プロローグ【アカリフォリア学園の一日】 その8
【場所:食事会場】
「……………………」
「――ねぇ、お兄ちゃん」
「ん? 何だ?」
「何かいいことでもあったの? 若干いつもよりテンション高いような気がするんだけど」
「俺、いただきますをしてからまだ一言も言葉を発していないんだが、それなのにテンションが高いなんて分かるのか?」
「そりゃあ、お兄ちゃんの妹やってますから? 普通の人よりお兄ちゃんの感情の起伏は分かってるつもりですわよ?」
「何でそんな口調になってるのかは意味が分からないが……まあ、今日一日で色々あったからな」
「そうなんだ。例えば?」
「いちいち説明するのは面倒だ。色々あったで終わらせてくれ」
「え~? 聞きたいよ~。お兄ちゃんがどういう一日を送ったのか知りたい~」
「知ったところでどうするんだよ? 兄の一日に密着したって面白味はないだろう」
「ちっちっち~、私はブラコンだから、お兄ちゃんの一日に密着できたらとっても楽しい気分になれるんだな~」
「大声でブラコンとか言ってんじゃねぇよ」
「公言しておいたほうが楽だもん」
「俺が恥ずかしいんだよ」
「ぶーぶー……でも、今日も充実した一日を送ってきたってことですね」
「まあな」
さっきも言ったが、本当に色々あった一日だったな。魔法のテスト、ユリア先輩とお昼ご飯、野中との接触……どれもこれもなかなか内容が濃かった。
特に野中との接触は今月一番の驚きだったかもしれない。俺の中の野中のイメージが少々変わったな。思い描いていたイメージと真逆になったとまでは言わないが、俺が思っているよりもまともだった。
これもさっき言ったが、野中に悪い印象を与えないよう、しっかり魔法の練習は積んでおかないといけないな。
「で? お前の方はどうだったんだ? ちゃんと授業受けてきただろうな?」
「あーうん、ちゃんと頑張りましたよ~」
「……俺の目を見てもう一回同じ台詞を言ってみろ」
「ほ、ホントにちゃんと受けてきたよ? ちょっと寝ちゃいそうにはなったけど……でも、今日は最初から最後まで起きてた。これは胸を張って言えるよ」
「張るような胸はなさそうに見えるが」
「にゃ~!? お兄ちゃん、私が結構気にしてるの分かってる癖にそんなこと言うなんてひどい~!」
「うるせぇな、いちいちうるさいんだよお前は……」
「お兄ちゃんが私をうるさくさせてるんだよ~」
「分かった、分かった。信じてやるから、来週もそれを続けろよ?」
「う、分かってるよ……」
心底自信がなさそうに、ほのかは頷いた。
……………………。
【場所:自室】
――よし、これで来週提出の宿題は全て終わったぞ。後は明日か明後日に魔法の練習をすれば大丈夫だろう。
何だかんだ期末テストまで後3週間もないからな。効率よく勉強していかないと、良い点数はとれない。
ちなみに1年生最後の期末テストは、約250人中52位だった。高学歴の生徒が多い中なので、当時はこの順位で満足していたが、ここまで来たら50位以内、あわよくば更に上の順位を狙っていきたいものだ。
そのためには、日々学んだことの復習がとても大事になる。これを欠かさず行っていけば、きっといつか身を結ぶはずだ。
いつもならそろそろ寝る時間だが、明日は休みだし、もう少し勉強するか。
「――今日やった魔法のテキストでも読み返すか」
――こんな感じで、俺の一日は過ぎていく。
プロローグはこれでおしまい。
次回からは個別ルートに入る前のヒロインに視点を当てたシナリオを投稿していきますのでよろしくお願いします。