「戦争にはならんだろうが、なりふり構っていられないのだろうよ
国から見て、新庄の有用性は語るまでもない。
本気でやれば、何十年とかかりそうな町作りですら、数日で終わらせる。
都市間を舗装された道で繋ぐこともできるし、造船どころか電車という提案すらしてみせた。
作物を素早く育てるだけでなく、肥料で特殊な作物に作り変えもする。
砂漠の国が経済的な強者となった化粧品が新庄の知識によるものだというのは、すでに周知されている。
手に入れる事ができれば、国にとって大きな利益になる。
そう。手に入れる事ができれば。
現状は砂漠の国の賢者として、ロンの友人という立場で動いている。
砂漠の国のために動きながらも、国には所属していない。命令される立場にない。
新庄は、国の為に活用されていないが、それでもかなり国益に貢献している。
以前からも新庄欲しさに動いていた国はいくつもあった。
ただ、ほとんど国を出ない新庄は、捕まらない。
だから新庄が欲しい各国は、友人であるロンに繋ぎをしてくれとお願いする。
手を変え品を変え、お願いが尽きる事は無かった。
しかし、今ほどその攻勢が厳しくもなかったのだ。
ロンの目には、他国の余裕が無くなっているのが見て取れた。
国が減った事で、問題が起き始めたのだろう。
今、この世界からは多くの国が失われつつある。
隣国が神罰で滅びれば、その余波は避けられない。
国が失われるというのは、敵が減り土地を得られるというプラスの側面だけではない。
取引相手が居なくなるという、マイナスの影響も出るのだ。
外貨が手に入らなくなっただけではない。他国に依存していた物が入手できなくなるという事だ。
自国が神罰に襲われずとも、国内がズタズタになるのだ。
特に、貿易を中心にしている商会などは青色吐息である。取引相手が消えて潰れた商会もある。
新庄と長い付き合いのあるオズワルドのフォーン商会も、新庄が海の向こうに飛び地を作ったので持ち直しつつあるが、規模を縮小している。
石炭火力発電から始まる波紋は、水の石切りで投げた石が跳ねたかのように、幾重にも重なって国々を揺らしていた。
「今となっては化粧品も売れん。売る国が無い。
これまでに稼いだ金があるから国内の経済はすぐに駄目になるものではないが、拡張路線が緊縮財政に切り替わるのだ。民の生活に大きな影響が出る。
我が国はそれでもなんとかしてみせるが、他所の国にそこまでの余裕があるのかという話だな。
戦争にはならんだろうが、なりふり構っていられないのだろうよ」
急激に崩れたバランス。
揺れはいずれ収まるだろうが、まだまだ先の話。
新庄を狙う狩人たちも、必死なのだとロンは語った。




