理由
短いですかね?
仕事上がって、家に帰ってきて空いた2~3時間で書ける範囲で投下してるので、お察し。
ケイン・ジューダス・コモロ。これがこの世界でのバンドーの名前。
父はガウガメラ・ジューダス・コモロと言い、王国騎士だったらしい。と言うのも、彼がこのイルミタニアに転生した時、既にガウガメラは流行り病で亡くなっていたし、ひと頃はあった、転生前のケインの記憶も、最近では徐々に薄れつつある。
そして母はマユミ。彼女は実年齢のままイルミタニアに来た。この世界では『召喚されし者』とか『召喚者』と呼ばれている。バンドーにとっては、リアル世界で高校生の時に付き合っていた元彼女であり、イルミタニアではケインの母でもあるから、ややこしい。リアル世界で自殺して、ここに来た筈なのだが、詳しい理由は知らない。聞けない。
一時期は、そうケイン6歳の時は自分も騎士になるのだろうかと、ぼんやり考えていた事もあった。
もしあの頃、騎士に叙勲されたなら素直に喜ぶことができただろう。
「不満ですか? 」
片膝を付いたまま、動かないバンドーにカタリナは問いかける。
この人は本気モードとふわふわモードの使い分けが激しい。
「何故、自分がと? まあ、無理もありませんが、素養は充分にあると見ました。それが一つ」
そこでカタリナは考え込む。演技かもしれないが・・
「あと、ふたつばかり理由はあるのですが、今は言いません。けれど・・」
バンドーはゆっくりと顔を上げ、カタリナの表情をうかがう。
「そうですね~、これは賭けてもよいですが、あなたはいずれ感謝するでしょう」
「判るよ」
「あれぇ~? 」
扇をくるくる回しながら、胸元に納め、人差し指を頬に当てながらにっこりと笑うと言葉を続ける。
「うかがいましょう~」
「バランスだろ? フィーネ姫とパーティを組むリーダーが一介の冒険者だと、示しがつかないとか、王国を騒がせる元になるとか、そんなところだろ? 」
「あらあら、まあ! 正解でーす。これでも私は~、王国の揉め事を解決する、お仕事をしているのですよ~? 早いうちに、混乱の種は摘んでおきませんと~ ねっ? 」
「判ったよ。ある程度、納得した」
「もっと言うと~、もしもあなたがフィーネちゃんに相応しくなかったとしたら~、排除していたかも~しれません」
今更、にっこり笑って、そう言われても。
まあ、つまりは、お眼鏡に適ったと言う訳か。
「けど・・! 」
先を言いかけたところで、カタリナ姫の人差し指が、バンドーの唇の前に立てられる。
「判っていますよ、今のところ騎士として身分を拘束したりしませんから・・今までと同じく、ダンジョンに潜っていただいて結構ですし~、ギルド登録も、そのままです~」
ふと、カタリナ姫が右手を半円状に上げる。何もない空間で素早く魔方陣を描くと、そこから一振りの剣を取り出した。
(移送魔法じゃねーか?! )
移送魔法というのは、遠くにある物を近くに引き寄せる高等魔法で、位階魔法には無い。使っているところを見たのも初めて。
「また忘れちゃうところでしたけど~、この剣をあなたに与えます~。」
バンドーの顔が変わる。目を見開き、差し出された剣を取ると両手で握り構える。
「騎士は、任命されたら剣を与えられます~。あなたには、この剣がよいでしょう? 」
「こいつは、親父の? 」
不意に記憶が甦る。バンドーと、そして薄れつつあったケインの記憶が。
「昔、あなたの家から持ちさられた剣ですね~。あなたを調べる中で見つけましたので~」
業物ですよ? と付け加える。
昔、バンドーは使いこなす事が出来なかったが、両手剣『血濡れのテュルフィング』と呼ばれる魔剣であり、血を吸うほど威力を増す他、『戦場の霧』と『同士討ち』のスキルを持つ。正真正銘の業物。だが魔力を必要とする。
後日、その性能をイルミダに鑑定で指摘され、知る事になるのだが。
「それでは、今度こそさよならです~」
久し振りに見た両手剣に目を奪われる中、カタリナの声が薄れた。
あわてて顔をあげるが、もういない。
(いない? )
いないのだ、カタリナが。そしてバンドーは、この移動方法を知っている。
「・・あいつ、レイ教授のオリジナルも使えるのか?! 」
レイ・クリサリス・バーサクが得意としている空間転移魔法を使ったとしか思えない。
彼が王都の離宮にすら自由に入れる所以である。
「・・けど、もうひとつの理由って何だろな・・? 」
今度カタリナに会ったら聞いてみよう。




