幕間『子供とのつきあい方 〜序文〜』
<この記録をつけるにあたって>
子供という生き物は難しい。感情に正直で、常に全力で、些細なことで泣き出し、突然感情を爆発させたりもする。
わたしもこれまでの人生で子供を見かけたことは幾度となくあったが、まさか自ら育てる立場になるとは考えていなかったので、あまりよく観察して来なかったことを今になって激しく後悔している。
故に、後の自らためにも、どんな些細なことでも気付いたことを書き記していこうと考えた。
いつか何かで迷った時、過去の気付きが自らの標となることを願って。
ひとつの答えとしてではなく、新たな答えを見つけ出す手掛かりとなるように。
未来のわたしよ、どうか挫けることなく、根気強く彼女を導いていって欲しい。
恩人であるあの子に良く似たマールエルを、どうか、立派な魔法使いとして育て上げて欲しい。
これは今の私の願いであり、未来への希望。
失意の底にいたわたしの許にあの子が届けてくれた、命の灯火。
マールエルが独り立ちする頃には、わたしもいい年になっていることだろう。
その時胸を張ってあの子に役目は全うしたのだと言えるように…………いや、それまでにわたしは完成させなければならない。
あの子の時間を取り戻す魔法を。何としても、失われてしまったあの子を取り戻さなければ……。
……話が逸れた。すぐ思考が飛ぶのはわたしの悪い癖だ。
いずれにせよ、わたしはこの子を……マールエルを立派に育て上げようと思う。
その記録を、ここに記す。
ソルシス=ヴィレンス
 




