「結。長丁場になるから、先に休憩を取ってもらえるか? 四、五時間ほど寝ておいてくれ」
「結。長丁場になるから、先に休憩を取ってもらえるか? 四、五時間ほど寝ておいてくれ」
「……そうですね。では、先に休憩に入ります」
長期戦になるなら、コンディションの維持に休憩は必須である。
新庄たちは以前、小袋路の生み出したモンスターの大群と戦った経験があるが、その時は後半に疲労で倒れそうになりながら戦う羽目になっていた。
敵の強さと言うより、敵の数と戦闘時間が問題で、上手くペース配分ができず、かなりギリギリの戦いを強いられたのだ。
その反省を活かし、新庄は余裕があるうちに結を休ませ、長期戦に備える。
防衛ラインを構築しての戦いであるし、寒さというデバフがあるし、敵の出現は散発的なので、新庄一人でもゴーレムを率いれば持ちこたえる事は可能だ。
いざとなればロケット砲もあるので、あの時とは状況がまったく違う。
「暑さにも寒さにも強いゴーレムは、やっぱり便利だけど。俺自身はそこまで寒さに強くないんだよなぁ」
物見櫓の新庄は、凍った森から届く寒風に身を震わせながら、ゴーレムに命令を出し続けるのだった。
結が居なくなった事で殲滅力が大幅に下がった。
新庄は森にストックしてあった海水をバラまき、モンスターを氷漬けにするなどして戦線を維持しきった。
暗闇への対策はケミカルライト、化学反応によって発光する液体を使い、なんとか対応してみせた。夜光塗料に蛍光塗料も作っていたが、そのついでに発光する薬品も出来ていたのだ。
「思ったほど明るくならないから、気休めみたいなものだと考えていたけど。これだけ使えるなら、量産も視野に入れていいかな。
ホタルイカ、養殖できないものかね?」
なお、発光薬品の素材はホタルイカである。
ゲーム的な処理なのかこの世界のホタルイカがそうなのかは新庄も知らないが、ホタルイカの墨を加工すると、そういう素材が作れるのだ。
この発光薬品は、今日の戦いを余裕で乗り切る程度にストックはある。
「戻りました! 祐さん、戦況はどうです?」
「ゴーレムの消耗は大破1割、中破2割かな?
あと、そろそろ交代だから、追加で50を投入した」
結が戻ってきた時には、時刻はすでに日を跨ぎ、深夜となっている。
モンスターは相変わらず散発的にやってくるし、途切れてくれない。
戦闘という気の抜けない時間が長く続いたので、敵を迎え撃った新庄の精神的疲労はピークに達していた。
それでも新庄は、結が来るまで村を守り通した。
「今度は祐さんが休む番なのです!」
「ああ。お言葉に甘えさせてもらうよ」
結が戻ってくるのに合わせ、新庄は残る魔力を振り絞り、ゴーレムを追加した。
これから休むのだから、これぐらいの援護はしてもいいだろうと、限界まで魔力を使ったのである。
そうしてやれる事をやりきった新庄は、物見櫓の上に布団を出し、そこで眠りについた。
やりきった分、疲労も相応に深くなっていた。
下は煩くとも、それが気にならないほど疲れていたのだ。
残された結は、新庄に一瞬視線を向けてから、自分の頬を叩いて気合を入れた。
「さあ、掛かってくるのです! ここから先は通行止めなのですよ!!」




