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新たな季節を祝う祝祭の夜、裏の暗い道を行く男がいた。
男は暗い茶色のローブを深く被りきり、朧げな足取りで歩み続ける、
ゆっくりと ゆっくりと
ふと、男は大きな音を立てて崩れおちる
祭りの夜に裏の暗い道を通るものは殆どいない、それでも通る僅かばかりの人間達は訝しげに男を一瞬見る、がすぐに目指していた方向へ歩みを戻す、
大方、祭りで林檎酒でも
飲み過ぎた酔っ払いだとしか誰も思わなかったのだろう。
やがて二刻程の時間が経ち、祭りの喧騒も徐々に少なくなった頃に小さな影が
倒れた男を囲むように近づいた。
小さな影はこの港町周辺を根城にしている盗賊達であった、彼らの仕事は祝祭で浮かれている町人たちの財布を頂戴することであり、本日の仕事ぶりはなかなか好調であった。
一番の新入りで盗賊をするには些か体長が
大きい人物が「死んでいるのか」
と小さく呟くも返す声は無い。
代わりに手を新入り盗賊に見せつけて、右に2回指を回し薬指で倒れている男を指差した。
彼らの仕事は隠密性が求められるものであり、基本はあらかじめ決められたサインでコミュニケーションを取ることになっている、
今のサインは「いいから盗れ」といったサインである。
新入り盗賊は恐る恐る倒れている男に近づくとローブのポケット部分を探っていく、
が 何も見当たらず反対側のポケットを探ろうと男を動かす。
「なんで倒れてるんだろう」と再び呟くが返す声は相変わらず無い、新入り盗賊は呆れたように首を横にかしげると物色を再開し始めた。
と男の指に薄い月明かりに光る物があった、
それは新雪のような白銀色であり不思議な文様が絡み合うように彫り込まれている、
特に目がつくのは指輪全体が幽かに青く光っている事だ
「コレは…」と呆然と男の手をとり見とれていると、突如 左から手で押しのけられひっくり返った、
上を見上げると盗賊達のリーダー格の女が
指輪を自分の指にはめて月明かりに照らすように見とれていた。
顔はフードとマスクで隠れているが、僅かに見える目に何か怪しげな熱を帯びている事がわかった。
異様な雰囲気に呑まれた盗賊達はリーダーから輪を描くように徐々に距離をとる、
「ああ」と何やら艶っぽい声を出しながらリーダーは指輪をはめた指を
噛みちぎり飲み込んだ




