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1/4

>>1

 うちの犬は、インターネットを使えるらしい。


 そう気づいたきっかけは、私の部屋にあるパソコンに、履歴を消去した形跡があったからだ。


 というのも、たまたま世界随一の検索エンジンであるGolgol(ゴルゴル)のアカウントがなにやらひとつ増えていて、誰かが何かを調べている形跡があったのだ。


 しかし、パソコンの方の検索履歴は消えている。


 もしや、空き巣……?


 いや、空き巣がわざわざGolgolアカウント作って検索だけして去っていくの何??


 と思って、カメラを設置してみた。


 すると……。


『はーー、ウチの飼い主のこと分かってねえわコイツら! ガチで分からせたる!』


 ……と、謎の声。


 ちなみに、ウチにはコーギーのパン吉がいる。


 そして、ウチの飼い主、というセリフ。


 さらに極め付けは――あの短いおててで、ダカダカダカダカ!!!! と爆音でタイピングするパン吉の姿。


 もしかしてウチの犬、喋れる上にインターネットやってるのでは?


 と思ったのは、仕事が終わって動画を確認していた電車内でのことだ。


 そして、家に帰って開口一番。


「ねえパン吉、キミ喋れるしインターネットやってるよね?」


 そんなあり得ないようなことを問いかけた私に対して、パン吉は言った。


「な、なお〜ん……」


「いやキミ猫じゃないから」





「で、説明してちょうだい」


「せ、せせせせ説明? 説明しろって言われても拙者にもよく分からんし」


 語尾にwがついてそうな喋り方をするパン吉に絶句する。


「そもそも気づかない方にも問題はありまして」


「ねえそこ草生やすのやめて」


「スマソ」


 ウチのかわいいパン吉がこんな喋り方だなんて……。


「ていうか待って、よく分からないって、どういうこと?」


「え、いや、そのままに決まってるでござろう常識的に考えて、フヒ」


「う、うぜー……いいから、説明して。おやつあげないよ」


「それは困る!……え、えと、フヒ、つまりですな」


「ああもう喋れば喋るほど……」


 インターネットに染まりすぎでは??


「拙者もいつの間にか喋れるようになっていたというかインターネッツを触れという衝動を抑えきれなかったと言いますか……フヒ」


「ねえパン吉の姿でフヒって笑うのやめて」


「生まれた時から正真正銘パン吉なんだが??」


「いつの間にか喋れるようになったって、具体的にはいつからよ」


「2年前?」


 2年前!?


 まって……この賃貸に引っ越してきてからずっとってこと?


 その間私はまったく気づかずにいたの?


「嘘でしょ……」


「まあ? 拙者の隠し方が卓越していたということで? ここはひとつ」


 こいつ私のこと煽ってるんだろうか。ガチでうざい。


 あんなに可愛くて愛想のあるパン吉が、こんなになってるなんて……。


「あー……記憶消せないかな」


「記憶は消せてもデータは消えないゆえ」


「ねえ、その喋り方ほんとにどうにかならないの?」


「フヒヒ、拙者はこの喋り方だからこそ拙者なのでござる」


「なんでコーギーが拙者なの……」


 ……ていうか。


「インターネット使ってなにしてるわけ?」


「え? それはまあ、日々仲間たちとともに研鑽を積んで……」


「ほんとは?」


「いや、あの」


「パン吉」


「きゅーん……」


 鼻を可愛らしく鳴らしたパン吉に一瞬怯むが、圧は変えずに睨みつけると、パン吉は目をしおっしおの顔になった。


「拙者が作った掲示板サイトで毎日レスバしてるでござる……」


「は!?」


 予想外の回答に、私は慌ててパソコンに向かう。


「あ! あ! 殺生な!! 見ないでくれえ!!」


 Golgolを開き、アカウントをパン吉のものに。


 履歴を遡って……いや、遡るまでもなかった。


「パン吉のお部屋? なにこれ、一昔前みたいなネット掲示板は」


「ヴッ、そんなこと言わんといてやあ……」


「なんで関西弁??」


 ちょうど一番上にあった掲示板をクリックしてみる。


 タイトルは『【朗報】本日のおやつ、ジャーキーに決定ww』である。


 日付から察するに、おそらく一週間前の犬好き上司にジャーキーを死ぬほど貰ってくるね、とパン吉に話した日だな。


「なになに……」





1:名無し ID:pannkichi004

神すぎるだろ

今日の勝ち確や


2:名無し

犬かよ


3:名無し

管理人テンション高すぎて草


4:名無し

ジャーキーってそんなうまいんか


5:名無し

>>4

匂いがまず強い

あれでテンション上がるんやろ


6:名無し

食ってみたいけどちょっと怖い

美味しいんかな、犬用ジャーキー


7:名無し

犬用食おうとすんなwww


8:名無し ID:pannkichi004

あの噛みごたえがええんや

ずっと噛んでられる


9:名無し

完全に犬の感想で草


10:名無し

でもビーフジャーキーは普通にうまい


11:名無し

酒のつまみのイメージやわ


12:名無し

犬ってなんであんな好きなんやろな


13:名無し

肉だからやろ


14:名無し

保存食やし匂いも強いしな


15:名無し ID:pannkichi004

袋の音だけで飛びかける

ついでに飼い主にも飛びつく


16:名無し

あれほんとすごい


17:名無し

気配で察知してくるよな


18:名無し

隠しても見つけるのなんなん


19:名無し

執念や


20:名無し

嗅覚チートすぎる


21:名無し ID:pannkichi004

隠してる=ワイの食べ物や

ワイは悪くない


22:名無し

理論が強引すぎる


23:名無し

開き直りで草


24:名無し

ジャーキー食べてるときだけ言うこと聞く説


25:名無し

それな


26:名無し

普段との落差がひどい


27:名無し ID:pannkichi004

モチベーション管理や


28:名無し

仕事みたいに言うな


29:名無し

プロ犬で草


30:名無し

カロリーとか大丈夫なんか


31:名無し

あげすぎはあかんって聞く


32:名無し

太るぞ


33:名無し ID:pannkichi004

そこはちゃんと管理されとる

有能飼い主や


34:名無し

自分で言うな


35:名無し

信頼関係築けてて草


36:名無し

なんか平和なスレやな


37:名無し

最初から最後までジャーキーの話しかしてない


38:名無し

いいことや


39:名無し

ワイもなんか食いたくなってきた


40:名無し

買ってくるか


41:名無し

ご飯どきに見るもんじゃないな


42:名無し ID:pannkichi004

お前らも食え

世界変わるぞ


43:名無し

大げさで草


44:名無し

でもちょっとわかる


45:名無し

硬いのと柔らかいのどっち派?


46:名無し

硬いやつ

ずっと噛める


47:名無し

ワイは柔らかい派

すぐ味出るし


48:名無し

犬はどっちなんや


49:名無し ID:pannkichi004

どっちも好きやけど硬いのは長く楽しめる


50:名無し

ちゃんとレビューしてて草


51:名無し

管理人有能やん


52:名無し

種類によって匂い違うよな


53:名無し

魚系のやつもあるよな


54:名無し

あれはちょっと癖ある


55:名無し ID:pannkichi004

魚もええぞ

風味が広がる


56:名無し

グルメ犬で草


57:名無し

そのうちランキング作りそう


58:名無し

おすすめ教えてくれ


59:名無し ID:pannkichi004

王道はビーフや

外れが少ない


60:名無し

参考になる


61:名無し

やっぱ肉やな


62:名無し

高いやつと安いやつ違うんか


63:名無し

結構違うらしい


64:名無し ID:pannkichi004

安いやつは匂い弱い

高いやつはガチでテンション上がる


65:名無し

わかりやすすぎる評価


66:名無し

犬基準で草


67:名無し

でも正直それが一番信用できる


68:名無し

確かに


69:名無し

袋ガサガサしただけで来るのかわいいよな


70:名無し

あれ反射やろ


71:名無し

条件反射の極み


72:名無し ID:pannkichi004

音=ご褒美やからな

覚えとるんや


73:名無し

賢い


74:名無し

なお普段は言うこと聞かん模様


75:名無し

それも含めてかわいい


76:名無し

結局甘やかすよな


77:名無し ID:pannkichi004

甘やかしてええんやで


78:名無し

悪魔の囁き


79:名無し

でも実際そうなる


80:名無し

ジャーキー最強やな


81:名無し

万能アイテム


82:名無し

トラブル解決できそう


83:名無し

しつけにも使えるしな


84:名無し ID:pannkichi004

正しく使えば神アイテムや


85:名無し

管理人まともなこと言ってる







「……なんか、マジでインターネットに染まりきってるじゃん」


 1から100くらいまでばーっと見てみて、私は頭を抱えた。


 ていうかなに? なんでこの掲示板の人たちは受け入れてるわけ?


「ねえパン吉」


「はい……」


「はぁ……そんなしおしおになんなくていいよ。怒ってないから」


「え……怒らないの」


「怒らないよ。だって、ネットで掲示板運営してるだけでしょ。……まって、私のお金は使ってないとして、どこから運営費とか出してるわけ?」


 私はお金の管理はしっかりしている方だし、使われた形跡は一切ない。


 詳しくはないけど、そういうサイトを運営するにあたって、初期費用は数万円くらいはかかるはずでは?


「拙者、優秀なので? 最初は月額500円のサーバー借りてやって、人集めて、広告の紹介料で金稼いで、どんどんおっきくしていったで」


「えー……なにそれ、そういう知識もあるわけ?」


「もちのろんですな。最初は銀行の方を書き換えようかとも思いましたがっ。まあそれはママンが犯罪者にさせられる可能性があるので無しにしたんやで〜。えらかろ? 拙者えらかろ?」


「ぜっっったいにやらないでね……はぁ……って、私ママンって呼ばれてるの?」


「当たり前では? 拙者、物心ついた頃にはママンのそばにいたゆえ」


「いやママって呼ばれるのはやぶさかではないんだけど」


 呼び方があまりにもオタクすぎる……。


「ママじゃダメ?」


「ママンでもよかろうもん」


「ママがいいよぉ……」


「まぁ……元気出せ、ママン」


「ううううう、こんな喋り方なのに可愛い〜〜……」

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