ゲームではないと認識する
趣味を詰めました
楽しんでもらえたら幸いです
まだ一話分しかできていないためゆっくり更新です
どうしてこんなことになったんだろう?
私は現在、お城の牢に囚われていた。邪神の復活を手助けしてしまったからだ。
罰はまだ具体的に決まってはいないけど、一生この中かもしれないから覚悟しておけって言われちゃった。
両足首に、逃げられないように枷の魔道具が付けられている。重くは無いけれど、目に入るたびにここから出られないんだって悲しくなって、泣いてしまう。
たくさん泣いた所為で熱を持って腫れぼったい瞼を擦って、くすん、と鼻を鳴らした。
いくら可愛い子ぶったって、見てくれるのは石の壁と格子の向こう側にいる看守だけだ。
だけど、そうするのが癖になってしまっている。自然にそうできるようにいっぱい練習したんだもん。
だってだって、自分が一番好きだったゲームに似た世界に転生したんだよ? しかもヒロイン!
だったら誰だってやってみたいって思わない?
「思わねーよ? だって最近の流行りは悪役令嬢モノなんだから。ヒロインになったら人生終わった……って絶望するわ」
声に顔を上げると、知らない男の人が私を見ていた。看守の制服とは違う服装をしている。国軍の人だ。
面倒だ、という感情がありありと見える、くっきり二重のたれ目。当たり前のように睫毛が長い。
瞳は夕焼けみたいな透き通った赤橙色。青味がかった濃灰色の長い髪を、後ろで結んでいる。
「(ゲームにこんなキャラいた?)」
覚えはないけど、今まで見た中で(王子様よりも!)一番と言って良いほど綺麗な顔だった。
「今、ゲームに俺いた? って思ったろ」
思わず見惚れていたら、その人はそう言い放った。
「え」
「言いたいことはわかるぜ、俺はアンタと同じ転生者だからな」
「え!? 転生者!?」
「そ。でもこの世界ではそう珍しいことじゃない」
驚きを隠せない私に、彼は呆れたように言う。
「科学発展してなさそーな昔の西洋風の街並みなのに、スマホとかテレビあったろ」
「そういう、ゲームの仕様じゃないんですか?」
「ああいうのは全部、転生者や転移者が心血を注いで作り上げてきた物なんだよ。どうやら建築家や洋裁師は来てない様だが」
全然気がつかなかった……。恥ずかしくて俯いてしまう。
「この世界はゲームじゃない。
だからヒロインは牢の中にいるし、登場すらしない奴が居るんだ。理解したか?」
腕を組んだまま、彼は何かを見定めるようにわたしを見下ろしていた。
「……建築家はわからないですが、服を作る人も多分来てます。下着が現代的ですから」
そう答えたら、
「ああ、よかった会話はできるみたいだな」
と彼は心底安心したように言った。
「で、ここはゲームの世界じゃないってちゃんと理解したんなら、刑罰が下るのもわかるよな」
「あ、」
そうかわたし国を滅ぼすようなことしちゃったんだ……。取り返しのつかないことをしてしまったんだと実感が湧き、体が震える。
一生出られないどころじゃない。もしかしたら、よく読んでいた物語みたいに処刑されてしまうんじゃ……。
「落ち着け。たしかに邪神が現れた原因の一つはアンタだ。
だが調査結果から、アンタは洗脳されていた可能性が出てきたんだ」
洗脳?
「学園に入るまで、どっか閉じ込められてたろ?」
「え、入園前の子女は身の安全のためにお家で過ごすんじゃないんですか!?」
「んな訳ねぇだろ。ここは仲間作りが重要な社会だぞ? 少なくとも同じ派閥なら物心付く前から交流しまくってるわ」
どこの家でもそうだって言われてたからそうなのかと思ってた。
「今日俺が来たのは洗脳の確認と、意思疎通がきちんと図れるかを調べに来たんだよ。
用事終わったし、もう帰るわ」
「え、もうですか……」
来てからまだ三十分も経ってないのに。
「俺、まあまあ偉い立場に就いてるから忙しいんだよ。明日も来るから」
じゃあな、と彼は自己紹介もせずにすぐに帰ってしまった。
静かになった。あの人が帰っただけなのに。
相変わらず看守が格子の外に居るのに。
今までは何とも思っていなかったのに、急に牢居ることが怖くなってしまって、また泣いてしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございます
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