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魔王♂に転生したけど、勇者パーティの僧侶に恋しています。  作者: アオ
第1章:終わりと始まり

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23/30

ep22:幹部、ここに揃う。



────……と、いうことでなんやかんやと会議の準備が進み始めた。


翌朝、私の部屋に「おはようございます」と入ってきたルシファーよりも先に、メリノがモーニングティーを淹れている場面に出くわし、地に這いつくばって悔しがっている姿はちょっと面白かった。


「それで、事情を教えていただけるんですよね?

魔王様(マイロード)

「え、事情も何も……。

新しく配下にした子たちだよ」

「な……っ、なぜ……!?

私だけでは不満でしたか!?」


お、おう……。なんとも美人の顔が歪むのは中々に怖いな……?


「ふ、不満なんかじゃないよ!

手が足りなかったのは目に見えてたことだし。

会議まで時間がないのは本当のことでしょう?」

「ぐっ、……しかし……」


珍しく食い下がるルシファーに、そろそろ魔王の威厳とやらを見せてやろう。

と、《魔王覇気》をほんの少し出しながら、


「────私の決定に不満が?」


意識して低い声を、腹の底から掬い上げるようにして出す。

自分のものとは思えぬ地響きへと変わった声と圧に、ルシファーも苦悶の表情を滲ませる。


「いえ、……申し訳ありませんでした」


悔しさを残しながらも、ルシファーが私の決定に従わないはずがない。

ルシファーは深く頭を垂れたまま動かない。

その肩が僅かに震えているのは、恐怖からか、それとも悔しさからか。


まあ、たまにはちゃんと魔王らしくしないとね。


さて、ルシファーにはもちろんだけれど、バアル達他の幹部たちにもきちんと紹介しなくちゃ。

それに二日後の会議に向けて全員周知しておきたい内容もあるし、一度内輪で会議をしよう。

そう深く考えず、ノリに近い感じで決めた。


「……ということで、ルシファー。

会議をするわよ」

「会議、ですか……?」

「そう。さっきみたいにいきなり私の周囲に人が増えて居たらびっくりするでしょう。

それに、狂暴化した熊についてモルガントと調べたことも共有したい。

二日後の会議で話し合う内容を、今のうちに全員に共有したいんだよね」


そこまで伝えると、ルシファーが深く頷いた。


「そうですね、では必要なものを作成してまいります」

「ありがとう、よろしく」


そう伝えるとルシファーは光の速さで執務室から飛び出していった。


「さて、メリノは会議前に全員分の紅茶とつまめるお菓子の用意を。

ヴァレーは幹部に午後一番に会議をする旨を伝えてきてくれる?

サフォークはルシファーのサポート。全員よろしく」

「はい!」


指示を受け、私の周りの侍女たちもそれぞれ動き出した。

私は執務机の上の減らない書類にため息を吐きながら、会議で必要になりそうな、モルガントから上がっていた熊の研究報告書から目を通し始めた。




***




「────では、これより会議を始めます」


そう切り出したのはルシファーである。どうやら議長的な立場らしい。

……うん、私が決めたわけではないよ。

勝手にそうなってた。

ていうか手元の資料何、これ。厚さ十センチはあるんじゃない?

こわ。この書類を数時間で用意するルシファーが怖いよ……。


目の前には、よく見る長方形の重厚感ある机に、幹部たちが座る。

所謂上座のようなところには私が、ルシファーは私の隣に立っている。

手前からバアル、モルガント、レイヴンと向かい合いながら順々に並び、私から見て一番奥にジークが身を縮こまらせながら座っていた。


「まず、新たに幹部になった者を紹介します。

ダリオン様、よろしいでしょうか」


ルシファーに促され、小さく頷く。

それと同時にジークが立ち上がり、私の後ろに侍女三人が立った。


「まず、見張り役を統括してくれていた中級吸血族(ドレイン)だけど、種族も違う、直属の配下でもない者を使役し纏め上げる能力を買い、幹部へと私が招き入れた」

「────この度、魔王ダリオン様より“ジーク”の名を賜ったその折、中級吸血族(ドレイン)から上級吸血族(シャドウ)へと進化を果たしました。身命を賭して魔王様の手足となり働く所存にございます」


えっ、ジーク進化したの!?

なんて驚いたけど表情一つ変えなかった私、えらい~!


この場にいる誰も、その顔色を変えない。

おそらく、ジークが上級吸血族(シャドウ)であることを《鑑定》やそれに類似したスキルで見抜いていたのだろう。


レイヴンとバアルが見張り役をジークに託したときには中級吸血族(ドレイン)だったけれど、おそらく進化するだけの器量であることを見抜いていたのかもしれない。


……けれど。それはそれ、これはこれ。

気を取り直すように私は軽く咳払いをし、バアルとレイヴンを睨む。


「ジークに仕事を負わせていた、バアルとレイヴンにはあとで話があります」


無意識に《魔王覇気》が滲んでしまっていたようで、バアルとレイヴンは顔色を悪くし冷や汗をかいていた。

全く、私に内緒であれこれやるからだよ。

少しはお灸を据えないとね。


さて次は、と軽く振り向いて侍女たちを見遣る。


「私の後ろに控えるのは、新に私の侍女へと起用した羊魔族(シープ)たち」


そういうと、メリノが一歩前に出た。


「メリノの名を賜り、羊魔族(シープ)から羊人魔族(シェパード)へと進化いたしました」

「右に同じく、ヴァレーの名を賜りました」

「右に同じく、サフォークの名を賜りました。わたくし達も身命賭してお仕えさせていただきます」


この三人の進化は目に見えた進化なのですぐに気が付いた。

まず三人とも羊顔ではなく、人の顔になっていたのだ。

人面に渦を巻くような角を持つ、人型の魔物────というより、魔人に近い形になっていた。

髪の毛にそれぞれ羊魔族(シープ)の頃の名残があり、メリノは綺麗な白銀のストレート。

ヴァレーは癖毛というより、天然パーマでふわふわした髪を後ろで一つにまとめている。

サフォークは美人!もうこの一言につきる。羊魔族(シープ)の頃から端麗な顔立ちだとは思っていたけれど、人間になったら目がつぶれてしまうほどの黒髪美女。


ルシファーで慣れていたと思ったのだけれど、女性の美人はまた一味違いますね!

なんて、オッサンくさいことを考えてしまう。


「メリノ、ヴァレー、サフォークの三人には私の周りの雑事を中心に、それぞれの幹部のサポートもしてもらう予定だよ。ジークは見張りや警備、改め、“警備巡回部隊(パトロール)”の部隊長として働いてもらいたい」

「は、警備巡回部隊(パトロール)の任、謹んで拝命いたします」


ジークが右手で拳を作り、左手の平に押し当てる形で礼をする。


「では次に────」


これで幹部の紹介を終えたわけで、ルシファーとしても次の議題に移ろうとするのは正しい判断なのだが、私が手を挙げルシファーを制止した。


今から口にしようとしている言葉は、女子高生だったころにはあり得ない言葉。

というか、ギリギリ中二病患者だった時なら言っていたかもしれない。

今世でこんなに緊張しているのは初めてだ。


私は深呼吸を一つして、威厳ある言葉で話始める。


「────幹部も増え、これから各種族を迎え入れ、我が国の幹部たちをお披露目することになる。

そこで、分かりやすく幹部たちそれぞれに“卿”の名と“色”を授ける」


この場にいる人数は少ないのに、ざわっと一瞬空気が揺れた。


「異論のある人はいる?」


その問いかけに全員が立ち上がり頭を下げる。


「異論など、とんでもございません」


代表するようにルシファーが言うのも見て、少し安心した。


「ではまずルシファーから────……」


私は一人ずつ、“卿”の名と“色”を授ける。


ルシファーは、《蒼》を冠する、“蒼の宰相卿(サファイア)


バアルは、《翠》を冠する、“翠玉の将軍卿(エメラルド)


モルガントは、《紫》を冠する、“紫晶の魔導卿(アメジスト)


レイヴンは、《黒》を冠する、“黒曜の諜報卿(オブシディアン)


ジークは、《金》を冠する、“金耀の衛士卿(シトリン)


そして新たに侍女となった、メリノ、ヴァレー、サフォークには《白》を冠する、“白花の侍女衆(ブランシュ)”の名を授けた。


「────各々、私の直属の配下であり幹部であることを改めて魂に刻み、その名に恥じぬよう励め」


魔王っぽく締めくくると、幹部たちは一斉に胸へ拳を当てた。


「はっ!」


重なる声が会議室に響く。

うーん、気持ちが良い。


魔王っぽさも板についてきたんじゃない?

と、ちょっぴりニヤニヤしてしまうが、魔王の表情筋は正しく動き、「にやけ顔」ではなく「王の微笑」にしてくれる。本当、イケメンで良かった。


こうして、新たな幹部、新たな名称と共に私たちは“国”として、歩み始めた。


これで第1章終了です。

ようやく物語のベースができました。

次からはノエルくんも出していきたいです。

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