「ぎゃー! また破裂した!」
新庄は変圧器の完成に向けて、トランジスタを作っていた。
「ぎゃー! また破裂した!」
「落ち着いて。まだ失敗する前提だから。ちゃんと耳栓をして、心の準備をしてくれ」
「そうは言っても、怖いものは怖いですよ! 心臓に悪いですよ!
あ、今回も電源を入れた瞬間に爆発しました」
「……そうか」
雷という直流電源から、使いやすい三相交流に変換するためのDCACコンバータという装置を作るのに必要だったからだ。
しかし、トランジスタの基本原理はシンプルなのだが、自分で作るとなると、話が変わる。鬼のような難易度に頭を抱えたくなってしまう。
トランジスタには半導体を使うので、新庄は半導体を作った。ここまでは簡単であった。
それをトランジスタに加工する事もできたのだが、基本的な知識が足りていない以前の問題で、雷の電圧に耐えられず何度も爆発事故を起こしている。
小規模な、手回し発電機を使った実験では上手くいっている。
しかし、雷に対応させようとすると、爆発事故を発生させてしまう。
電気が物質に流れるときに物質の中で抵抗を受けてエネルギーロスが発生するのだが、ロスしたエネルギーは熱に変換される。
電流がたくさん流れればそれだけ熱も発生して、熱くなるのだ。
高圧の送電線はロスを減らす目的で使われているのだが、それはさておき。熱が発生すると、その熱を受けて膨張、爆発となる。
監視員を置いて複数の視点で観察させているが、未だに原因に繋がりそうな発見はされていない。
それを防ぐために冷却を行い強靭な容器で覆うのだが、それも上手くいっていない。
同電力を見た場合は電圧が高ければ電流は小さくなり、ロスが抑えられるというが、どこかで電気が漏れて、消費電力が増しているのかもしれないと、新庄はそのように判断した。
こうしてトランジスタ開発はアッサリと暗礁に乗り上げてしまうのだった。
「調べるにしても、道具がない。安全が担保できない」
漏電を調べるのに、装置に電気を流す。
流す電気は小さくていいと思っていたが、電圧が違うからか、問題箇所が見えなくなっている。
つまり、低電圧では問題の再現ができなかったのだ。
使う電線にはシールド加工処理、電線の表面を金属で覆って発生する磁界を封じ込める処理をしているが、そちらに問題が発生していないのは確認済み。
電線の被覆に傷があって、そこから漏電しているということは、まず無い。
……新庄は気が付いていないが、問題があるのはトランジスタの端子部である。トランジスタの端子と電線の接続に問題があった。
ここに僅かな空気の混入があり、それが抵抗となって発熱しているのだ。
精密機械の名前は伊達ではない。僅かな塵や埃、空気で駄目になるのだ。新庄もその事は分かっているのだが、ギフト能力ではなく手作業の部分では完璧な仕事ができず、失敗続きである。
鉛はんだの接合が上手くいっていない事に新庄が気が付くのは、もう少し先の話である。




