「調子に乗って、作り過ぎた。若かったなぁ」
新庄と結は、どちらから言い出したわけでもないが、王都のドラゴン退治へと向かった。
すでに砂漠の地下に引きこもって10年。
子供を連れて時々外へは出るものの、世間では新庄たちの事を覚えている人間の方が少ない。
そんな“過去の人”が、わざわざ死地に向かう。
ギフト能力も何もないというのに、だ。
何の策も無く行くのであれば、愚か者の誹りは免れないだろう。
「どうせなら、死ぬ前に、派手に在庫を処分したいね」
「相手は思念体のドラゴンですよ。きっと在庫も足りなくなるのではありませんか?」
戦う理由は、在庫処分。
それが本音というわけではないが、なかなか酷い物言いである。
「調子に乗って、作り過ぎた。若かったなぁ」
「今もあまり変わらない気がしますよ」
新庄は、深い意味もなく、暇潰しでいろんな物を気ままに作っていた。
仕事という制約がなくなったために、気の向くままに作った物を在庫として抱えていた。
ロケットの弾頭だけで4桁はあるだろう。
中には対思念体用の特殊弾頭も多数用意されており、武器の在庫は十分だ。いや、あきらかに過剰であった。
すべて、新庄が暇を持て余したのが悪い。
そして、それを止めようともしなかった結も同罪である。
新庄たちが久しぶりに見た王都は、荒れていた。
城が吹き飛び、街には盗賊が現れた模様。火を付けられた形跡もあり、崩れた建物どころか、片付けられていない焼死体すらあった。
あまりの惨状に、新庄は悲しそうな顔をした。
「まずは、ロンじゃなくていいから、誰かお偉いさんと合流して、話を聞きたいね」
「今の私たちを見て、分かってもらえますか?」
「なぁに。分からなくても構わないさ。話さえ、聞けるのであればね」
見たところ、王都の近くにドラゴンがいるようには見えない。
現状を正確に把握するため、新庄たちは最新の情報を仕入れに、情報を持っていそうな人を探すのだった
「陛下や閣下たちは貴様のような男に構う時間など無い。帰れ」
「はいはい。では、失礼しようかね」
新庄は王城のあったところを目指してみたが、その近辺は兵士により封鎖されていた。
関係者以外立ち入り禁止、そう言われれば新庄が通してもらえるはずもなく、使えなくなった『砂漠の賢者』の名前を出さず、素直に追い返された。
ここで無理を通す必要はなかった。
「……へぇ。さすが。賢者様は貯め込んでらっしゃる。
ドラゴンの情報だね。ちょいと待ってくれ」
表の人間から情報を得られなかった新庄は、10年前に使っていた情報屋を使い、ドラゴンの情報を買うことにした。
できれば国の持っている一番近くでドラゴンを見ていた人間からの情報が欲しかったのだが、それは諦め、ドラゴンの行き先だけを確認するためだ。
情報屋は独自にまとめていた、ドラゴンの目撃情報をまとめた紙の束を新庄に差し出す。
彼らは金払いの良い客であれば、喜んで情報を売ってくれる、訳ではない。
古くはあるが、信頼関係があったからこそ、こうやって取引に応じているのである。
「なるほど。奴の目的地はドラゴンの森か」
そうして、新庄はドラゴンの行き先を知った。




