27話 南太平洋サモア近海にて
なんとか書けたのじゃー!
今話は目を閉じて、心の眼で読むのです。
ほら、潜水艦の中の情景が浮かび上がってきたでしょ?
け、けして、手抜きとかではないんだからね!(汗
昭和17年1月中旬 南太平洋 サモア近海北東
「方位290度、感あり。4軸推進音が多数、大型の軍艦を含む船団です」
「ビンゴか」
「ドンピシャリでしたね」
「まさか本当にドンピシャで来るとはな……」
「軍令部の情報は正しかったということですね」
「しかし、サンディエゴからハワイに行くのではなくて、サモアでしたか」
「おおかた、アメリカ嫌いのメキシコ人でも買収して諜報員に仕立てたのだろうな」
「サンディエゴはすぐ隣がメキシコ国境ですから、工作員も潜り込みやすそうですね」
「だが、情報は正しかったのだから、ありがたい」
「ここまでお膳立てされて、ボウズでは恥ずかしいですね」
「そういうことだ。潜望鏡深度に浮上するぞ」
「了解。潜望鏡深度に浮上、よーそろー」
※※※※※※
「どれどれ…… うん? 敵の駆逐艦が少ないな…… 二隻しか見当たらない」
「それだと、駆逐艦は最大でも四隻か五隻ということですね」
「多くてもそんなところだろうな。それに、対潜哨戒行動も対潜警戒行動もしていない」
「敵さんは、日本の潜水艦がサモア近海にまで進出しているとは思ってないということでしょうか?」
「クェゼリンを出る時に、定時連絡はしなくてもよいとの通達が出たが、なるほどね。こういうことだったのか」
「暗号表を刷新したのに使うなとは、宝の持ち腐れような気もしますが」
「定時連絡は敵に居場所を教えるようなモノだぞ?」
「つまり、我々が無線を発しないだけで、敵が油断してくれるということですか?」
「潜水艦の最大のメリットはなんだ?」
「なるほど、潜水艦の隠密性の意味がなくなるということでしたか」
「そういうことだ。 ……先頭は船首楼型甲板で三連装砲塔が前部に二基で煙突が離れているから、ノーザンプトン級巡洋艦か?」
「その形状は、ノーザンプトン級に一致します」
「艦首の波切り具合いからいって、12ノット前後だな」
「推進音からも10から14ノット程度と判断します」
「空母の艦影も見えるぞ。情報と同じヨークタウン級だ」
「狙いますか?」
「狙えるポジションに空母が来れば狙うが、無理そうだったら他のフネで我慢するさ」
「艦長は慎重ですね」
「大型の軍艦だけを狙わずに、客船や貨物船も狙えとの通達が出たからな」
「つまり、沈められる敵の船であれば、なんでもいいということですか?」
「一応の優先順位はあるが、基本的にはそういうことだな。商船への雷撃も一本までという、ケチくさい通達は撤廃だそうだ」
「それは助かります」
「……空母の後ろに中型の客船っぽい船とタンカーや貨物船も見えるな」
「よりどりみどりじゃありませんか。腕が鳴りますね」
「副長も見てごらん」
「拝見します。 ……なるほど、敵さんはまったく警戒していませんね。これは鴨が葱を背負って来るのと一緒ですな」
「まあ、まだアメリカ海軍にも戦訓が溜まってないのだろうね」
「開戦からまだ一月ですから、そうなのでしょうね」
「しかし、これは我々にとって好機とも言える」
「そうでしたね。幸運の女神には前髪しかないそうですしね」
「副長はなかなか博識だね」
「レオナルド・ダヴィンチが好きなおかげですよ」
「敵船団との会敵予想時刻は…… 45分から50分後か。転舵なんかしないで、どうかこのまま真っ直ぐに来てくれよ。一度、潜望鏡を下げるぞ」
「了解、潜望鏡下げ。しかし、伊6号がサラトガを撃沈したみたいですから、できたら我々もヨークタウン級を沈めたいところですね」
「そのサラトガだがな、俺の勘ではたぶん沈んでない気がするんだよなぁ」
「では、サラトガ撃沈は誤報だと?」
「大型の軍艦が一発か二発の魚雷で簡単に沈むとは考えにくい。特にアメリカの軍艦は頑丈な作りらしいからな」
「なるほど。言われてみれば確かに、その通りかも知れません」
「だから、サラトガは良くても大破どまりだと思うぞ?」
「撃沈してたら儲けものだと思っておけばよさそうですね」
「半年後には、また何処かの戦場でサラトガ発見の報が届く気がするね。賭けてもいい」
「では、私もサラトガが生きている方に秘蔵のスコッチを賭けましょう」
「副長、それでは賭けにならないだろう? それに俺はブランデー派なんだよ」
「伊6号か艦隊司令部の連中となら賭けは成立しそうですね」
「まあ、それなら連中も乗ってくるかもな。さっさと戦争を終わらして、洋酒でも浴びるほど飲める世の中に戻って欲しいよ」
「現状では、洋酒は手に入れにくいですから、残りを気にしてチビチビと舐めるように飲むのが関の山ですからね」
「ははっ、違いない」
※※※※※※
「1番から4番、調定深度3メートル。魚雷速度は低速で2度づつの散布角を付けて、一斉発射の準備をしておけ」
「1番から4番、深度調定3メートル、雷速は低速、発射角2度。了解」
「一斉発射後、左175度回頭してから、5番と6番を散布角3度で高速で発射する」
「5番6番の雷速調定は高速、発射角3度。了解」
「その後、深度60まで潜航して2ノットで現場を離脱する」
「戦果も確認しないまま直ぐに離脱するのですか?」
「君は爆雷を食らって喜ぶマゾヒストなのかね?」
「いえ、そういうわけでは…… 小官も爆雷を食らうのはごめんです」
「夜になったら浮上して、全速航行で再度襲撃できる地点に先回りするぞ」
「なるほど、敵の駆逐艦に爆雷を落とされるよりも安全そうですね」
「まあ、敵さんに見つかるかどうかは、運次第ってとこだろうがな」
「敵がマヌケであることを神様に祈ります」
「ドン亀乗りが信心深くなるのは、どうやら本当のようだね」
「土左衛門と隣り合わせですからね」
「海軍の中では、一番割に合わない商売だとつくづく思うよ」
「艦長は自分から潜水艦乗りを志願したのではないのですか?」
「俺は兵学校の成績が悪くて希望する兵科を選べなかったんだよ。それから仕方なしにズルズルとだな」
「それはご愁傷様です」
「なんだかんだでドン亀が水に合ったんだろうなぁ。そういう副長はどうなんだね?」
「自分は第一希望どおりですね」
「第一希望が潜水艦勤務だなんて、君はやっぱり本当はマゾヒストなんじゃないのかね?」
「違いますよ。たぶん…… それにしても、早く九五式魚雷が欲しいですね」
「そうだな。炸薬量も八九式の三割増しだし、雷速も高速で49ノットも出るのに射程距離も長いときたもんだ」
「酸素魚雷って敵に発見されにくいのですよね?」
「気泡が水に溶けるから、理論的にはそうなんだろうな」
「秘密兵器の名は伊達ではないということみたいですね」
「だが残念ながらも、八九式を使い切ってからでしか、こちらに酸素魚雷は回ってこないだろうよ」
「それで敵の船を撃沈する可能性を逃すかも知れないのに、残念です」
「まあ、今は戦時だ。いくら魚雷が高価とはいっても、量産体制に入っていると信じよう」
「商船への雷撃制限が撤廃されたのですから、どうやら信じられそうですね」
「そうだな。魚雷への予算をケチって敵を取り逃がすのは、悔やんでも悔やみきれんからな」
「戦争が終わってからの、ハイパーインフレーションが怖いですけどね」
「おや? 副長は経済に一家言ありそうだね」
「もう退官しましたけど、親父が大蔵官僚だったんですよ」
「なるほどね。それなら君は海軍じゃなくて霞ヶ関に進む進路もあっただろうに、やっぱり君は変人だな」
「思春期特有の親への反発心とかってヤツで、兵学校を受験したら偶々合格してしまったんですよ」
「ギリギリで合格できた俺とは頭の出来が違って羨ましいよ」
「小官も席次は中の下でしたよ」
「俺は下から数えて十位以内だったんだよ……」
「は、はぁ、それはなんと言いますか……」
※※※※※※
「ほぼ直角に交わる理想的な襲撃ポジションを取れたな」
「運も味方してくれましたね」
「これで外したら、指を差されて一生の笑い者にされるよ」
「それは勘弁願いたいものです」
「……今だ。1番から4番まで、発射」
「了解。1番から4番まで、発射」
「1番から4番、魚雷発射」
「……命中まで、約162秒です」
「潜望鏡下げ。取舵一杯、左175度まで回頭」
「潜望鏡下げ、了解。取舵一杯、左175度まで回頭よーそろー。回頭終了まで約90秒です」
「回頭終了後、5番6番、魚雷発射」
「めくら撃ちで発射するのですか?」
「ああ、どうせ5番6番が命中する予定の時間は、1番の60秒以上は後だから、めくら撃ちでも構わん」
「どうしても敵に対処される時間を与えてしまうのは仕方ありませんか」
「回頭に掛かる時間を短縮できない限りは、どうしてもそうならざるを得んよ」
「当たれば儲けものというヤツでしたか」
「そういうことだな。5番6番の発射管が艦尾じゃなくて艦首にあれば、こんなまどろっこしい事をしなくても済むので楽なんだがね」
「巡潜乙型は発射管が艦首に六門でしたね」
「丙型は八門もあるぞ。まあその分、丙型は偵察機を搭載できないが」
「艦首からの魚雷8本一斉発射とか浪漫ですよね」
「ああ、全弾命中でもしようものなら、射精するほど気持ちいいだろうよ」
「艦長、たとえが下品ですよ。まあ、その気持ちは分からないでもありませんが」
「回頭終了」
「舵戻せ」
「舵戻し、よーそろー」
「5番6番、発射」
「了解。5番6番、発射」
「5番6番、発射」
「5番6番、命中まで約130秒。1番から4番、命中まで約50秒」
「深度60まで潜航」
「メインタンク、前部バラストタンク注水。深度60まで潜航、よーそろー」
※※※※※※
洋上 アメリカ海軍 第17任務部隊
「どうやらここまでは、タイムスケジュールどおりに順調にきていますね」
「しかし、この近辺はマーシャル諸島から一番近いのだから、油断は禁物だぞ?」
「近いとは言っても、ジャップの潜水艦基地があるらしいクェゼリンから2000マイルは離れていますよ」
「奴らは日本から4000マイルも離れたハワイを攻撃してきたばかりなのに、その事を君は忘れたのかね?」
「そういえばそうでしたね……」
「ボクがジャップの潜水艦隊の司令だったら、あと少しでパゴパゴだからと、ちょっとばかり気が緩んだこの時を狙うね」
「しかし、ジャップの潜水艦らしき無線はこの付近からは発せられていませんから、提督の心配も杞憂ではありませんか?」
「それはどうかな? 真珠湾攻撃の時みたいに敵は無線を封鎖しているかも知れないよ。それに、この辺りはパゴパゴの哨戒圏の外だよ」
「パゴパゴからまだ800マイルは離れていますから、それは仕方ありません」
ドーンっ!
「む? なんだ!?」
「ああっ、ルイビルが!」
「敵襲! ジャップの潜水艦だ! 見張りは魚雷に注意しろ!」
「なんということだ……」
「シムスはルイビルの救助に向かえ! 他の駆逐艦は対潜水艦戦闘を開始! 船団は右70度転舵ののちジグザグにて対潜警戒行動に移行せよ! 飛行長、ドーントレスかワイルドキャットは直ぐにでも発艦できそうか?」
「5分だけ時間を下さい!」
「3分でやれ!」
「イエッサー! 急がせます!」
「エンタープライズのハルゼーにも潜水艦に警戒しろと打電! 平文で構わん!」
「右舷、雷跡4本! 魚雷です! こちらに真っ直ぐ向かって来ます!」
「右舷からもだと!?」
「取舵一杯! 1軸2軸最大戦速! 3軸は強速! 4軸は停止後に後進一杯!」
「艦長、そんな無茶をして機関は大丈夫なのかね? 戦車のスピンターンではないのだぞ?」
「全然大丈夫じゃありませんよ。少なくとも近いうちにオーバーホールは必要になるでしょうね」
「最低二ヶ月はドック入りになるのか。レキシントンが撃沈されて、サラトガも大破したこの時期にヨークタウンまで離脱となると痛いな」
「しかし、今現在の船足が遅いですからこうでもしないと、舵が効くのに時間が掛かり過ぎて魚雷を躱し切れません」
「撃沈されるよりかはマシか」
「はい、腹に魚雷を食らうよりも、フネは残るのですから、ドック入りの方がまだマシでしょう」
「わかった。上が文句を言ってきたとしても、艦長の操艦は適切だったと証言しよう」
「それは助かります」
「どうか躱してくれよ……」
「それにしても、少なくとも二隻以上はジャップの潜水艦がいるということか?」
「キャベツ野郎お得意のウルフパックの真似でしょうかね?」
「モノマネが得意な黄色い猿らしいじゃないか」
「一本躱しました!」
「やったか!」
「ダメです! 全部は躱しきれません! 命中します!」
「クソったれ! 対ショック姿勢! 総員なにかに掴まれ!」
「船団に合わせた低速での航行が仇となったか……」
ドーンっ! ドドーンっ!!
「うぐっ! ダ、ダメージコントロール急げ!」
「ちっ、三本も食らったか…… 艦長、大丈夫か?」
「あばらを何本かやられたようです」
「艦長負傷! 衛生兵を回せ!」
「大丈夫です。艦の指揮は取れます」
「そうか。しかし、これは少し不味いな……」
「申し訳ありません。最悪の場合は総員退艦も必要になるかも知れません」
「いや、最善は尽くしたのだから、そうなったとしても仕方ない」
「いえ、応急修理班が頑張ってくれれば、まだ持ち堪えられる可能性も僅かながらもあります」
「それもそうだったね」
※※※※※※
海中 伊号潜水艦
『ドーンっ!』
「なんだ、早爆か?」
「爆発音は二つですね」
「早爆にしては同時に爆発音とは、それも妙だな……」
「艦長、早爆の音はもう少し軽い音になるはずです」
「聴音のプロである先任が言うのであれば、そうなのかもな。であるならば、僚艦か?」
「1番から4番、命中まで10秒…… 5…4…3…2…1」
「外れ…『ドーンっ!ドドーンっ!』ふぅ~、命中したか」
「立て続けに爆発音が三つです。艦長やりましたね」
「ああ、最低でもヨークタウン級の大破は確実だろうね。しかし、早爆と併せたら爆発音が一つ多いぞ?」
「伊69か70の放った魚雷ではないでしょうか?」
『ドーンっ!』
「ん? もう一つ遅れて爆発音が」
「どうやらヨークタウン級から外れた一本も、奥にいた別の船に命中したようですね」
「四本全部が命中とは、つき過ぎていて怖いぐらいだよ」
『ドーンっ!』
「なんだ? 5番6番の魚雷にしては早すぎるぞ?」
「これも、近くにいるはずの僚艦から発射された魚雷の命中音ではないでしょうか?」
「偶然にしてはタイミングが良すぎる気もするが、それしか考えられんよなぁ」
「示し合わせてはいませんでしたけど、近くにいるのだから可能性としては。こうなることもあるかと思います」
「そうなると、最後の一本の命中音はどちらが放った魚雷だったのか判別できんな」
「続いて5番6番、命中まで10秒…… 5…4『ドーンっ!』」
「いまの爆発は、俺らの5番か6番の命中音だと思うか?」
「数秒程度の誤差ですから、十中八九はそうだと思います」
「艦長、だいたい分かりましたよ。最初の爆発音はヨークタウン級の針路よりも前方から聞こえてきましたので、おそらくはノーザンプトン級への命中音ではないかと思われます」
「そう言われてみると、真後ろじゃなくて少し左側から聞こえてきた感じがしたな」
「そう考えると最低でも、ヨークタウン級空母とノーザンプトン級重巡洋艦を含む五隻程度には命中している計算になりますね」
「同じフネに命中してなかったら、だけどな」
『ドーンっ!』
「今度はなんだ? この感じは爆雷か?」
「はい、どうやら駆逐艦が爆雷を投下しているようです」
「どこに落としているんだ? まるで素人だ」
「かなり遠いですね」
「一度に複数の艦が被雷して、敵はパニックになっているのでしょうかね?」
「それか、爆雷を落としているのは、他の僚艦の近くかも知れませんよ」
「その可能性もあったな。同僚の無事を祈ろう……」
やばい、書いていたら久しぶりに、サイレントハンターをやりたくなってきたw
うずうず…
感想でチラホラと、アメリカ側の視点とか他者視点を見たいという声が寄せられています。
しかし、ぶっちゃけ作者である私が主人公以外の他者視点を書くのが苦手なんですよね…
私が書く他者視点の場合だと、地の文さんが突然仕事をしてくれなくなるのですよ(汗
群像劇や三人称を上手く書けないともいいます…
三人称の地の文を書いていると苦痛に感じてくるんですよねw
上手く柔らかな文体で三人称をスラスラと書ける作者さんを尊敬します。
まあ、だからこそ、他者視点は台本形式でお茶を濁しているのですがw
宮様にTSと同じく台本形式だったら、アメリカ側の視点も入れられるとは思いますけど、それでもよろしいでしょうかね?
ご意見お待ちしております。
次話は本当に未定…




