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強い風に髪を乱されながら、私とロディさんは馬車に乗り込んだ。
前髪を押さえながら、私は膝の上に順番表を広げた。
……あれ。
視線が、そこで一度止まった。昨日までと、並びが違う。
日付も、地区も、大きく変わったわけじゃない。
それでも、どこかが、ずれている気がした。
私は順番表を指でなぞり、上から下へ、もう一度確認する。
祈りの数が増えたわけでもない。
空白が増えたようにも見えない。
「……調整、かな」
王族や貴族の予定が動けば、順番が変わることもある。急ぎの案件が入ることも、今までもあった。
そういうものだ。
私はそう結論づけて、ページを閉じた。
「今日は、フォルサーニからですね」
いつものように、独り言に近い調子で言う。
向かいに座るロディさんは、すぐには返事をしなかった。
しばらくしてから、低い声で言う。
「……順番が、変わっています」
「はい。朝、見ました」
私は特に気にせず答えた。
「よくあることですよね。調整でしょう」
そう言うと、ロディさんの視線が、私ではなく順番表に落ちる。
「……理由を、聞かれましたか」
少しだけ、間があった。
いつもより、言葉が多い。
「いえ。必要ないと思ったので」
事実だった。
制度の中で動いている以上、理由は後から説明される。
もしくは、説明されなくても問題ない。
そういうものだと、私は思っている。
「聖女様は……」
ロディさんは、そこで一度言葉を切った。
馬車の揺れが、妙に大きく感じる。
「困っている人が、見えなくなることは、ありませんか」
予想していなかった言葉だった。
私は瞬きをしてから、首を傾げる。
「順番表に、書いてありますよ」
誰が、いつ、どこで、祈りを必要としているか。
それを示すためのものだ。
ロディさんは、すぐには答えなかった。
「……そうですね」
そう言って、視線を逸らす。
それ以上、何も言わなかった。
でも。
その沈黙が、なぜか、胸の奥に残った。




