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ど正論ヒーロー セイロンガー  作者: 月極典


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154/154

正論(154)正男と繁雄


 ゴリラ怪人暴れ太鼓こと正男と、コモド怪人ヨダレこと繁雄は幼馴染だった。小学校低学年くらいまではお互いの家に行ってテレビゲームをしたり、夕方の再放送アニメを一緒に観ていた。年上の正男は少し馬鹿だが明るく懐いてくる繁雄をかわいがっていた。繁雄が駄菓子屋で水風船をぶつけられたりしていじめられていると助けるのはいつも正男の役目だった。


 しかし、正男が中学生になり、グレて悪い仲間とつるみ始めると徐々に疎遠になる。ある日、近所で久しぶりに会った繁雄は人が変わったように伏し目がちの無口な少年になっていた。


 わけを聞くと、どうやら小学校で大きな失敗をして、それ以来、人と関わるのが怖くなったらしい。正男は仲間に頼んで繁雄とまた遊ぶようになった。仲間はからかいながらも繁雄に優しかった。体が大きく力の強い繁雄は対立するグループとの喧嘩で活躍するようになり、また明るさを取り戻していった。


 それからはずっとつるんでいた。悪いことも楽しいことも、いつも一緒だった。


 そして……VVEIにスカウトされ、お互いが怪人となった今、涎タンクをつけられた繁雄を見る度に思う。

 

(あの時、仲間にしなければ、根っからワルでもない繁雄がこんな姿になることはなかった。……これは、俺のせいだ)


 ⸻

 

 東京から静岡県富士宮市に向かうダミーのEV車は国道246号線を西へ。


 日曜日の246は所々で混雑する。追跡するB班は東京町田市を過ぎた辺りで自然渋滞に巻き込まれて身動きが取れなくなった。


 目標を見失うまいと車線変更を繰り返しているうちにEV車に横付けする形になってしまった。


「あれ?」

 運転席の戦闘員がそれとなくEV車の車内を見て呟いた。

「どうした?」

 聞いたのは後部座席の赤タイツの戦闘員だ。B班のリーダー格である。

「イーッ。目標の車ですが、1人しか乗ってません。しかもあれ、水沢課長じゃないです。あんなガッチリしてないですもん」


「元課長な。……ちっ、ダミーを掴まされたか。どうします? 追うだけ追ってあの運転手をボコリますか?」

 赤タイツは3列目のシートを振り返り、不機嫌そうに踏ん反り返っているゴリラ怪人暴れ太鼓に言った。


 ボコリますか、というがこの赤タイツ、ヒーローにボコられたことはあっても、ボコったことはない。相手が若手のシャドウズ単独だとしても勝てるとすれば暴れ太鼓頼みとなるだろう。


 イキる赤タイツに暴れ太鼓は不機嫌なまま答える。

「……いんや、意味がないなら引き返してA班と合流しろ」

 今まで必ず行動を共にしていたヨダレと別の班にされたことに暴れ太鼓は違和感があった。


 今朝、会社の喫煙所で一緒になった怪人が昨日の事件について話していた。あの偽のセイロンガーたちは捕縛される寸前で自爆したらしい。警察やIHAにも被害が出たと会社は称賛していたという。怪人が自らの命を犠牲にして? 冗談じゃねぇ、あいつらがそんなことするタマか!


「あぁ、いやぁ、それはちょっと会社の指示を仰がないと……」

 明らかに動揺を見せる赤タイツ。やはり何かを隠しているようだ。


 暴れ太鼓はゆっくりと身体を起こした。

 そして、目の前に座る赤タイツの頭を後ろから両手でむんずと掴んだ。

 

「痛い! 何するんですか、冗談はやめてくださいよ……!」

 赤タイツは叫びながら怪人制御用の電気ショックのボタンに手を伸ばす。怪人の暴走を制御する緊急用の装置である。

 

「おっと、俺にそいつは効かねえ。押してもいいが、首がポキッといくのが先だぜ?」

 毛深い巨大な両手で頭を掴まれ、徐々に首を捻られていく赤タイツはあまりの恐怖に思わず装置をシートに落とした。

 

「ドライバー以外の黒タイツは手を上げろ。お前はA班の赤タイツにメッセージで今どの辺りか聞け。画面が俺に見えるようにだ」

(無事でいろ、繁雄……)

 

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