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19.卒業記念ダンスパーティー

 卒業証書と終了証の授与は、学寮の講堂で静かに行われた。この年に3年の課業を終える王都貴族のうちで一番上の地位は第三王子、2年間の受講を終える者の最上位はケィティネット侯爵家のフローラだった。

 フィリップスが卒業の言葉、フローラが感謝と王家への誓いの言葉を述べて式は平穏に終わった。


 そののち、王宮の小広間のひとつに移動して、卒業記念のダンスパーティーが行われることになっていた。この時は、卒業及び終了の式典に参加できない下位貴族も、講義を授けてくれた教授や助手への礼と感謝を表すためにと参加を許されている。

 この小広間は、騎士隊の入隊式とか、独身の竜騎兵や騎士が結婚相手を探すいわば集団お見合いパーティーのようなイベントにも使われる比較的こなれた場所で、求められる礼法も複雑ではないから下位貴族にとっても敷居が低めだ。

 楽団が席に着き、壁際には王宮侍女、軽食が並ぶ場所には厨房からの調理助手が白いジャケットに着替えて並んでいる。


 開始時間が近くなり、下位貴族が三々五々入室してくる。上位貴族の侍従と侍女が壁際に揃ったところで、上位貴族が和やかに会話しながら入室してきた。

 教授や助手たち学園関係者は、場が和んだ頃やってくる。見込みのある下位貴族を学園や研究に勧誘する場でもある。

 学生ばかりといっても、参加者は全員貴族の子弟。王子も参加するのだから、警備は竜騎の一小隊と、王宮騎士が担当している。壁際に並ぶ侍従や侍女の制服を身につけた者の中にも、警備の兵が紛れ込んでいる。


 入室する者の足が途絶え、楽団が静かな曲を演奏し始めたのを合図に、王族用の扉からフィリップスが入場してきた。拍手に迎えられ、にこやかに片手をあげて挨拶をした。

「学業を修めた我々にも、成果を国と国民に見せるときが来た。

 王家とともに、国を支える諸君に期待している」

 全員が礼をとり、この時を最後に学友たる王子に別れを告げ、臣下として仕える挨拶をする。


 しばらく静かな曲が流れ、やがて止まった。

 ファーストダンスの時間になった。この場の最高位はフィリップス、そのダンスの相手は婚約者たるエイプリルだ。このふたりのダンスでパーティーが始まる。

 エイプリルを迎えに行く王子の前の人波が割れ、エイプリルを取り囲む令嬢たちもすっと後ろに下がって場をあけた。


 王子は、エイプリルの近くまで来たが、その手を取ろうとはしなかった。

 広くあいた場所で、軽く足を開いて立ち、腕を組んで険しい目つきでエイプリルを見た。

 エイプリルは穏やかに王子を見ているが、後ろの令嬢たちは驚いている。

 マリエは万一に備えて場所を扉付近に移しており、ミリアム、アレクサンドラ、フローラがそっと寄り添うように背後にいる。


 来る。エイプリルは思った。このケースに備えてよかった、と。


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