取り戻した平穏
ガシュレン王国の王都に、厄災が現れた。
しかし厄災は精霊王や妖精王を筆頭に集った、力ある精霊や妖精たちによって封じられた。
その際、彼らが集う時間を稼いだのがガシュレン王国の魔法使いたちだったという。
その話は瞬く間に大陸中に広がり、海を越え、遠い国にも伝えられた。
厄災の恐ろしさを知る人々は、口を揃えてこう言った。
“奇跡だ”と。
だからだろうか。
厄災が封じられた日を、人々は“奇跡の日”と呼ぶようになった。
その“奇跡の日”より、一年が経過した。
王都を危機から救った王国魔法師団や民の避難に尽力した王国騎士団、王国兵団の面々には、ガシュレン国王より報賞が与えられた。
同時に、“奇跡の日”に彼らと共に戦い、王都を守る戦いに最も貢献したとされる魔法使いの師弟にも、ガシュレン国王より報賞が授けられた。
その知らせが出されるや否や、魔法使いの師弟は王都の人々から『偉大なる森の守護者』と呼ばれるようになった。
彼の師弟が『偉大なる魔法使い』の流れを汲んでおり、フォレノの森の守護者でもあることから付けられた呼称だ。
本人たちは大層嫌がったが、民衆の勢いに歯止めをかけることはできず。最終的に、その呼び名を甘んじて受け入れた。
そんな彼らが報賞を受け取ったあとのこと。
ガシュレン国王は『偉大なる森の守護者』たちに、城に留まり自分の力になってくれないかと誘いかけたという。
しかし彼らは森の守護者であることを理由に断ると、彼らが守護する森へと帰っていった。
人々は言う。
『偉大なる森の守護者』たちは、その力で以って国を守ってくれた王国の守護者であると。彼らがいる限りガシュレン王国は安泰であり、安心して暮らしていけると、語るその顔に笑顔を乗せて。
そんな人々を眺めながら、『偉大なる森の守護者』たちを知る、とある王国魔法師団団員は呟いた。
「ヒューティリアはともかく、セレストは国中から頼りにされてるって知ったらものすごく嫌がりそうだなぁ」




