私は二本に減った手でタコを裏返していた。ついさっきまで私が入っていたタコを。
そう、私の意識は少年の体に収まったのだ。
「おお、良く焼けたようだな! だがつまみ食いはするなよ!」
ずる賢そうなオヤジが『父ちゃん』らしい。
いい色に焼けた私の抜け殻、すなわちタコを皿に移して渡しに行く。歩くのは久しぶりで足がもつれた。
「ダイヤモンドのように水を弾く深紅のボディ、間違いねえ。まさにこいつが例のタコだな!」
父ちゃんの鼻息が荒い。タコを見つめる目には欲望が燃えている。
少年に移ってつくづく命拾いした。オヤジの熱い鼻息と視線を浴びる趣味はない。
父ちゃんの震える手が皿を掲げ持った。
「早速、お届けだ!」
楽しい企画に飛びつかせていただきました。
打ち上げてくださったごんたろうさんに感謝します。
第一話のごんたろうさんのタコ描写に「雨上がりの南国を走るフェラーリか?」と騙されました。
爽快にくやしいのでステキタコに。