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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第二章 暴風姫編
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金剛の間にて

えー、今回、やや暴力的なシーンがあります。苦手な方はバックをお勧めします。


『金剛の間』は王宮の地下にあった。ガイナスさんは知っていたけど、アメリアさんは知らなかったらしい。


「ここ『金剛の間』は言うなればフィーネ様を監禁しているに等しい。そう公にはできんよ。」


まあ、そうだろうな。しかもこれは何だ?


「ガイナスさん、これ入り口が無いんじゃね? 」


地下の大広間の真ん中に円形の壁がぐるっと立っている。どうやらこの内側が『金剛の間』らしいのだが、壁に沿って移動していっても扉が見当たらない。


「ここじゃよ、ここ。」


ガイナスさんが指差したのは円形の魔法陣だった。どこかで見た事がある。


「あっこれ、台地の下から上に昇る時のゲートじゃね? 」


「そうじゃ、規模は小さいがの。」


つまりあれか、この円形の壁の内側にはゲート魔法でしか入れないって事か?


「戻る時はどうするんだ? 俺、魔法陣の発動のさせ方なんて知らないぞ? 」


「時限式じゃ。そもそもお主の『絶対魔法防御』とて時限式じゃろ? 中に入って10分後に自動的に帰りのゲートが発動する事になっとる。中の魔法陣が光り出して、しばらくしたらゲート魔法が発動するので注意するがよい。」


なるほど、そう言う事か。まあでも俺のは『魔力分解』だから発動は自由なんだけどな。


実はバンドーの持つスキル『魔力分解』は当初、無秩序に発動していた。自分自身で発動をコントロールできるようになったのは最近の事で、ティアと様々な実験を繰り返して、スキルの入り切りの仕方を覚えたのだ。


中には他人に言えないような事もティアで試してみたりした。


「よし、判った。薬の準備はできてるし、防具もいらねぇ。ゼノ式は服でも発動するからな。」


フィーネ姫に薬を飲ませる事を考えれば、手指の自由の確保の方が必要だろう。籠手も脛当てもそれを奪う可能性がある。そう言うと、バンドーは魔法陣の中央に立つ。


金剛の間を管理している内務省の魔法使いが呪文を詠唱し始めた。

魔法陣が徐々に光り始め、バンドーの身体を青白い炎が包みだす。これも台地の上に昇った時と一緒だ。視界が揺れ、一瞬の後、転送が完了する。


中は薄暗い。壁に嵌め込まれた魔石がわずかに発光している。そして何よりうるさかった。


ヴヴヴヴヴビュ 

ドーン! 

ヒュッヒュッヒュ 

キンキン 


そんな感じの音達が混ざり合ってバンドーの耳に届く。


暴風はもとより真空の刃が、壁に嵌め込まれている魔石に当たる音。当たる度に壁に嵌め込まれた魔石が明滅する。そして時折発生する稲妻。前世で昔見た事があるプラズマ発生器の出す光のようなものが断続的に出たかと思うと、消える。


「・・こいつは凄ぇ・・。」


魔法攻撃に曝されさえしなければ、それは幻想的な風景であったかもしれない。スキル持ちのバンドーにしか、この光景を堪能する事はできないだろう。


無秩序に発生し続ける王族の風魔法はバンドーの身体に当たると分解され、霧散するのだが一向におさまる気配がない。次から次へと発生する、その元凶は円形の間の中央にあった。


「・・これは、浮かんでいるのか? 」


小柄な、身長にして140センチもない。美しい白銀を思わせるブロンド。フィーネ姫が仰向けに身を横たえた状態で浮かび上がっている。高さは床からおよそ1メートルくらい。

時折り、わずかに上下を繰り返している。そして、身体全体が光っている。


バンドーは近づくと、フィーネ姫の肩に触れてみた。普通に触れるようだが、触れた部分の光がわずかに薄れる。


「これも風魔法か? 」


体内から放出し続けているので、手を放すと光は元に戻る。どうやら風魔法で光っているようだ。


「だ・・れ・・? 」


フィーネ姫がバンドーに気付いた。小さな胸が呼吸で激しく上下している。額には汗。汗は額から流れ落ちると風魔法につかまり消える。どうやらフィーネ姫自体の身体は風魔法から守られているようだ。


(それはそうだろうな。でないと魔法ぶっぱなせねぇ・・。)


「だ・・れ・・? 」


フィーネ姫が又つぶやいた。薄赤い色をした瞳を閉じたり、薄っすら開けたりしている。


(視界が揺らぐんだよな・・。)


昔、自分がかかった事を思い出す。だが、感傷にひたっている暇はない。与えられた時間には制限があるのだ。


「フィーネ姫、流行り病に効く薬を預かってきたぜ。今、飲ませてやるからな。」


言うなり、バンドーは懐からガイナスさんにもらった、流行り病に効く薬の入ったビンを取り出す。


だがその瞬間に細長いビンの底が弾けて薬が巻き散らかされた。青い水滴の一部がフィーネ姫の頬に当たる。


「なっ?! 」


バンドーのスキル『魔力分解』の効果範囲はバンドーの身体から一定範囲。ビンの底がうかつにも、その範囲外に出てしまったために薬は無残に巻き散らかされたのだ。


(・・やっちまった!! ・・どうする? )


時間はまだある。だが、飲ませる薬がなければどうしようもない。


(くっ!! )


バンドーは浮かび上がるフィーネ姫の肩に手を回し、フィーネ姫の頬に手を当てると姫の唇に自分の唇を当てた。


「・・・んんっ?! 」


くぐもった声が姫の口から洩れるが、そのまま舌を入れる。そして『魔力分解』発動。


「・・んんっ~?! 」


触るだけでは駄目だが、体内からなら体内にある魔力も分解できる。少なくともティアといろいろ試した時は、そうだった。


(面倒くせぇ、姫の体内の魔力を全部分解してやる!)


20秒・30秒・40秒。徐々に姫の身体が床に降りていく。

やがてその身体は光を失い、バンドーが唇を放す頃には暴風は止んでいた。


「・・・やっちまったなー。」


小柄な姫の身体は今、バンドーの両腕に抱きかかえられている。魔力枯渇を起こし、何事かをつぶやいているようだ。


「・・これ・・前にも・・・・」


そんなフィーネ姫を抱きかかえながら、バンドーもまたつぶやいていた。


「・・やっちまったなー。」


ゲートの魔法陣が輝き始めている。バンドーは大きく息を吐きだすとフィーネ姫を両腕でお姫さま抱っこしながら魔法陣へと移動した。やがて二人は青白い炎に包まれる。視界が揺らぐ中、バンドーは3度目のため息をつくのであった。


『金剛の間』の外側にある魔法陣に、フィーネ姫を抱きかかえたバンドーが現れる。


「戻ったか、バンドー殿! ひ、姫?! 」


そりゃ驚くよな。俺も自分でやった事にびっくりだからな。バンドーは口をぱくぱくさせて姫を指差すガイナスさんに姫を渡す。


「魔力枯渇を起こしているから、すぐに回復魔法を当ててやってくれ。」


「何と?! 魔力暴走は、もう収まっておったのか?! 」


「ほら、ガイナスさん、急いで! 」


ガイナスさんもそうだが、『金剛の間』を管理しているらしい内務省の魔法使いも目を向いて口をぱくぱくさせている。


「馬鹿な・・? 先程確認した時は・・? 」


確認? どうやって確認するんだ? まあいい。今はそれより王宮を出る事の方が先だろう。幸いなことに『金剛の間』の内部は窓もないので外からは見えない。俺がした事は誰にも判らないだろう。フィーネ姫も流行り病で意識朦朧としていたからな。


「アメリアさん、俺帰るわ。」


バンドーは瞬速で右手を挙げるとアメリアさんに確認する。


「いいよね? 」


「あっああ、そうだな。姫様の魔力暴走が収まった以上、あとはこちらで充分だ。聞きたい事は山ほどあるが、バンドーとの約束もある。台地から降りたら市街側のゲート管理者にプレートを返しておいてくれ。」


「それじゃあ。悪いな。」


王宮を出よう、すぐ出よう。ダッシュで出てしまいたい。さよならフィーネ姫、さよならガイナスさん、アメリアさんも、短い間だったけど楽しかったよ。あっ、リンダの相手をできないけど、よろしく言っといてくれ。


「それじゃあ! 」


王宮を出て一人になると、バンドーは文字通りダッシュで、市街地行きの魔法陣に向かうのであった。








口移しも考えたんですが、バンドーの性格を考えたら、こういうのになってしまいました。

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