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16.森人とふたつの姫隊

 広間の封鎖を終え、ゴッチ砦に帰還した姫隊は、休む暇を惜しんでラフィエールに向かった。

 ジョットレイをゴッチに残し、キューガン伯爵軍を迎える役を振っている。キューガン軍にはフローラとトニオの娘、ジョットレイの婚約者アントニアが戦姫として参戦する。

 アントニアには隊を指揮するほどの才はなかったが、魔晶石鉱山の元カンデラ公邸に住んでいるエイプリルに願って、侍女団を率いる戦姫として訓練を受けた。

 ケイトリンが皇太子妃となった後は、竜騎兵団の姫騎士として仕える。


「エイプリル、無事な顔を見せてくれてわたくしは本当に・・・」

「ミリアム、筆頭侍女でしょう、泣くなんて」

「だめです、わたくしも年を取りましたわ」

「同じ年でしょ、ばかね」

「ええ、ええ、もうばかでよろしいですわ」

「そんなことで大丈夫なの?フレデリカが出るのよ?」

「いえ、もう駄目です。熱を出して寝込みます。

 わたくしはただの軟弱な王都貴族です。フィリップス殿下をあざ笑ったのに、わたくしとて同じです」

「そうね、みんな同じよ。誰でも怖い、子どもについては特にね。

 ミリアム、わたくしたちが17歳だった時のことを思い出しましょうよ、ね。

 あなたは王宮の小広間で王子殿下に言ったではありませんか、殿下、意味が分かりません、でしたよ。誰も言えないことでした」

 ミリアムの顔が緩む。

「そうでしたわね、誰もが一度言ってやりたかったのに、あまりにも不敬で誰も言えなかったのよね、懐かしいわ」

「そうよね、あれはよかったわよ、本当に。

 その王子殿下も姫君をお連れになって砦を占拠しておられます。宰相の娘が自分の姫隊を率いて父を助けに行くのです、背を押しておやりなさい、ね、ミリアム」

 ミリアムはエイプリルに縋り付いて涙を戦衣に染み込ませながらしばらくじっとしていたが、やがて気を取り直して顔を上げた。

「エイプリル、わたくしは行けません。フレデリカをよろしく頼むとも言えません。

 ただここで信じて待ちます。必ず、かならずもう一度会えますよね、お願いです」

「ミリアム、ばかね、次はフレデリックとフレデリカのところまであなたを護衛していくわよ、約束するわ」

「エイプリル」

「ミッテルに王宮儀礼を叩き込むのよ、きっとアウラステラ姫と気が合うわよ」

「そうね、エイプリル、わたくし頑張って歩きますわ」

「馬車を用意するわよ、とりあえず馬車の通れる道からね」

 うふふ、と、ミリアムから半泣きの籠った笑いが漏れた。



「キャメロン、森人と連絡は取れましたか」

「マイ・レイディ、迎えが来ております」

「ありがとう、こちらにご案内して」

「はい」


 森人は、古い血筋の一族で、この大陸の山脈を移動しながら数千年を生きてきた。親子だけの小さなグループで移動し、気が合うグループに出会うとしばらくの間一緒に子育てをするが、子どもが自立するともとの夫婦だけに戻る。幼馴染の友や親を探してまた小さなグループを作ることもある。背が高く、美しい肢体をしている人々で、木こりや狩人の絶対的な信頼と尊敬を受けている。

 非常に体が強く、ふたりで使う複合魔法に長けており、夫婦になる条件の一番重要なものは、魔法の相性が良くて生活に必須の複数の複合魔法が使えることだ。


 フィエール領とガリエルの境になっている大山脈にも森人がいる。非常に珍しいことだが、森人の若い夫婦が事故でロズウェル河を流され、リバーアン砦で救助されたことがあった。河に落ちた時に妻を庇った夫は、救助された時すでに亡くなっていた。

 森から離れたところで連れ合いの死に臨んだ森人は、回復しようという気力がなく、そのまま夫の後を追うかと思われた。

 めったに出会うことのない森人の美しさに心を奪われた砦指揮官は、ラフィエールのお館さまに願って、過去にこちらの世界に来た森人について調べてもらい、年月をかけて誠意だけで森人を妻に得た。

 キャメロンは、その森人の孫にあたる。


「森人のお方、このような場所までおいでいただき、お礼の言葉もありません。

 わたくしは、フィエールの娘、今の名はエイプリル・フィエール・ド・カンディステラと申します。

 この度はミッテルへの道をご案内いただけることになり、感謝いたします」

 森人は、静かに頷いた。

「わが一族の夫婦を助けていただいた。我らはかの夫婦を失ったと思うておった。

 だが、こうして孫にあたるものを育んでくれたのだ、こちらの礼を受け取ってもらいたい」

「もったいないことです、本当にありがたく思っております」


「共に行くものは」

「はい、わたくしが責任者です。

 わたくしの夫エリス、乳姉妹エルザとその夫となった森人の方の孫にあたるファビアン・キャメロン、乳兄弟のマイケル・ラドクリフ」

 4人が順番に礼をした。

「そうか」

「はい、この4人がわたくしのチームです。

 次に、わたくしの後を継ぐチームをご紹介します。このチームのリーダーの父がミッテルで宰相をしておりますので、その補助をさせるために連れてまいります。

 フレデリカ、宰相フレデリック・マールの長女です。

 フレイ、エルザ・キャメロンの姪です。

 ライラック、フレデリカ・マールの従姉です。

 クーパー、騎士です。

 ミカエル、わたくしの次男です」

 5人は、丁寧に礼をした。

「しっかりついてくるがよい」

「はい」


「ミッテルのために、兵500を率いてまいります」

「よかろう」

「なにとぞよろしくお願いいたします」


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