「その時はミサイルや大砲の出番だよ。それぐらいの余裕は残しているよ」
新庄はとりあえず、ストーンゴーレムを50体用意する。
これらは防衛用ではなく、周辺の遊撃用である。
「10体1組でモンスターを探して撃破するように。仲間が1体でもやられるか、ダメージが蓄積するか、敵10体を撃破するごとに倒したモンスターを回収し、戻って来い。なお敵10体の撃破はあくまで目安、敵集団が残っている場合は殲滅を優先。
行動範囲は――」
防衛ラインの構築はするが、村から離れた所で戦えるならばその方が良い。
新庄はゴーレムの集団を散開させ、適当に暴れさせることにした。
散開していくゴーレムが森の中に入ると、無造作に木々をなぎ倒していくが、新庄はそれを気にしない。
木々がなぎ倒された場所は通りやすく道になるので、モンスターたちの移動を誘導できるようになると、むしろ歓迎している。
モンスターも、木々の隙間を動くより、多少広い場所を選ぶだろう。
そうしてゴーレムを見送った新庄は、村と森との間に馬防柵を置き、空堀を追加し、ゴーレムを20体ほど追加する。
「大盤振る舞いなのですね」
「さすがにこれ以上の用意はできないけど、まぁ、結もいるし、とんでもない数が攻めてこない限りは大丈夫だと思うな」
「祐さん。フラグって、知ってるです?」
「いやいや。さすがに無いと思うよ。それに、言っても言わなくても、来るときは来るよ」
「それは分かるのですけど。でも、もしモンスターがたくさん来たら、祐さんには私の我が儘を1つ叶えてもらうのですよ。
もう、嫌な予感しかしないのですからね」
「その時はミサイルや大砲の出番だよ。それぐらいの余裕は残しているよ」
新庄の魔力はかなり多い。
しかし、無尽蔵ではない。
午前中は普通に仕事をしていたし、竜巻を見てから地下避難施設を作っているので、そこそこ消耗していた。
追加の防衛陣地やゴーレムの用意で魔力を使い切ればいざという時に対応できないため、魔力はそこそこの量を残しておく必要があった。
もしも大量にモンスターが現れ、ゴーレムだけで捌き切れない様であれば、ミサイルや爆弾などの使用も選択肢としてはアリだと考えている。
原油が手に入った事もありナパーム弾なども用意してあるのだが、こちらは封印するつもりである。
ナパーム弾で水をかけても消えない炎を生み出すのは良いが、そこから発生する煙が竜巻を呼び込んでは目も当てられない。
遠方とは言え、神罰執行中にそんな事をするほど、新庄はチャレンジャーではないのだ。
最初の1時間は特に問題なく過ぎていったが、2時間も経とうかという所でストーンゴーレムが全チーム帰って来た。
どのチームも大量のモンスターを倒しており、その種類がこれまでに類を見ないほど増えている。
森のモンスターが大量増殖と言うか、他から流れてきたモンスターで生息域が乱れているのがよく分かる状態であった。
「こういうの、荻君たちが聞いたら羨ましがるだろうね」
「そうですね。あの人たちも、たまにギフトの維持のために戦っているので外で顔を合わせる事もあるのですけど、よく『昔のように戦えたら』って愚痴を言っていました。これじゃあ小銭稼ぎにしかならないって、大変そうでしたよ」
ゴーレムの何体かは、大きなダメージを負っている。
ゴーレムは強いが、ストーンゴーレムはアイアンゴーレムに比べれば耐久性能に劣り、意外と脆い。
新庄はゴーレムの修復をしてから再度送り出す。
「稼げると言えば聞こえは良いけど。ブラックだね。この状況は」
「次は、帰ってこれないかもしれないのですね」
敵の密度が濃い。
そうなると、あれだけのゴーレムでも敵を殲滅する事は不可能だろう。
新庄は大砲などの準備も始めるのだった。




