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「ウォーレスさんが戻ってきて嬉しいです」

「悪いな。少しよそで野暮用があったんだ」


 俺は平静を装ってそう言うが、イヴェットはなぜか食い下がる。


「ファルネーゼ枢機卿の引退に伴い、私たちの教皇庁への帰参は白紙となりました。おかげで私たちは今、ここにいられます」

「よかったじゃないか。神様のご加護って奴だな」


 俺の記憶には、あの日――全身を汚しながらも毅然として清掃に携わったイヴェットの姿がある。それは、彼女の誰も奪うことのできない信念と誇りだ。


「ウォーレスさん、あなたのおかげです」


 突然イヴェットはそう言ってきた。俺は驚く。俺の正体を知っているのか? そんなはずはない。


「俺は何もしちゃいない。自分の仕事をしているだけだ」

「私たちがここに留まれるようにしてくださいました」


 俺は言葉を失って、イヴェットの顔をまじまじと見た。彼女の唇が動く。


「――元盗賊ギルドの長、灰色烏さん」

「おい、イヴェット。飲みすぎだぞ」

「教皇庁の目は至る所にあります。なぜあの日、私があなたに声をかけたかお分かりですか?」


 イヴェットは俺を見返す。彼女はただのお嬢さんではない。れっきとした教会の手であり目だったのだ。


「初めから、あなたの動向に教皇庁は注目していたんですよ。元盗賊ギルドの長が、引退してフィクサーになっている。何を企んでいるのだろう、と」



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