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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第二章 暴風姫編
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暴風姫その後

この話は一体、どこに向かっているのか

3年前、フィーネは初めて戦場に立った。9歳の時である。彼女にとってはそこが戦場であるという自覚すらなかったかもしれない。母であるエレイラの母国を相手にしたその戦場で、神盾『ゴッドブレス アラカン』に乗って前に出るや否や、こう叫んだ。


「我が名はフィーネ・エレイラ・バルヴィオーネ、ヒストニア王国第3王女である。控えよ、公国臣民達よ! 」


鎧を着た人の波がざわめいていたのを覚えている。口上は、父王ドッガーズに教えられたものだった。


「退いて直れ。我が力を知れ! 」

『疾風迅雷』が発動し、その力はレニオール公国前衛のど真ん中に直撃した。


それを合図に開始されたヒストニア王国とレニオール公国との会戦は、一方的だった。


勝利し、凱旋したフィーネ姫は『嘆きの塔』に籠る母、エレイラに会いに行った。ほめてもらうために。

父王であるドッガーズは


「行っても会えんぞ? 」 そう言っていたのだが。


意外な事にエレイラは閉じこもっていた『嘆きの塔』から姿を現すと、フィーネ姫を抱きしめた。


「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。」


母上が泣いている・・。どうして?




(・・・・あの時、母上はどうして私にあやまったのだろう・・。)


眼下にはデスパレスの冒険者、バンドーがいる。いけない、どうしてあの時の事を、思い出してしまったのか。

私は一体、こんなところで何をしているのだろう。

半日かけて王都からここまで飛んで来たせいで、少しは冷静になっている自分がある。

けれど、やらなければ・・


「バンドー様、見つけました! 私と死んでください! 」


バンドーは滞空しているフィーネ姫を認めるとカスミに向かって右手を出す。


「カスミ、そこの籠手を投げてくれ。」


受け取った籠手を右手にはめる。ティアが王都の道場で手に入れてきた『ケーリュケイオン』。2匹の蛇が絡みつくように肘に付いている。


神盾『アラカン』は大きく揺れると、斜めになりながら滑空してくる。フィーネ姫の声が届く


「 『疾風迅雷』! 」


フィーネ姫の右腕が青く渦巻き、放出される指向性を持つ稲妻と暴風。だがそれはバンドーの右に大きく外れて抜けた。走り去った先にある庭を囲う塀の一部が崩れ落ちる。


(あいつ、泣いてんのか? )


「・・バンドー様、さすがです! よく避けましたね! 」


違う、最初から外れていた。


「 『疾風迅雷』! 」


今度は左に抜ける。庭の芝をえぐり、同じく塀に着弾する。


「フィーネ姫! 俺に当てろ、このくそ莫迦! 」


フィーネは戸惑っていた。当たらない。当てたくないのか?けれど当てなきゃ、それは判っている。バンドーの声を聞いて、迷いを断ち切るかのように再度発動


「 『疾風迅雷』!! 」


直撃。だが魔法は霧散した。2度3度、だが変わらない。


「・・どうして。」


考えてみれば当たり前かもしれない。この男は『金剛の間』に入り、私を連れ出したのだ。『暴風』も『疾風迅雷』も効かない? どうしたら


「お前、俺がキスした事、怒ってんだろ? 悪かったよ、仕方なかったんだ。」


途端、フィーネ姫の瞳に深紅がよみがえる。


仕方ない? 悪かった? そんな言葉で済ます訳にはいかない。


フィーネは一旦、距離をとると低空から侵入し、スキルを発動させる。


「アラカン! 『シールドチャージ』! 」


神盾『アラカン』に魔力を込め、全体重を乗せて接近して、盾をもってかちあげる。バンドーはわずかに避けそこなって吹き飛ばされた。『硬化』を発動させているのでダメージはたいしたことないのだが、


「 『シールドチャージ』だと?! ふざけやがって! 」


『シールドチャージ』とは通常、盾戦士が前衛の鍔迫つばぜり合いで後続に血路を繋げるために、盾に魔力を込めて全体重を載せて敵をかちあげるスキルだ。フィーネ姫の場合、魔力を盾に込めて全体重で相手をかちあげ・・・・あれ?


「クソ、盾の使い方は絶対ぇ間違ってるが、だいたい合ってやがる。ふざけやがって・・」


凄まじいスピードで通り過ぎたフィーネ姫は、180度ターンすると再び襲い掛かってくる。


「魔法使いのくせに『シールドチャージ』とはふざけやがって! 」


「バンドー様、私は騎士です! いきますよ?! 」


フィーネ姫を乗せた『アラカン』のスピードが上がる。


「アラカン、『シールドチャージ』! 『疾風迅雷』! 」


『シールドチャージ』で接近戦を挑み、近づいたうえでの『疾風迅雷』。合わせ技としてはこれほどのものはないのだが、バンドーには『疾風迅雷』は効かない。円の動きで『シールドチャージ』を避け、繰り出された右手を取ると巻き込んで投げる。神盾『アラカン』の持ち手を放してしまうフィーネ。


二人は台地に転がった。


「痛っつう、捕まえたぜフィーネ姫! お仕置きだ! ・・あっ? 」


フィーネ姫の様子がおかしい。痙攣している。


「あっあっ?! 」


こいつ、『魔力枯渇』を起こしてやがる。


風の王族魔法は燃費が悪い。考えてみれば、バンドーがフィーネ姫から魔力を抜いてから二日しか経っていない。王都から『アラカン』で飛んできて、さらに王族魔法を連発したので限界が来たのだろう。バンドーはフィーネ姫を抱き上げる。


「悪かったよ。しばらく寝てろ。」



________________________________________________



親愛なるドッガーズへ 


不詳の弟子バンドーを送る。彼は必ずやフィーネ姫の危機を救ってくれるであろう。

フィーネ姫の扱いには苦労しておるようじゃの。よかったら姫を3~4年、ワシの元に預けんか? 人形相手に魔力放出では姫も面白くなかろう。幸いデスパレスには迷宮もある。優秀な魔術師もたくさんおるので位階魔法の修行にも最適じゃ。


追伸 近々うかがうのでうまい酒でも用意しとけ。   


                       レイ・クリサリス・バーサク





「ふざけおって! 」


ヒストニア王国国王ドッガーズは、そう叫ぶなり手紙を机に投げ出す。王宮ハイナスパレスの私的な一間。


彼の執務室でもある。


「とは言え、満更でもなかろう? 」


不意に声がしたかと思うと、不可視の幕を取り去ってドッガーズの傍らにレイが現れた。


「師父よ。相変わらずですな。」


デスパレスのギルドマスターでもあるレイ・クリサリス・バーサクの御年は300歳を軽く超える。ヒストニア王国でまだ宮廷魔術師筆頭を務めていた頃といえば、ドッガーズの少年時代も知っている。


「お主、知っておるか? 巷ではお主がフィーネ姫を亡き者にしたがっているという噂も聞くぞい。」


「・・内務省の喧伝です。暴風騎士団縮小、金剛の間の設置、今思えばワシはのせられていた。エイリー伯の結婚うかがいで、ようやく目が覚めた思いがしますわい。」


「ふむ、判っておるのならこれ以上、何も言わんわい。」


「師父よ、戻ってはくださらんか? 」


「ワシは今が人生最高じゃ。毎日が楽しくてたまらんわい。」


ホホホ、しばらく見ておるので、何か用があったら呼ぶがよい。そう言い捨てるとレイは消える。

ドッガーズは頭を振り、ため息をつくと重い腰を上げる。謁見要請があるのだ。エイリー伯との。



________________________________________________


フィーネ姫が王宮から消えてから一日後。エイリー伯は焦っていた。彼の計算では、フィーネ姫は取引を受けるか、受けないまでもドッガーズに弾劾されて『金剛の間』に再び閉じ込められる筈だった。そうなれば、そうなったで、


「姫の唇が奪われようが、私の意志はいささかも変わりません。」


とか何とか言って、フィーネ姫を手に入れるつもりだったのである。


それはそうだろう。まさか12歳の姫君が無思慮に王国の神宝を持ち出して、ハイナスケインから7日の行程にあるデスパレスまで飛んでいくとは思いもしない。


「デスパレスの冒険者に会いに行ったのか? 」


そこまでは考えても、そこからの想像の矛先は、フィーネ姫とは真逆であった。


(全てを捨てて、デスパレスの冒険者の元に?!! )


冗談ではない。大金をかけてつくった『金剛の間』の事もある。この男にとって自分の計画が狂わされる事は何より腹立たしい。そして、姫の姿がデスパレスで確認されたとの情報もエイリー伯を焦らせていた。


「・・・くそ、だが私にはまだアレがある。」


言わずと知れたフィーネ姫の記録映像。あれを陛下に見せてデスパレスの冒険者を弾劾し、陛下から兵を借りる。そしてデスパレスの冒険者を討ち、フィーネ姫を取り戻すのだ。既に陛下との謁見の約束は取り付けてある。


プォー!


謁見の間が開かれ、来場者に合わせて角笛が鳴る。


「陛下! 重大なお話があります! どうぞお人払いを! 」


件の記録装置を持ち出し、「恐れながら! 」と付け加えると陛下に映像を披露する。


もう人払いは済ませてある。


フィーネ姫が長く口付けされるシーンで、さすがにドッガーズは息を飲んだ。太い眉毛を震わせ、怒髪天を突くばかりとは、この事か。


「許せぬ!!! 」


「恐れながら陛下! この事は、私以外誰も知りませぬ。早急にデスパレスに兵を派遣し、この無礼な冒険者を討ち取る事こそが治世の要かと・・」


ドッガーズはまだ怒りに塗れている。


「そうか! この事は、お主以外、知らぬのだな?! 」


「ははっ! 」


「よくぞ申し出た! 万金の褒美をくれてやろう!!! 」


ザクーッ! 袈裟懸け一刀である。両手持ちの大刀がうなり、エイリー伯は半身を失くし、一瞬で絶命した。


「レ~イ!!!! 」


「ここじゃ。」


玉座のすぐ後ろから声がする。ドッガーズは振り返るなり顔をゆがませる。


「貴様、知っとったのか?! フィーネが、フィーネがあのような~!! 」


「落ち着け、ドッガーズ。わしもびっくりじゃ。」


ドッガーズは両手を胸まで上げると震わせる。


「許せぬ~! 今すぐ、デスパレスに派兵じゃ~! 」


「落ち着けと言うに、のう。バンドーは不詳の弟子じゃが毎月拳大の魔石を4個も5個も取ってきおるし才能もある。何よりまだ16歳と若い。それにあの映像をみたら判るじゃろ? 」


ドッガーズはまだ唸り声をあげている。レイの方に顔を向けると情けなく歪めた。


「ぬううううう、『絶対魔法防御』に、あれは『魔力吸収』か? フィーネの暴走を止めたのは。じゃが、じゃが~! 」


「取引じゃ! 」


レイの言葉にドッガーズは動きを止める。


「取引じゃ。お主、まだエレイラと喧嘩しとるんじゃろ? ワシが仲に入って取り持ってやろうではないか。」


ドッガーズの後妻、フィーネ姫の母親であるエレイラは、3年前の公国との戦い以後、公国が属国となってからは場所を変えて離宮に引きこもっている。


「まあ、任せるがよい。ワシにしかできん。吉報を待てよ・・。」


レイの姿が消える。


「ぬううう、あやつ王宮を我が物にしよってからに。」


思わず悪態をつくドッガーズだったが、先程までの怒りは知らぬうちに消えていたのであった。








セリフ考えるのに予想以上に時間を食って、仕事中に考えたプロット全部書けませんでした。

申し訳ねぇ。

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