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第10話「懐かしき ダンジョン」




 この森について話を聞きながら移動していると、ブゥーンという煩いほどの羽音がしたと思ったら40cmほどの蜂が6匹で出てきた。

 と思った時には、クーちゃんがその長い舌を振るとバラバラと散ってクーちゃんの胃の中へと順番に収まっていった。


「今の蜂は?」

「レギオン・ビーだな。女王蜂、軍隊蜂、働き蜂の大まかに三つに分かれる。そして、女王蜂が卵を産み、軍隊蜂が守り、働き蜂が餌を採ったり巣を作ったりといった雑用を担当する。基本的に集団で動いて獲物を狩るんだが、巣に近づくと軍隊蜂が出てくる。レギオン・ビーから採れる蜂蜜は極上でスプーン一杯ですら結構な値段で取引されるのだ。300年前の価格だから現在は分からないがね」

「丁度良いわ。久しぶりに食べたいから蜂蜜狩りでもしましょうか」

「僕のダンジョン………」

「ダンジョンは逃げませんわ」

「レギオン・ビーの蜂蜜は、貯め込むのにそれなりに時間がかかる。ちなみに、蜜の採取に忙しいと襲ってくる頻度が極端に下がるという習性もある。今採っておくと色々と楽になるのだ」

「ここら辺を気兼ねなく移動するには必要なことですわ」

「まあ確かに。急ぎって程じゃないし、美味しいなら食べてみたいけどね」

「君に出会った時に出したクッキーにも使われていたがね」

「是非行きましょう!」


 あんなに甘くてコクのあるものなら、是非とも食べてみたい!

 この世界は前世以上に変わっているものが多いけど、美味しい物が多い。

 チェリンゴ、スケイルファングの肉、クッキーに使われていたというレギオン・ビーの蜂蜜等々。

 美味しい物は良い。前世でも拘っていたかは分からないけど、余裕があればそういうのを探していこう。

 心のゆとりは余裕を生む。余裕ができると割りと前向きになれるからね。

 少なくとも、十分な食事と睡眠、それと家を含めた資産があるとそれ以外に目を向けることができると思う。

 そのどれかにストレスの原因がある時はそうじゃないかもしれないけど。

 だから、余裕があれば視野が広くなり冷静に物事を見ることができるし、ポジティブになりやすい。

 というわけで、美味しいもの探しはこの世界のことはほとんど分かってない僕にとって、色々と知る良い機会だ。

 積極的に美味しい物を探していこう!


「シュウ様は美味しい物に目がないんですのね。子供のような顔をして……ふふっ、とても可愛らしいわね。これは色々と紹介のしがいがあるわ!……(ペロッ)」

「おい、ダメ吸血鬼。最後のはせめて隠せ」

「ああっ!……はぁ…はぁ……ダメ吸血鬼だなんて、シュウ様ったら!!……んんっ!!」


 逆にこれぐらい言っておいた方が少し大人しくなるし、定期的に罵倒か無視を入れておこう。

 その方が建設的だ。僕の精神がガリガリと削れていくのに目を瞑ればだけども。


「記憶が無いシュウ君にとって、この森は宝の山だな。美味しい物がとても多い。それと合わせて危険も多いがね」

「……はぁ………はぁ。……そう言えば、シュウ様はアイテムレベルまでLv1になるんでしたわね」

「そうだけど」

「では………ダールソン。レギオン・ビーの引き付けをお願いしますわ」

「了解しました」

「え、蜂の大群が襲ってくるのでは?」

「何、私は骨だからね。蜂の針どころか、毒でさえも全状態異常無効だから問題ないのだよ」


 なるほど。スケルトンもそうだけど、毒、麻痺、眠り等、全部通るわけがないな。骨でアンデットだから毒や麻痺で動きが鈍るわけでもないし、睡眠が必要な体でもない。


「それでも一応気をつけてください」

「ああ、ありがとうシュウ君。では、お嬢様。行って参ります」

「ええ、お願いね」


 ダールソンさんは、ふわりと浮き上がると一直線に森の奥へと向かっていく。すげー!飛べるのか。魔法って便利だな。


「ふふっ…二人っきりですわね?」

「………」


 意図的にダールソンさんを蜂の巣にけしかけたんじゃないだろうな…。


「では、邪魔者もいなくなりましたし………シュウ様、これをどうぞ」

「何これ?」

「アクアクラッカーですわ」


 シグの手には、どこからともなく取り出された果実が乗っていた。

 それは、ピスタチオのように薄く開いた殻が貝のようになっていて、中にある楕円形の大きな実が殻に包まれている。


【呪いの効果で、アクアクラッカーLv23が、アクアクラッカーLv1になりました】


 うん、やっぱり受け取るだけでLv1になるね。

 殻を取ると、今まで殻に挟まれて楕円形だった実が、球体へと戻りながらプルプルと震えて回りに水滴を飛ばしていると錯覚するほど瑞々しい。

 口に入れてみると水風船のように皮が一気に破けて、口の中一杯に果汁が広がる。

 マスカットのようなあっさりした味と、シュワシュワと舌を刺激して弾ける果汁。おお!炭酸だ!


「どうでしたか?シュウ様」

「んー!美味いっ!!」

「ふふっ、それは良かったですわ。………ところでアイテムレベルは1になりましたか?」

「え?ああ、うん。なったね」

「そうですか。………では、シュウ様。はい、あーん♪」

「………何、いきなり?」

「検証ですわ、シュウ様」

「検証?」

「シュウ様が触れる場合、どこからが呪いの効果範囲なのかを確かめたいのですわ。手で触れたら、持ったら、口に入れたら、飲み込んだら…と、細かく検証することでアイテムレベルが高いまま食べることも可能かもしれませんし」

「なるほど。…でも、あーんはちょっと…」

「騙されたと思って食べて下さいな。はい、あーん♪」


■アクアクラッカー Lv19

説 明:殻に覆われた白い果実。食用。


「………あむっ」


 んんっ!!これはっ!!!


「美味ーいっ!!!」


【呪いの効果で、アクアクラッカーLv19が、アクアクラッカーLv1になりました】


 なんだこれ!今までのLv1でも十分美味しかったけど、一瞬とはいえLv19だけあって更に美味かった。

 これでアイテムレベルが美味しさに関係することが確認できた。

 ただ、レベル差での味の変化はそこまで思ったほどじゃなった。

 レベル差によるんだろうけど、ミカン箱の中身から一番おいしいのとそこそこのを取った感じぐらいの差しかなかったな。

 確かにレベルが高いほうが美味しいけど、食べれないほど味の違いはない。これは本当に良かった!

 でも、これで人に食べさせてもらう必要が出てきたから、今後はあまり食べることはできないかなー。

 町の飲食店とかで、人に食べさせてもらうのは流石に目立つし。

 ………確かに検証をしなければ分からなかったことだと思う。

 一見美女のシグに「あーん」をされたのも嬉しいといえば嬉しい。

 ただ、なんか…負けた気がする。


「どうでしたか?シュウ様」

「口に入れた瞬間にLv1になったね」

「そうですか…では、今度は………口移――」

「いや、それはなしで(キッパリ)」


 うん、試すなら他でやるよ。

 とりあえずLv1だからと言って特に問題がないことは分かったわけだし。

 できれば高Lvのまま食べたいところだけど。


「お嬢様」

「………いつからいたのかしら?」

「あーん、をした辺りですな」

「「………」」


 ぬあー!恥ずかしすぎるっ!!

 穴があったら入りたいっ!!

 シグも悶えずに頬を染めている。ドMな部分がなくて、普段からこうなら素直に見惚れていたかもしれない。


「こほんっ!………思ったより早かったのね」

「ええ、どうも巣はダンジョンの中にあるようなので引き返してきました。後で、シュウ君に魔法でも教えながら入った方が良いかと思いまして」

「一階層からレギオン・ビーの巣があったのかしら?」

「いえ、どうやらもっと奥深くにあるようです。一階層はスプリングウィードがおりましたので植物系の魔物ですな」

「そう。罠の数や種類は分かったのかしら?」

「大体は森林系によくある罠ですな。自然系トラップで木の矢が飛んできたり、木の槍が下から出てきたり、足を引っ掛ける高さに植物の蔓があったりするぐらいで、毒等も特にないようでしたな。ただ………」

「何かあったのかしら?」

「ダンジョンの入り口が5つほど固まっておりましてな。どれから出てきたかは特定できませんな」

「そんなに多かったのかしら?」

「森林系が3つに、洞窟系が1つ、山岳系が1つありましたな」

「そう…思ったより多いようね。それもシュウ様のダンジョンを確認した後にしましょうか」

「それが良いかと思いますな」


 罠とか毒とか物騒な話が聞こえた気がする。

 そんな話をしながら移動していると、見覚えのある根元から葉っぱの先まで漆黒の木がちらほらと見えてきた。

 ダンジョンの洞窟から、初めて外に出た時に見かけたやつだ。懐かしいなー。


「あー、既に外から見ても分かるほどにシュウ君のダンジョンは呪われているな」

「え!?」

「そこかしこにある漆黒の木々がそれを証明している」

「………そういう珍しい木だと思っていたんですけど」

「記憶がないのではしょうがないけれど、ダンジョンというのはダンジョンがある周りの土地を反映していることが多いわ。火山地帯にあるダンジョンであれば、炎系の魔物やマグマが流れているダンジョンだったり、海の中や水のある所のダンジョンなら水で溢れていたり、水没していたり…等々。まぁそこまでの高難易度ダンジョンもそうないわ。この辺を除けば…だけど」

「そして、逆にダンジョンの特性がそのまま周りの環境に与えることもある。呪いが一番顕著だな。呪いの影響で、周りの植物や鉱物、水といったものが呪いで黒く染められていることが多いのだ」

「土地とダンジョンは相互関係として環境に現れるってことですか」

「一番分かりやすいのは魔物だがね。ゾンビやスケルトンなどのアンデット系の魔物が出る場合、呪われたアイテムやダンジョンがあることが多い。単純にそこで人が死んだ数が多いという場合もある。そこでは負のエネルギーが溜まりやすいからな」

「へー…ってことは、地下とか空にもダンジョンってあるんですかね」

「ええ、あるわよ。地下にかなりの数があるわ。空のは一つしか知らないけれど」


 あるのか………!

 天空にあるダンジョンってどうやって浮いているんだろう。

 やっぱり魔法かな。


「いつか見てみたいですね」

「シュウ君ならいずれ行けるかもしれんな」

「そうね、シュウ様なら。いずれ………」

「ちょっと買い被り過ぎじゃないですか? まあ、一つの目標ぐらいに考えておきますよ」


 まだ、この世界で何をするかは決めてないし、宣言通り、目標の一つに加えるぐらいでいこう。

 そうこう話している内に、僕にとっての出発点が近づいてきた。

 とうとう戻ってきたな。

 離れてから1週間ぐらいしか経っていないんだけどな。




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