「石油精製って、確か遠心分離機じゃなくて、気化する温度の違いを利用するんだったよな」
「もっと深く掘ってみるか」
原油の発見。
なんとなくであるが、新庄はそういったチャレンジをして見る気になった。
原油は、現代社会においていまだに重要な戦略資源の一つである。
他にもレアメタルだとかレアアースなども重要であるが、原油の重要性が低くなったという話は未だに聞かない。
車がガソリン車から電気自動車に完全移行してしまったとしても、漁業に使われる船舶がオール電化を達成したとしても、原油の可能性はそれだけではなく、なんだかんだ言ってもその他の使い道が多数あるのだ。
原油からはプラスチックという、環境破壊につながる物も生み出しかねないが、それでも資源としては有用である。
砂漠の国がいずれ世界と戦えるようにと、原油を探してみようという気になった。
原油は原油で、石炭火力発電以上に神罰の対象になりそうな物である。
石油火力発電は石炭火力発電に比べあまり経済的ではなく、日本ではあまり大規模に行われておらず、しかも石炭火力発電と違い減少傾向にある。
それでも石油火力発電が行われていることを考えると、経済的ではないものの、有用な発電方式なのだろうと新庄は考察する。
石炭を輸入に頼るよりはマシだろうと、石炭火力発電を推し進めようとしている者たちの支援になりそうな事まで考えていた。
「あんまり深くは掘ってこなかったんだよな」
そういった事情は横に置き、これまで原油を見付けられなかった理由を、新庄は推測する。
新庄はこれまで、穴を掘る時は自分が窒息しないように、空気の対流が自然に行われる範囲でしか掘っていなかった。
これはいわゆる露天掘り、地上に巨大な穴をあけるような掘方をしていなかったからだ。
新庄は坑道を作るタイプの採掘がメインだったのである。
坑道を掘る、モグラのようなやり方をしていた理由は簡単だ。
外から砂が流れ込むのが嫌だっただけである。深い意味など無い。
それでも問題無く資源を回収できていたので、やり方を改める必要が無かったのである。
やり方を露天掘りに変えれば、これまで以上に深い穴を掘る事も可能になる。
周囲の砂の流入を防ぐのに手間はかかるが、手間に見合ってはくれないかもしれないが、利益はある。
上手くいかなくても、鉄などの資源が回収できる見込みであった。
現実は厳しいかもしれないが、一歩を踏み出すために調子の良いことを考えて、新庄は露天掘りに取り掛かるのだった。
そして、数日後。
「3㎞は縦に掘ったぞ。神罰の高度よりも深く掘らないといけないとか、そりゃあ見付からないわけだ」
新庄は見事、油田を掘り当てた。
砂漠に複数の大穴をあける事になったが、それでも見つけることができたのだ。
「石油精製って、確か遠心分離機じゃなくて、気化する温度の違いを利用するんだったよな。
どうやってやろうかな?」
……もっとも、原油を見つけただけで、その先に踏み込むにはまだまだ時間が必要であった。




