「はなせ! ボクだって、みんなをまもれるんだ! たたかうんだ! だからはなせよ!!」
夜明け前、まだ暗い時間帯。
二人はまだモンスターの対応をしていた。
しかし、終わりが見えていた事もあり、意識は目の前のモンスターたちだけに向けられていた。
休憩を取ったと言っても短い時間、それも戦闘の合間では疲れが抜けきらない。同じ時間を休むにしても、効率が悪いのだ。
モンスターへの警戒を疎かにしていないだけ、しっかりしていた。
そんな二人が最後の力を振り絞る戦場に、小さな影が紛れ込んだ。
「……は? ゴーレム! その子を回収しろ!!」
先に気が付いたのは上から戦況を見ていた新庄だ。
予想していなかった展開のため、慌ててゴーレムに指示を出す。
小さな侵入者は、昨日、結に慰められていた子供だ。
親がまだ眠っている隙に避難所を抜け出して、戦場に入り込んだのだ。
「はなせよ! ボクもたたかうんだ!」
さすがに、子供がモンスターの近くへ行く事は無い。後ろに控えていたゴーレムがすぐに子供を回収した。
子供は暴れているが、新庄は何も気にせず避難所へと連れて行くよう指示を出した。
結もそれに気が付いたが、戦場で何か言ったりしない。子供が戦場にいる事の方がよほど危険だ。ここで子供の扱いに言及するのはよほどの阿呆である。
「なんでだよ! モンスターをやっつけるんだ! ジャマするなよ!」
5歳の子供が勝てるモンスターなど、ここにはいない。
現実を理解できていない子供は、時として非常識な行動に出る。
自分はモンスターと戦えると主張し、農具を振り回して反抗した。無知ゆえの暴挙である。
新庄と結は子供の相手をせず、モンスターに向き合った。
戦闘に集中しないと思わぬ怪我をする。
ゴーレムに任せてしまうしかないのだ。
「残り50! 結は下がって全周警戒!
あとはゴーレムを主力にして追い込む!」
「了解なのですよ!」
戦闘に集中しないといけないのだが。
「はなせ! ボクだって、みんなをまもれるんだ! たたかうんだ! だからはなせよ!!」
結の後ろで騒ぐ子供が集中力を削いでいく。
それだけでなく子供特有の甲高い声が響き、モンスターの注意を引き、敵の戦力を集中させ、状況を悪化させる。
控えめに言っても最悪でしかない。いない方がマシである。
「ゴーレム! もっと後ろに連れて行け!」
苛立つ新庄。その指揮に乱れが生じて、モンスターの侵攻を許してしまう。
結も後ろの子供に意識が向いていたため、対応が遅れる。
ゴーレムは新庄たちのように動揺しないので、モンスターへ機械的に対処をして、被害が出る前に何とかする。
波乱があったのはそこまで。
子供はいなくなり、残るモンスターも処理される。
長い戦いを終え、二人は立つのも辛いと、その場に座り込む。
騒動は終わり、長い休憩を挟んで後処理に移る事になった。




