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ドジっ娘OL 第一話。

ドジで不器用なOL、春野ひな。

これは、ドジで不器用なあなたに贈る物語ーー

 これはドジで不器用な私の物語————

 

冬の終わりのつくし野。

朝の通勤時間。


「ふぁぁぁ、遅刻するーっ。頑張れ、私ーっ。」

 

白い息を吐き、必死に走る20代前半の女性。

淡いブルーのダッフルコートに身を包んだ春野ひな。

春一番の風が吹く。

春の訪れを告げる暖かい風が、ひなの長めのボブから跳ねるクセ毛を揺らした。


「ああっ、もう、このクセ毛がぁ。」

 

クセ毛ならぬアホ毛に気をとられ、足を止めるひな。

そこに1台の車が迫る。

車に気づき、ひなが思わず目を閉じる。


「お父さん、お母さん、ごめんなさい。春野ひな、ここまでみたいです。」


「危ない!!」


ひなをかばうように、20代後半の男性が飛び出した。

車を避けようと、ひなと男性が道路に倒れ込む。

キキィーッ!!という音と共に、2人の前で止まる車。

目を閉じていたひなが、ゆっくりと目を開けると、優しそうな短髪の男性の顔があった。

ひなの頬がピンク色に染まる。


「大丈夫?」


ニコリと微笑み、優しい声でひなに話しかける男性。

ネイビーのステンカラーコートを着た男性が立ち上がると、右手を伸ばし、ひなを助け起こした。


「あっ、ありがとうございます。」


ひなは立ち上がると、照れくさそうにお辞儀をし、その場を立ち去ろうとする男性に声をかけた。


「あっ、あの……お名前は?」


振り返ると、苦笑しながら名乗る男性。


「ああ、青木、青木純。」


左手を上げ、爽やかにその場を去ると、バスに乗り込む青木。

少し離れたところから発進するバスを見て、ひなが気付く。


「ああっ……バス……。また、遅刻だぁ……。」


慌ててバスを追うも時すでに遅し。

桜の蕾が膨らみ始めたバス停で、ひなはあちゃーとおでこに手を当て、1人立ち尽くした。



渋谷にある虹色企画、企画営業一課。


「春野君!!君は、いつになったら遅刻しなくなるんだね。」


中年の男性上司にガミガミと怒られるひな。

ひなはうつむき、1人心の中で呟いた。


(いつもだ……いつも私は……。)

 


————ひなは10年前の子供時代を思い出した。


小さなひなとひなの母親。

そして、中年の男性の医師がいる。


「少し落ち着きがありませんね。まぁ、特に心配することはないでしょう。」


医師は母親に軽い口調で告げた————




変わって現代、虹色企画内のカフェテリア。

ランチのサラダを食べながら、30代前半の女性がケラケラと笑う。

首にかけられた社員証には神崎恵とある。

神崎はうなだれるひなを見ると、セミロングの髪をかき上げ、微笑みながら話しかけた。


「で、遅刻したわけだ。」


そう言うと、神崎は持っていたフォークをサラダボウルに置き、席を立ち上がった。

颯爽とネイビーのチェスターコートを羽織ると、ひなに声をかける神崎。


「さぁ、営業に行くわよ春野。」


「あ、はい!!神崎先輩!!」


神崎を見て、元気に返事するひな。

カツカツとヒールを鳴らしながら歩く神崎の後をひなが追いかける。



営業先の1つである山吹商事。

その近くにある原宿のカフェで、クライアントを待つ神崎とひな。

2人の前に歩いて来る青木を見つけると、ひなのアホ毛がピョンと立った。


「あーっ!!青木さん!!」


勢いよく席を立ち、青木を指さすひな。

青木がひなを見て苦笑する。

神崎が立ち上がり、頭を下げて挨拶すると、右側に立つひなに小声で話しかけた。

 

「春野、クライアントの青木さんと知り合いなの?」

 

クライアントが青木達だったことに気づき、思わず下を向くひな。

照れくさいのか頬がピンク色に染まっている。

青木の左にいる40代後半の男性が、青木に目をやり話しかけた。


「青木君。どうした?知り合いか?」


「いやほら熊谷部長。例の朝の子ですよ。」


青木が小声で答える。

熊谷がからかうように青木に話しかけた。


「なかなか、かわいい子じゃないか。」


ひなの中の小さなひなが呟いた。


(はぁ、青木さんがクライアントだったなんて……恥ずかしすぎる……。)



席に座り、コーヒーを前に商談を始める4人。


「で、例の件ですが。」


神崎がコーヒーを飲む熊谷に尋ねた。


「ああ、例の件なら、高評価だよ。」


「ありがとうございます。」


神崎は熊谷に丁寧に頭を下げた。



ひなと神崎が裏原宿の道を歩く。


ガシャーン!!


神崎の後ろから音がした。

嫌な予感を胸に神崎が振り向くと、そこには自転車に引っかかり、転倒しているひながいる。

神崎は軽くため息をつくと、やれやれと空を見上げた。

ひなに右手を差し出すと、優しくひなに声をかける神崎。


「行くわよ、ドジっ娘!!」


「あっ、はいっ!!神崎先輩!!」


うなだれていたアホ毛がピョンと立つ。

ひなは照れながらも、元気いっぱいに神崎に笑い返した。


第一話。 終わり。

読んで頂きありがとうございます。

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