ep.4 古物商との静かな戦い
ブライアンは家中の、生活必需品とゲーム以外のありとあらゆるものをかき集めた。
錆びついた金属片、黄ばんだ雑誌、欠けた陶器の破片……文字通り、ゴミとしか思えない品々をスーパーのビニール袋に詰め込み、町外れの古物商の戸を叩いた。
薄暗く埃っぽい店内で、彼は袋の品々をカウンターにドサリと置いた。
店主はブライアンを値踏みするように一瞥し、やれやれといった顔で袋の中を覗き込んだ。
彼の指が、まるでゴミを扱うかのように、無造作に品々をかき混ぜる。
「これは買い取れませんねぇ」
「こいつは二束三文にしかなりませんよ」
次々と告げられる低い査定額に、ブライアンは特に反応を示さない。
早くこの面倒な作業が終わればいい、そんな無関心な顔で突っ立っている。
その時、店主の指が、ガラクタの底に埋もれていた小さな奇妙な金属片に触れた。
手のひらに収まるほどの、ただ古びた鉄の塊に見えるそれ。
だが、店主がそれを手に取った瞬間、僅かにその表情が硬直した。
店主は、老眼鏡の奥の目を凝らしてその金属片を見つめる。
表面には、素人目には何の模様かも判別できないが、極めて精巧で独特な幾何学模様が、まるで細い糸で描かれたかのように刻まれていた。
それは、戦後の混乱期に闇に消えたはずの、通信用暗号機の試作段階で用いたとされる、ごく一部の人間しか知り得ないマークだった。
「……これは、ちょっと珍しいものですねぇ」
店主は平静を装い、声色を変えずに言った。
しかし、その声には微かに熱がこもっていた。
彼は実際の査定額の、実に10分の1にも満たない金額を提示した。
それでもブライアンにとっては、これまで聞いたこともないような高額だった。
ブライアンは、提示された金額に、一瞬だけ白濁した目を丸くした。
だが、すぐに興味を失ったかのように鼻を鳴らす。
「ああ、それでいい。さっさと済ませてくれ」
店主は、目の前の老人がこの金属片の途方もない価値に全く気づいていないことに安堵し、内心の興奮を抑えつつ、慣れた手つきで代金を支払った。
彼は、まさに「お宝」を手にしたのだ。
一方、ブライアンもまた、自身の目的を達したことに満足していた。
彼にとっては、それが何であろうと、いくら安値で買い叩かれたとしても関係ない。
手に入れた大金は、あの青緑色のヴェリディアン・レゾナンスを購入するには、十分すぎる額だったのだから。




