「分かるのです。“死ぬほど痛いぞ”は、本当に死ぬほど痛いのです……」
「アンク、若返りの効果があるんですよね」
「死んでまで若くなりたいとは思えないけどねぇ」
「分かるのです。“死ぬほど痛いぞ”は、本当に死ぬほど痛いのです……」
『復活のアンク』を手に入れた新庄たちだが、その行動に変わりはない。
二人とも一度死んだので、死ぬときの痛みや絶望を知っていて、二度と死にたくないと思うようになっていた。
だから、適当なところで一回死んで若返ろう、などとは思わない。思えない。
結は少しだけ、新庄が若返って同年代になって欲しいと考えているが、それを口にするほど馬鹿ではない。
言ってしまえば、下手をすると離婚案件である。
「そういえば、なのですけど」
その代わりではないが、結はちょっとした疑問を口にした。
「このアンク、この子に効果があるか分からないのですよね」
結はまだ一歳にも満たない我が子を胸に抱きながら、少し不安そうな顔をした。
「リスポーンした時は、この世界に来たばかりの頃の私でした。じゃあ、この子はリスポーンしたとして、何歳になるのです? 渡したタイミングでリスポーンするタイミングが決まるのですか?
生き返るとしても、赤ちゃんに戻るとかは、無い、ですよね?」
新庄が砂漠の国で現地人の三人に渡したアンクは返ってきた。
つまり、それは使われていないという事だ。
この世界で生まれ育った人間を対象に、アンクの効果は発揮されていない。
効果が不透明となると、本当に我が子に渡していいものかと怖くなるのだ。
「分からないけど、持たせておく分には構わないだろう。そもそも、死なせないのが先なんだからね」
「それもそうですね。うん、私達より先にこの子を死なせたりはしないのですよ!」
逆に、新庄は楽観的である。
いざという時の保険、効果があったらラッキーと、合格の基準を低めに設定していた。
生きているだけで儲けものというが、これはそれに近い。
死んだらどうしようもないが、死んでなければなんとかなるのだ。多少のデメリットは飲み込むべきだろう。
ただ、そんな新庄も、一つだけ懸念を抱えている。
我が子が赤ん坊に戻った場合、食事は母乳となるわけだ。
その時の結に母乳は期待できないので、乳母を雇わねばならなくなる。
異分子が今の生活に入り込むのは回避したいので、そうならない事を願い、自分も努力するべきだろうと。
全ては予測、推測に過ぎないので、そこまで過剰に考え、備えなくてもいいか。
新庄はそのように意識を改め、平和な生活を満喫するのだった。




