4.師匠のアドバイス
長い話の間にお茶が入れ替えられて、いつの間にかサンドイッチやスコーンの軽食が運び込まれていた。
「歴史では習いましたが、師匠のお話はリアリティがありますね」
「そうよね、まるで見ていたみたいだけど、まさか?」
「ほっほっほ、見てはおりませんがのぉ。
師匠が民の最後尾で魔法障壁を張ったそうでしての。話はたっぷりとのぉ」
「え?師匠の師匠?」
「ええー、まさか」
「まあ、錬金術師は長生きですからの」
「師匠、いま何歳なの?」
「錬金術師に年を聞くものではござりませぬ」
「ええー、師匠は錬金術師なんかじゃないでしょ、大魔導士とか、大賢者とか、そんなカンジ?」
「称号賜りましたよね、師匠、大賢者よね、大賢者」
「ほっほっほ」
笑ってごまかされた4人の弟子は少々不満そうではあったが、師匠の言おうとしていることはきちんと伝わった。
「つまり、王家と王都は、第三王子を皇国に差し出す気はなかったということね」
「もちろんですな。
帝国の血を正当に残すことが王国の使命であると思っている貴族も多いことでしょう。王子を差し出すということは、帝国の血に受け継がれている魔力と、王子が受け継いだ伝承を譲渡するということですからな」
「う~ん、そこからエリーが婚約者になるには、そうね」
「そうね、辺境伯家が強大な戦力だということよね」
「そうですな。急いで辺境伯家の姫を婚約者に立て、皇国に対しては辺境伯家の姫がすでに婚約者に内定している、と返答したのですな」
「うう、メイワク」
「よね」
「まあ、次姫さまが戦姫だということがこの場合大きかったですの」
「ですよねぇ、第三王子を持って行く気なら、フィエール伯爵家がお相手する、ということよね」
「うわ~、開戦直前?」
「まあ、そういうようなことになりますかのぉ」
「じゃあ、カッサンドラ家もマール家も関係ないじゃないの、要するにうちが皇国からの防衛線だってことしかないのね」
「ほっほっほ」
部屋にはしばらくお茶を飲む音しか響かなかった。
「さてさて、知恵を授けましょうかの」
「師匠、なにかあります?」
「まあ、ないこともありませんのぉ」
エイプリルは、辺境伯の直接戦力で、辺境伯領にいるのがもっとも効果的だ。
それを王都に置いておくのは本来王国にとって不利なことなのだ。しかし、皇国への対抗力として、婚約者にした。
しかし、とりあえず第三王子の皇国への入婿は回避できた。それではもうフィエールの姫は必要ないだろう、と思う王都貴族は必ずいる。
「次姫さまは、王都は初めてですのぉ」
「はい」
「デビュタントもまだでござりますな」
「もちろんです」
「王子妃教育も」
「王都から教育係が来るはずでしたが、来ませんでした」
「師匠、エリーはもういらないってことなのでしょうか?」
「どうでしょうのぉ、ほっほっほ、そのあたりが王子殿下の弱点でしょうな、あとは現場で状況を読みなされ。隙が見えたら手を緩めぬことです、いつも通りですぞ、姫」




