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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第四章 ティアとバンドーの出会い
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豹変

ティアはまだ陽が高いうちに神殿への帰途についていた。本当はケイン君ともう少しいろいろ話したかったのだが、当の本人が拗ねてしまって会話にならなかった。


(・・やっぱり子供ね・・。)


ティアが、そう思った事をバンドーが知れば、恐らくますます落ち込んだことだろう。


原因が、魔力が少ないせいで魔法を使えないという事なので、責める訳にもいかない。イルミタニアの住民にとって、それは大問題である事をティアは知っていた。それに、


(呪われています! は言い過ぎだったかなぁ・・。)とも思うティアであった。


とにかく仕方がないので神殿に戻るも、ゼフィリヌス様が見えないので部屋で日記を書きながら、


(カササギちゃんに魔法教えようかしら? )


などと考え、今度コモロの家に行く時は何か魔法書のひとつでも持って行こうと、神殿の書庫を漁りに、自分の部屋を出た時の事だった。


「ティアよ、帰っておったのか。」


部屋の前にゼフィリヌス様がいて、思わずぶつかりそうになりながら歩みを止めると、帰還の挨拶をする。


「ゼフィリヌス様! ただ今、戻りました! 」


「ふむふむ。コモロの家は、どうじゃったかの? 坊主は元気か? 」


「はい、病の方は全く問題がありません! でもゼフィリヌス様、聞いてください。試したんですけど、ケイン君は全然、魔法の才能が無いんですよ? あれじゃ、多分ファイアーボールも・・」


今朝、コモロの家に行って来るように言われた事を思い出し、下を見ながらしゃべっていたティアの言葉が急に止まる。ゼフィリヌス様の手が、ティアの肩を掴んでいた。


「コモロの小僧は魔法も使えなさそうか? 」


「は、はい。魔法球で試してみましたけど、ほとんど魔力を持ってない・・痛いっ」


ティアの肩に置かれたゼフィリヌスの手が、力を増す。


「・・ふむ、そうか。無能の騎士になるなら、それもよいと思っていたが、魔力が皆無では騎士にすら、なれんかもしれんな・・。」


ヒストニア王国の騎士爵は世襲ではない。だが、一応騎士爵位を持つ者の子供は騎士候補として認められ、王国の幼年学校に入学する事が許される。そこで騎士としての適性を認められて初めて、騎士見習いになるのだ。魔法使いでは無い、騎士にも魔力は必要で、基本武技である『スラッシュ』や『シールドチャージ』も魔力を乗せないと発動しない。


「他には、何か変わった事はあったか? 」


相変わらず、肩を強い力で掴まれたままだ。とは言え、まさかゼフィリヌス様を投げ飛ばす訳にもいかない。


「・・はい。女の子が一人、増えていました・・。」


「なんじゃと? はて、コモロの家に他に血縁があったかのう・・。」


「・・召喚者の娘だそうです。預かったとか・・。」


不意にゼフィリヌス様が、手を放した。ティアは思わずほっと息を付く、顔を見たくないのでうつむいたまま。


「ほう・・! 」


「かなりの魔法の才能が、あるみたいです・・。あっ! 」


再び肩を掴まれ、今度は部屋の中に入れられると、いきなり扉を閉められる。


「 『マジックロック』! 」


「えっ?! 」


閉じ込められた? ティアは必死にドアのノブを回そうとするが、反応しない。神殿内のドアは、神殿守護が望めば好きに『マジックロック』の魔法で施錠ができると、聞いた事がある。


「ゼフィリヌス様?! ・・どうして?! 」


「もはやコモロの家には、行かなくてよいぞ。明日の朝まで、そこでおとなしくしておれ・・。」


ティアは懸命に扉を叩くが、ゼフィリヌスの足音は遠ざかっていく。


「ゼフィリヌス様、どうされたのですか?! ここを開けてください、ゼフィリヌス様?! 」


何か、自分がとんでもない事をしてしまったような気がする。


「どうして?! 」


一方、ゼフィリヌスは足早に神殿を出ると、内務省の部隊が駐屯している森の広場へと向かう。


(魔法の才能がある娘とはいい土産よ。ついでに魔力が無い坊主も・・。)


異端認定して、自分の功績に変えてしまおうという計算がある。一度は見逃そうと思ったのだ。何となれば、神殿守護とその任地の王国騎士は相互付与、あるいは相互監視の立場にある。生前のガウガメラは優秀な騎士であったが、優秀すぎるのも困る。ケインが無能な騎士になるのであれば、それもよしと思っていたのであった。


(だが、騎士にもなれぬ情弱となれば、話は別よ・・。)


もしもケインが騎士になれないとあらば、コモロの家は騎士爵剥奪。子供は平民となる。


(そうよの、わしが今夜、直接赴いて”異端認定”してやるのも一興・・。)


特務官のエイリー・ハーフポートに恩を売りつつ、神祇庁での自分の株も上げる。


ククククククッ


自然と笑みが湧いてくる。


(この際じゃ、未亡人の召喚者も・・・・。)


何度か会った事があるマユミの顔を思い浮かべ、彼女をどうするか考える。


(まだ、20歳をいくつか過ぎたばかりのはず。内務省に預けるもよし、異端者の母として責任を追及するもよし・・。)


正に何でもありではないか。ジューダスに来てからこっち、これほど気分が高揚した事はない。


(悪いのう、ガウガメラ・・。死んだお主が悪いのじゃよ・・。)


次々と思い浮かぶ妄想に、ゼフィリヌスの歩みは自然速くなるのであった。















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